ダブの遺跡、その1―グループに分かれて―
ログテル砂漠の南端に位置するダブの遺跡の扉の謎を解き、リタは他九人の龍戦士と共に遺跡の中の謎を探り始めた。だが、中はリタ達が想像している以上に広く、複雑に入り組んでいる。なかでも、入り口から三メートル行った所では、二つの分かれ道と、古代文字のようなものが彫られた一つの石盤がある部屋に出会した。その石盤を、ヨゼフは不思議そうに見る。
「古代文字でもない。かといって、僕達が日常で使ってる文字でもない。どう読めば良いんだ?」
ヨゼフは首を傾げる。
「仕方ない。ここからは五人ずつのグループになって、この遺跡の謎を解こう。もしかしたら、アウン・ファレルへの行き方もわかるかもしれない」
リタは他九人の龍戦士を纏め、彼らのグループ分けをした。一組はリタ、ヨゼフ、ナンシー、ヒア、アイルの五人。もう一組はリアス、ビオラ、ニアロス、ペレデイス、スーザンの五人という組み合わせで、リタは別々に行動することに決めた。グループ分けが決まると、早速十人は分かれて行動を開始する。
リタ達のグループは右側の道を、リアス達のグループは左側の道を、それぞれ進んでいく。リアス達と分かれ、リタ達は早速、別の部屋に通じる階段を、一歩ずつ上っていく。
渦を巻くようにぐるぐると階段が続いているせいか、ヨゼフは時々吐きそうになった。それでも彼は懸命に持ちこたえ、他四人の後についていこうと努める。途中から五人は階段についている黒い手すりに掴まりながら、遺跡の二階を目指す。五人が二階に到着した頃には、太股がぱんぱんになり、膝小僧の近くが痛くなるほどに疲れていた。
「やっと一段上った……。少し休まないか?」
ヨゼフの提案には、四人とも賛成した。一分間休憩し、リタ達はまた立ち上がった。
「今度はあんなに長い階段はないはずだよ。時間があまりないから、ここからは休みなしで行くよ。そのつもりでね」
リタは、砂龍戦士としての覚悟を決めた。その思いが伝わったのか、ヨゼフ達は同時に首を縦に振る。その時、どこからかカタカタ、という音が五人の耳に入った。五人は音に反応し、それぞれの武器を構える。だが、アイルの腕は鎖をしっかり握っているものの、どこだか臆病になっている雰囲気が漂う。彼は身震いしながら、水色の鎖を握り締める。
(アイルって、本当に怖がりだな。未来の大公としての自覚を持たないと、到底氷龍戦士としてやっていけないぞ)
ヨゼフは口には出さなかったが、アイルを怖がりと決めつける。リタ達の視線の先には、何体か人形が倒れている。だがそれらは、全て再起不能になっているかのように動かない。
「こいつら、操られてるのか?」
「いや、おそらく自分の意思で動いているんだと思う。そうでなければ、さっきの音はあり得ない」
リタとヒアが人形の正体についてあれこれ言っていると、倒れていたはずの人形が、一体だけ起き上がった。人形は、五人を珍しげに見ている。
「な、何ですか?」
アイルは、おそるおそる人形に訪ねた。すると、人形は意思があるかのように、魔族達の言葉で五人に話しかける。
「はじめまして。私は、《ダブエット》という自律型人形です。私のことは、《ダブ》と呼んで下さい」
《ダブエット》という人形は、自己紹介をしてから、リタ達にお辞儀する。赤色の髪を二本に分けて結っていて、茶色の目をしたこの人形は、まるで魔道族の民のような顔をしている。それを見てナンシーは、キア領主のことを思い出す。
(キア、今頃どうしてるのかしら? アルエスに生命力をほとんど吸い取られてるから、そう簡単に目覚めないと思うけど)
ナンシーは、女性型人形のダブを、簡単に受け入れることはできなかった。彼女の尖った耳を見ているだけで、魔道族に奴隷として働かされていた頃の自分を思い出してしまうからだ。
「決まりだね。ダブ、一緒にアウン・ファレルへの行き方を探ろう。ナンシー、良いね?」
リタは自分だけで決めてしまったと思い、ナンシーにダブの同行に対する意見を求める。ナンシーはまだ迷っていたが、首を縦に振る。
こうして、一時的にも《自律型人形ダブエット》のダブが仲間に加わった。リタは早速、彼女にこの遺跡を案内するように頼んだ。彼女は快く、リタの依頼を引き受けた。




