「スランプの末」
スランプは人の頭を蕩けさせる。現に私の脳はどうやら蕩けてしまっているようだ。
一言も浮かばぬ言の葉達を罵倒しながら、小さな赤子のように覚えたての言葉を連ねていくだけ。結果的にそれをそのまま人前に晒すこととなってしまったこの羞恥。一体どのようにしたらよかったのだろうか。
私には人が求める文書と言う物がとんと見当も付かぬのです。
ああせよ。こうせよ。
彼等はしかめっ面で教壇の上に立ち自分の感情を述べます。それを決め事だと言って我々に押し付けてきます。
そうして私のような愚か者はそれが鬱陶しくって仕方が無くなり、跳ね除け、嘲笑い、気が付けば窓の淵から半分程身体を仰け反らせているのです。
この手を引くものはおそらくいないだろう。いたとしても私はそれを跳ね除けてしまうだろう。
そういう人間なのだ私は。
人と同じことが許せぬ。美しくないことが許せぬ。
だから自分の書く文章が許せぬ。この世の何よりも愛おしく思いながら、心の底から憎しみが溢れかえってくるこの有様。
しかし、もうそれもしばらくは無くなるだろう。
私の頭が蕩けてしまったから。
私は筆を放り投げます。
どこか遠い空の上へ。
そうして、戻ってくるころにまたそれを使って何かを書いて御覧に入れましょう。
それが貴方にとって良い物かどうか私には分かりませんが、きっと私にとっては何かを掴んだその時分になりでしょう。
それだは、それまでおやすみなさいませ。
今の私は物を書くほど飢えていないのです。