占い師は月の夢を見る1
「いらっしゃいませー!」
昼下がりの店内に、快活な声が響いた。
僕は注文を取りながら、心地よく耳に残るその声を反芻する。
「かしこまりました。少々お待ちください」
女性客に頭を下げ、カウンターへ向かう。
そこでは、さっきの声の主が忙しなく洗い物をしていた。あの声はこの珍しく忙しい店の中でオアシスのようなものだ。彼女の方に引っ張られるようで、僕もつられて頑張ろうと思えてくる。
「店長、週替わりランチセット一つで」
『りょーかーい』
キッチンの奥から普段と変わらない店長の声。
それを確かに聞き取ると、僕はランチセットのソフトドリンクを用意する。グラスを棚から取り出し、サーバーにセットする。ものの数秒でグラスにコーラが注がれ、紙のコースターと共に女性客のもとへ持っていく。丁寧にお礼を言われたので、笑顔で会釈した。
ここ最近、レインダンスは客入りが激しい。理由はわからない。師走だからか、ようやく日の目を見ることができたのか、様々な可能性はあれど、今までの売り上げの比にならないほどの好調を記録し続けている。嬉しいことではあるが、正直この忙しさは採用されてから感じたことがなかったものなので、焦焦りの方が大きかった。しかし人間というのは順応していくもので、その忙しさがいい感じに作用して僕のスキルは右肩上がりだった。先輩に肩を並べる日も遠くない。
そんな先輩と僕との関係は、少なからず前進したように思える。
「お疲れさまです、潤さん」
カウンターに戻ってくると、洗い物を手早く済ませた先輩が僕を笑顔で労ってくれた。
「れ、玲……さん、こそ」
まだ慣れない呼び方で互いを呼ぶので、僕は眩しい笑顔に太陽を見上げるが如く目をあわせることができなかった。
綺羅めくる……いや、ももこさんの一連の騒動から三週間が経った。ということはつまり、ももこさんが僕の恋路を応援してくれると宣言してから三週間でもある。やはり協力者がいるのといないのとでは天と地だ。三週間もあれば、僕がこれまで攻めあぐねていたことが嘘のようにとんとん拍子で事が進む。
最も顕著な変化だったのは、このお互いの呼び方だ。ももこさんがわざと玲さんの目の前で僕を呼び、「そういえば、どうしてあんたたちはまだ名字で呼びあってんの? よそよそしいわね」と一言。するとまるで魔法にかかったように、玲さんは僕をファーストネームで呼び始めた。そして片方だけ他人行儀なのもどうかということで、僕もファーストネームで呼ぶことになった。ももこさんは、玲さん関係のこととなると不器用さの面影がなくなる。ただ単に玲さんが単純だからというのもあるだろうが、付き合いが長いからなどという薄っぺらい理由では説明しきれないくらい玲さんの扱い方を知っていた。
ともあれ、あの人のおかげで僕は以前よりも随分と玲さんとの距離を縮めることができた。ももこさんがいなければ、僕と玲さんはほぼ平行線のままだった。まあ今も大いに近づいたわけではないが、少なくとも協力がなかった頃よりは圧倒的に希望が見えてきた。とても心強い。
「今日もまた忙しいですね」
店が落ち着いてきたのを見計らって、僕は少し声を上ずらせながら玲さんに話しかけた。
ももこさん曰く、こういう小さな積み重ねが大切なのだそうだ。会話一つとっても、口にした言葉、口にしようとしている言葉が相手にとって不快ではないかとか、関心を引くかとか、そういった取捨択一を経ることで、徐々に関係を近づけるらしい。とりあえず面白いことを言えばいいんですか、と聞くと、それは芸人の感覚だからね? と切り捨てられた。よく考えたらそのとおりだった。
だから、とりあえずは無難な会話から始めるのが磐石だと思った。これが僕の初恋なら、やはり最初から無闇に攻めるのは愚行だ。当たり障りのない会話をして、僕がより近くて親しい人間であることを玲さんの中で揺るがなくすればいい。経験値がない僕からすれば、我ながら妙案だった。
「忙しすぎてハイになりますね!」
僕の初恋が揺らいでしまいそうになった。
「いや、その言い方はちょっとアンダーグラウンドな気が……」
「? 何がですか?」
玲さんは純粋な疑問符を頭の上に浮かべた。
忘れていた。僕がももこさんに協力を仰ぐ上で、たったひとつ、本当にたったひとつだけ難点なのが、玲さんが僕の常識の範疇をちょっと超えてしまっていることだ。価値観の違いというありふれた言葉では言い表せない、僕にはない何かを彼女は持っている。でなければ当然のように男にメイド服を着させようとはしない。
そのため、ももこさんは玲さんとは昔馴染みだからいいものの、そんなももこさんがももこさんの視点から協力しようとすると、僕という常識フィルターを通る分、玲さんに効果的な攻めができているか怪しくなるのだ。関係は徐々に進んではいるが、その方向が間違っていたらという不安が湧いてくる。恋愛対象か、友達か、ということだ。ただ、今のところはプラスに向いているから、たぶん大丈夫だ。大丈夫だと信じることにする。
「ところで、どうしてそんなにハイになるんですか? どちらかというと、忙しくない方がよくないですか?」
僕が聞くと、玲さんは小さく笑った。
「やっぱり日頃から時間を持て余してると、刺激が欲しくなりますよね。それで忙しくなると、こう、グッと身に染みるというか、充実感が半端じゃないというか」
わからなくもないが、いちいち怪しげな言い回しをするのはやめてほしい。
玲さんは恍惚と頬を赤く染めた。そういうのも誤解を招くからやめた方がいい、と思いつつ、妙に艶っぽくて少しだけ見惚れてしまう。煩悩だ。煩悩が頭の半分以上を占めていると言ってもいい。好きというのは、何よりも優先されてしまう。これはもう逃れられそうにない。
それに、玲さんは僕の常識からは少し逸脱しているものの、人に影響する力がある。この間の一件で菅野さんをその気にさせたのも、玲さんの力があったからだ。柔らかな印象と優しさに、強かさも兼ね備えている。玲さんを見ると、その内に秘めた強かさが笑顔という形をとって、外界に表出しているような気がした。僕の気持ちに拍車がかかった。
もっと知りたい。出会って二ヶ月、僕は玲さんのことをほとんど知らなかった。たかが二ヶ月で、所詮はバイトという首の皮一枚で繋がっているような関係だが、今はそれだけでは済ませたくないような距離にいる気がする。もっと、彼女の奥の方を知りたい。今の彼女がどう成り立ってきたのかを、知りたい。
ふと、ももこさんの言葉が頭をよぎった。
「玲さん」
僕が呼ぶと、玲さんは零れ落ちそうなくらい大きな目をこちらに向けた。
「はい?」
まだあどけなさが残る表情が際立って、言おうとしたことが喉に詰まった。
首を傾げる仕草が、僕をたじろがせる。そして少しだけ逡巡して、
「あ、いや、何でもないです」
笑って誤魔化した。
この玲さんの顔を、不用意に曇らせてしまうような気がした。そもそも禁句と言われたことを聞こうとしたのが悪手だった。まだ二ヶ月なんだ。たった二ヶ月。心の距離がどうであろうと、僕が彼女との関係について思っていることが、玲さんのそれと同じだという保証はどこにもない。
玲さんの顔の裏側に、そんな程度の関係である僕が果たして手を伸ばしていいのか。ももこさんに聞かされた時から、漠然と、禁止されたその言葉が深い深い暗闇を纏っている気がした。きっとそれは間違いなくて、そこに気がつかないほど僕も朴念仁ではない。触れられたくないのは当然、まして僕が利己的な理由で安易に触れようとするのは愚の骨頂だ。
なんていうのは、あとから正当化したことで。
僕は玲さんの顔を見て恐くなった。彼女の顔そのものが、まるで仮面であるように感じてしまった。聞いてしまうと、彼女の魅力的な表情を剥いでしまいそうで、踏み込みきれない。
「そうですか?」
「そ、そうですそうです。言おうとしたこと忘れちゃいました」
「あー、ありますよねそういう時。若さを手放した感じがして嫌なんですよねー」
玲さんは苦笑いしながら、やれやれと首を振った。直後、フロアから「すみませーん」と声がして、「はーい」と答えた玲さんがカウンターから出ていった。
僕は客と話す玲さんの横顔を見つめた。あの笑顔は、彼女の今までを物語っているはずだ。そこであの言葉が、表情どおりの判断をさせまいと邪魔をする。
玲さんのことを知りたいという欲と、踏み込むにはまだ時期尚早だという理性がせめぎあっていた。あの顔が本当に仮面なら、何を隠しているのか。なんとなく想像はできる。だがそれを本人に確かめられるほど、僕は玲さんと深いところで繋がっているわけではない。
「どんだけ玲のことジロジロ見てんのよ、気持ち悪い」
僕が悶々としていると、右耳に刺々(とげとげ)しいセリフがぶつけられた。
振り向くと、いつ入ってきたのか、大きなマリンキャップを被ったももこさんがカウンターに我がもの顔で座っていた。
「こんにちは」
「今度はあたしをジロジロか。そのうち警察沙汰になりそうね」
「べ、別にジロジロなんて……」
「言い逃れしても無駄よ。それとも下心なんてなかった? 玲を見るのに?」
「……」
僕が目を逸らすと、ももこさんは勝ち誇ったように鼻を鳴らした。
「……性格悪いですね」
「どう言われようと、あんたの恋路はあたし次第でどうにでもなるからねー」
それはもう脅迫だった。僕は嘆息して、彼女の前にメニューを開いて置いた。
「ご注文は?」
「カフェオレ」
「だけですか?」
「さっき仕事帰りにお昼食べてきたのよ。新田のやつ、なかなか美味い店知ってやがってさー。大学の時にいろいろ巡ったんだって。随分と学生を謳歌してらしたのねー」
「なるほど」
ももこさんは嫌味を言いつつも、どこか満更でもなさそうだ。どうやらももこさんは、あの新田さんと意外と馬があうらしかった。プライベートでも何度か遊びにいったらしい。最初の方こそ少し複雑そうなももこさんだったが、日を経るにつれて固く結んだ紐をほどくように新田さんを受け入れていった。結果的にいいことではあるが、新田さんの財布が火の車になっていないか心配になった。
キッチンにいる店長に注文を告げる。返事を受け取って、ももこさんの前に戻ってきた時、妙案を閃いた。
「あの」
「ん?」
「この間、途中でうやむやになっちゃいましたよね」
「何が?」
「あ、えっと……玲さんのこと」
「玲…………あー、はいはい。思い出した。そういえばそうね」
ももこさんは小さく手を叩いた。
ちょうどいいタイミングで来てくれた。そのことを聞いたのは他でもないこの人からだし、何より一番情報を握っているであろう人だ。この人から聞き出す意外、僕のもやもやを晴らす方法はないと思う。
「あんたも、なんとなく想像はついてるでしょ?」
ももこさんは頬杖をつきながら、真剣な眼差しで言った。
「なんとなく、だったら」
「まあそうよね。よっぽど何不自由なく生きてきたんじゃない限り、なんとなくわかるはずだわ」
無論、僕もそれが想像できたから、さっき言葉を飲み込んだわけだ。
ももこさんは少しだけ視線を逸らした。
「あたしから言うことはない」
「はい?」
あっさりと断られ、僕はつい強めに聞き返してしまった。
「な、なんでですか?」
「あたしが玲のことをあんたに何か言ったって、誰も得しないもん」
「いや、僕が得しますよ」
「しないわ。あんた、自分の好きな子の……例えば、嫌な過去を知って、その上でアプローチできる? 先入観なく、やっていけると思う?」
「それは……」
たぶん、できない。
そんなことを気にしないでいられたなら、僕はもう大きな行動に出ているはずだ。
「あの時はあんたなんてどうでもよかったから、口止めのために教えようとしたけど、今は違う。どうしても知りたかったら、本人から聞くことね」
ももこさんは目を細めて言った。
「本人って……なおさらダメじゃないですか」
「そんなことないわ。玲自身の口から聞くことができたなら、その時点であんたはもう玲とそれなりに深い仲になってることになる」
「……あー、なるほど」
それもそうだ。僕が玲さんに直接そのことを聞けるということは、その時にはすでに僕は玲さんと、恐らくバイト仲間という関係以上にはなっているはずだ。
「まあ、それくらい邁進しろってことよ」
ももこさんは半分笑いながら、ひらひらと僕の前で手を振った。
つくづく、色恋沙汰の経験値が圧倒的に不足していることを痛感する。その経験値の少なさゆえ、もしももこさんの協力がなかったらと思うと、背筋が凍った。きっとあっという間に特攻して撃沈し、後悔という海の底に沈んでいたに違いない。
しばらくして、キッチンから僕を呼ぶ声が聞こえた。僕はできあがったカフェオレをコースターと一緒に持ち、ももこさんの前に置く。「ありがと」とだけ呟いて、ももこさんはストローでちびちびと甘い液体を吸い始めた。
「……ももこさんて、アイドルなのになんでそんなに恋愛とか詳しいんですか?」
僕はふと思いついた疑問を、思うままももこさんに投げかけた。
「は?」
「いや、だってアイドルって基本、恋愛とか、そういうスキャンダラスなものって禁止されたりしますよね?」
「うん」
「じゃあももこさんが恋愛に詳しいのは、事務所に内緒で誰かと付き合ってるから――」
「あんたバっカじゃないのっ!?」
僕が言いかけたところで、ももこさんがものすごい勢いで僕の口を塞いだ。
「ひはふんへふは?」
「違うし、こんなとこでめったなこと言わないでよ! いつになくお客さんが多いこんな時に!」
それはごもっともだが、なんて失礼なことだろう。
ももこさんは大粒の汗をかきながらフロアを見渡し、こちらに向けられた目がないことを確認すると、ゆっくりと僕の口から手を離した。
「じゃあなんでそんなに詳しいんですか?」
「それは……」
「?」
「…………少女マンガ」
頬を紅潮させ、拗ねたように口を尖らせながら呟いた。
「えぇー……」
「な、何よそのいかにも残念そうな顔。あんた自分の立場わかってるんでしょうね?」
「いや、だって……」
あまりに非情な現実に、僕は感情を隠しきれなかった。
僕が指南書の如く信用しようとしていたももこさんの言葉が、少女マンガからの受け売りだったとは。僕はそんな幻想世界のノウハウを教えられて、何一つ疑うことなく、いやむしろ言われたとおりにすれば玲さんと上手くいくと信じ込んでいたわけだ。浅はかなり。
「ちょっと、少女マンガに失礼よ」
ももこさんが顔を赤く染めたまま、僕を睨みつけた。
「いやいや、軽い詐欺ですよ。別に少女マンガが悪いとかじゃなく」
「さっ……それは心外だわ! 別に何から何まで少女マンガからってわけじゃないし!」
「じゃあなんですか? 他に何からの受け売りを僕に垂れ流してるんですか?」
「こんの……!」
ももこさんの赤い顔に青筋が浮かぶ。しかし自分の非を認めたのか、すぐにカフェオレを一気に吸い込んで、大きく深呼吸した。
「……あたしアイドルだからさ、嫌でも男の人と関わるの多いじゃない? ファンとか事務所とかさ。だから、どういうことをされると女の子は嫌なのかってのはわかるわ」
「おっと、意外とまともな答えなので僕驚いてます」
「あんたあとで覚えてなさいよ……!」
またももこさんが噴火しかけたところで、僕はすぐに追って聞く。
「まあまあ。で、嫌なことって?」
「……っ、はあ。そうね。まあたとえば、安易に触られるとか、馴れ馴れしいのは嫌ね」
「ほう」
「あと、なよなよしてるのも嫌かな。やっぱり紳士的なのが一番なのよ」
「ほうほう」
「だからこういうラブレターとかじゃなくて、面と向かって伝えてほしいのよね」
「ほう……ん?」
「ん?」
僕だけでなく、ももこさんまで素っ頓狂な声を上げた。
僕とももこさんの視線の焦点にあったのは、ももこさんが手に持っている、四つ折りにされた白い紙だった。
「なんですか、それ」
「知らないわよ。この下の荷物置きにあったんだもん」
ももこさんはトントン、とカウンターを指でつついた。
「何か書いてありますね」
僕が言うと、ももこさんはすぐにそれを開き始めた。その動きには全く躊躇が見られなかった。
明かりでうっすらと紙が透けて、一面をびっしりと埋める黒い筆跡が僕にもわかった。ももこさんがその筆跡を目で追っていく。そして眼球の動きが止まった瞬間、ももこさんの顔がグロテスクな虫を見るような酷いものに変わった。
「ど、どうしました?」
「……」
ももこさんはその形状を記憶してしまったみたいに表情を一切変えないまま、その紙を僕に差し出した。僕は受け取り、恐る恐る目を向ける。
「これは……」
そして、唖然とした。
『拝啓 落木部玲様』
頭語の部分からして、もう感情のこもっていないただの置手紙なり何なりではないことは明白だった。そして本文を読み進めていくと、それは確信に変わった。僕は思わず顔をしかめた。
「おぉ! ももこちゃん、いつの間に来てたんですか!」
そうこうしている間に、玲さんがカウンターに戻ってきてしまった。ほくほく顔の玲さんは、僕たちの顔を見るなり無垢に首を傾げた。
「玲……これ……」
辛うじて搾り出したももこさんの言葉に反応して、僕は手にしていた紙を玲さんに渡した。
「なんですかこれ…………あー、なるほど」
「どういうことよ、玲?」
苦笑する玲さんに、ももこさんは訝しげに聞いた。それに同調して、僕も力強く頷く。
「あー、えーっと、なんていうか……」
玲さんはしばらく悩んでから、あくまで軽く、少なくとも僕たちが思っているより何でもなさそうに、
「最近よくお客さまにいただくんですよね。でもせっかくいただいたのに、どう返せばいいのかわからなくて……」
「それ、同じ人? ていうか男?」
「? まあ……」
「そいつ、他にもあんたに何かしてきた?」
「んー、別に何も……あ、強いて言うなら、家の最寄の駅でよく見かけますね。同じなんですかねぇ」
「……」
「あれ、どうしたんですか二人とも?」
僕も、ももこさんも、きっと考えていることは同じだ。玲さんのあどけない、無防備な表情が、僕たちの中に大きな不安を産み落とした。
僕は放心していた。よりにもよって僕の好きな人が、当事者になってしまった。そしてまさかこんなことにまで巻き込まれるのかと、己の運の悪さを呪った。
「……玲、よく聞いて」
「?」
ももこさんが努めて平静を装いながら、玲さんに伝えるべき事実を伝える。
「それ、ストーカーだから」
「はい?」
空気が沈み、ドアも開いていないのに、冷たい風が吹いた気がした。
玲さんの中で、自身に起きている現実とももこさんの言った事実が繋がるまで、少し時間がかかった。そしてその事実を自身の危機だと判断するのに、僕たちの言葉による説明と、また少しの時間が必要だった。




