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ガルドラ龍神伝―闇龍編―  作者: 水沢らくあ
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魔道族の領国、その5―キアの正体―

下の階にいる魔道族の民のことはヒア達に任せ、五人はキアがいると思われる屋上に通じる扉を開いた。屋上には兵士達はおろか、配下の魔道師もいない。そこにいるのは、レザンドニウムの領主であり、魔道姉弟の父親でもあるキアがいるだけだった。


 彼の様子は、リタ達が想像している以上に変わっている。指や手首が痩せ細り、服はよれよれになっていた。顔からは玉のような汗が大量に出て、今にも脱水症状が起きそうだ。リタ達の目の前で、キアは必死にもがいている。それはまるで、何かに取り憑かれ、命を吸い取られつつあるようにも見える。


「キア、お前が何をしようとしてたかはわかってる。闇龍アルエスをこの地に呼び出し、全ての魔族達を根絶やしにしてまで、ガルドラを支配しようと暗躍した」


 リタは凛々しい顔でキアを真っ直ぐ見つめ、


彼を説得しようとする。メアリーが口を挟むように、彼女の前に出る。同時に弟のリゲリオンも、姉の隣に出る。


「お父様、こんなことをしても無意味です。むしろ憎しみを生み、この魔界は血の海になります」


「メアリーの言う通りだ! 本来、親父はそういう魔族じゃない。どの魔族にも心を開き、この領国を統治してきた。親父のような領主がいてこそ、この領国は成り立つんだ!」


 リゲリオンの怒鳴り声が、黒く染まった空を突き抜けるかのように響く。彼の声に反応し、キアが呟くように答えた。聞きづらいほどの小さな声であったが、リタには辛うじて聞こえる。


「違う……。俺は……闇龍アルエス。キアは、俺が完全に取り込んだ。この……まま……この愚かな領主を……生かしておくものか……」


 闇龍アルエスと名乗る黒い靄のようなものが、リタ達に語りかけるように言う。その靄が乗っ取っているキアの体が、抵抗するようにもがいている。そして微かではあったが、リタ達に助けを求める領主自身の声が聞こえる。


「砂龍王女よ……。そして、三人の龍戦士に、二人の我が子達よ。この魂を鎮めてくれ……」


 そう言うとキアは咳き込み、その場に倒れた。彼の呼吸は速まり、息も絶え絶えになっている。


(間違いない。アルエスには、あらゆる命を吸い取る能力がある。あいつはそれを利用してキアに取り憑き、九年間に渡って彼の命を吸い取ってた)


 どうりで優しいはずの領主の態度が急変して、冷酷な考えが芽生えていたはずだ、とリタは思った。闇龍アルエスの魂らしき靄が牙を剥く頃、先に役目を終えた氷龍戦士アイルが、五人の所に来た。


「こ、これは何が起こっているんです?」


 アイルは現状を把握できずに、混乱するばかり。


「わからない。でも、このままだとキアが死んでしまう。アイル、君の力を貸してくれ」


 急にリタに指示を出され、アイルは首を傾げる。だが、すぐに自分が何をすれば良いのか、アイルは理解することができた。彼は黒みのかかった紫色の靄に狙いを定め、鎖を引っ掛けた。鎖で靄を縛ると、彼はそのままそれを引っ張り上げた。


 六人は慌てて、元に戻った領主の所に駆け寄る。


「お父様、しっかりして下さい」


 メアリーはキアに囁きかけながら金の髪飾りを外し、額の汗を優しく拭う。キアは娘の声に反応し、囁くように語りかける。


「メアリー……。私のことは良い。闇龍を……アルエスを葬るのだ。奴を野放しにすれば、必ず良くないことが起きる……」


 そう言うと、キアは気絶した。その時の彼は、ほとんど息をしていなかった。紫色の靄は物凄い速さでリタ達の間を縫うようにかけていき、やがて彼女達の目の前で姿を現す。闇のように黒い体に、ごつごつとした鱗。その鱗は怒りと憎悪に満ちているように、逆立っている。靄が姿を現した頃、残りの龍戦士全員が、リタ達の所に集まった。


「待たせてすまない。ちょっと、いらない時間を食ってしまった」


「ヒア、あなた達は一番最悪な時に戻って来てしまったみたいだね」


 そう言うとリタは、靄の中から出てきた黒い龍の方を指差す。


「まさか……」


「そう、そのまさかさ」


 リタの代わりに、黒い靄が答える。


「俺の名はアルエス。千五百年後の今日、この時を俺は待っていた。デュラックよ、今こそお前達に復讐する時だ!」


 そう言ってアルエスは鋭い牙を剥き出しにし、黒い大顎でリタ達に噛みつこうとする。


「まずい。あいつはやけになってる。アルエスを止めるには、巨大変身しかない」


 リタは右腕に装備した武器を外し、他九人に巨大変身を呼びかける。彼女は自分の力を制御するために尻尾に巻いていた青いリボンをほどき、わざと力を暴走させる。他九人も、力を暴走させた。その力は、凄まじいものだった。十人の力は、彼女達を別の姿へと変えていく。猛獣のように牙を剥き出しにして、十人は一斉に、闇龍に噛みついた。


 痛みを堪えきれずに悲鳴のような雄叫びを上げたが、アルエスは持ちこたえた。


「俺は……俺は負けん。千五百年前のようにはいかん!」


 アルエスは意地を張り、更に闇の魔力を強めていく。十人の龍戦士はその重圧に耐え切れず、そのまま吹き飛ばされてしまった。


 後に残ったのは、倒れたキア領主とその子供達、そして城中の魔道族の姿だけだった。

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