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エルフっ娘とアイスクリーム

「皆の者ひれ伏せぇい」


「急にどうしたんだラクア。いや、いつものことだけど」


 ラルちゃん、最後の一言はいらないと思うよ。いや正論だけどさ、いらないんだよ。

 ベッドの上に立ち、みんなより目線が高いところにあることにテンションが上がった私は先ほどの言葉を口にし、ドヤ顔を放っていた。

 そう、いつもと同じ。特に理由はありませんっ!!


「ラクアももうちょっと落ち着くこと覚えた方がいいと思うんだよね。ボクでもラクアほどテンション上がったりしないよ」


「あ、期間限定アイスクリーム」


「ドコォォォ!!?」


 いつみても食欲だけはズバ抜けてるねロアちゃんは。どの口が私よりテンション上がらないとか言ってるんだか…。もちろんアイスクリームなんて何処にもないんだよ!嘘だよ!!

 窓の外を指差したと同時に外へと駆け出していったロアちゃんはさておき、私はこれから何をするか…、悩んだ末何も出なかったため再びベッドの上に腰を下ろした。

 

「暇だね〜。あと暑いよね」


「夏休みだしな。ロアがアイスを欲しがる気持ちもわかるよ」


「ラルちゃんもアイス食べたいの?」


 走り去って行くロアちゃんを見ながらそう言う。するとラルちゃんは苦笑しながら「ロアほどほしいわけじゃないけどさ」と首を横に振った。

 みんなアイスが食べたいのか…。


 そう思うとなんだか私もアイスが食べたくなってきたよ。これはもう使命だよ使命。アイスを食べなければならないんだよ!!

 私は勢いよく立ち上がると、周りをキョロキョロと見渡す。そして最後にラルちゃんの方へ目線を向けると、ラルちゃんの手を掴んで引っ張り上げた。


「急にどうしたんだ…」


「アイスがどこにもないんだよ!!」


 涙ながらに叫ぶ私を目にして、呆れたような顔つきをしたラルちゃんは、その表情のままわたしの肩にそっと手を置いた。


「もともとこの村にアイスはない」


「え…」


 そんな…、の一言は出てこなかった。あまりに衝撃的な事実に頭が追いついていなかったからだ。

 確かにロアちゃんには期間限定アイスクリームは売ってないって言ったけどさ、そもそもアイスクリーム自体がこの村にないなんて聞いてないよ…。

 確かにアイスクリームを食べたことなんてないけど、それはたまたま食べたことがなかっただけであって、この村にないってことは…。


「ないんだよ」


「ッ……!!」


 あまりのダメージに私は半歩後ろによろける。そして、体を支えられずそのまま床に尻餅をついた。


「ラルちゃんはいつからそのことをご存知に…?」


「いつからってだいぶ前から知ってたさ、というかないことくらい普通気づくだろ」


 やれやれと言ったふうに首を振るラルちゃんだが、そんな事実簡単に受け止められるはずがッ…。

 どうせならこのまま知らずに生きていきたかった…。


 …でも知っちゃった以上そこはうじうじ考えてもしょうがないよね。これから先そさどうするか、そこが大事なんだよ。

 私は1人うんうんと首を頷くと、未だに呆れているラルちゃんの方へ顔を向けた。


「というわけで、アイスクリームつくろうラルちゃん!」


「どういうわけでだ!!」


 ラルちゃんのツッコミはとりあえず置いといて、私は早速アイスクリームづくりにとりかかろうと魔力を手のひらに生成しはじめた。

 アイスって冷たいって聞いたことあるし、氷の塊を作り出せば…たぶんそれっぽいのができるはずなんだよ。

 ツッコミにノーリアクションだったためか、そのまま凍りついているラルちゃんは放っておき、着々と氷の魔力を手のひらへと集めていく。

 魔力操作の才能が皆無の私でも流石に集めるだけならできるはず…、一応エルフだし。


 気がつくと、手のひらに白いフワフワしたものが集まってきていた。ひんやりしていて気持ちいい。

 が、すぐにそれは消え、目の前には鬼の形相をしているリアムの姿があった。

 え、いやどうしてリアムいるの。


「なんでリア…」


「お前が魔力使ったせいで俺の部屋が人間界でいう冷凍庫並みに寒くなってんだよ!!何勝手に氷の魔力集めてんだ!!」


 よく見るとリアムの鼻からでてる鼻水もカチカチに固まっている。近くにいたラルちゃんも気づいたら氷のようにカチコチになっていた。

 どうやら魔力の操作を間違って村の温度を急激に下げてしまったようである。我ながらなんて大胆な魔力コントロール。


「俺が無事だったからよかったけど…、あと少しで村全体が氷つくとこだったんだからな」


「助かりましたリアム様」


 すかさず敬礼。

 するとリアムは照れ臭そうにそっぽを向き、舌打ちしながら部屋から出て行った。

 ヘイヘーイリアムなんてちょろいちょろい。

 あれだよねあれ、噂に聞くチョロインってやつ。


「じゃあもう一度アイスクリームづくり!レッツスタート!」


 このあと、頭に強い衝撃か走り私はばたりと床に落とし倒れた。薄れゆく意識の中、視界に2人の姿が写り込んでくる。

 急いで戻ってきたのか息を切らしたリアムと、寒さの影響か凍った鼻水を垂らしたラルちゃん。


「ふっ…私の野望もここまで…というわけか」


「「いや、いい加減学習しろ!!」」


 意識が途絶えると同時に聞こえたこの声が、私の記憶に残る最後の言葉だった。

 いや死んでないけどね!!


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