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ガルドラ龍神伝―闇龍編―  作者: 水沢らくあ
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魔道族の領国、その3―氷系魔道師の救出―

漆黒、といっても過言ではないほど、暗く、じめじめとした場所が続いている。その場所は、牢屋の近くだった。牢屋、といってもここは、ただの囚人達がいる所ではない。ここはかつて、キアによって呪いをかけられ、本来備え持っている魔力を失っていたリタ達が囚われていた、いわゆる《奴隷部屋》の出入り口付近である。


「本当に、こんな所にメアリーがいるの?」


 すかさず、ナンシーが訪ねた。


「『俺の考えが正しければ』と言ったはずだ。まだ、この辺りにメアリーがいるかどうかはわからないが、魔族か魔物の気配を感じる」


 まるで何かに導かれているかのように、リゲリオンは言った。それに対して、多少の疑問を持っていたが、ヨゼフは現時点では聞かないことにした。


(自分から頼んでおいて、その言い方はないだろう? やっぱり腹が立つな、リゲリオンは)


 リタは本音を口にしなかったが、内心では腸が煮えくり返っている。その時、四人は槍や棍棒を持った兵士達が、見回りに来ているのを見た。


『敵は凄く手強そうだよ。どうする、リゲリオン?』


 ヨゼフは小さな声で、リゲリオンに話を振る。


「決まっている。例え裏切り者と言われても、俺はメアリーを助ける。掟なんて、アルエスが親父の体を乗っ取って勝手に作り替えただけの、単なるまやかしだ」


 そう言ってリゲリオンは、勢いよく兵士達に向かっていく。隠れていた三人は呆れて、彼の援護に入った。


(流石はレザンドニウムの稚だな。だけど、その無鉄砲な所が、玉に瑕だぜ)


 そう思いながらヨゼフは、棍棒を持った兵士二人を相手に、槍一筋で戦う。


「ブルー・ボール!」


 彼の水属性の魔力からできた玉は、兵士の一人の腹に命中した。玉が割れ、中から大量の水が出る。その水のせいで、兵士の鎧は錆びていく。


「この餓鬼、なかなかやるな」


「僕は餓鬼じゃなくて、水龍戦士だよ」


 そう言ってヨゼフは、軽々と兵士達の同時攻撃を避け、槍で二人同時に足払いをした。兵士達は転倒した。


 リタは爪で一回引っ掻くだけで、槍を持った女性兵士を気絶させた。


 ナンシーは、火属性の中級呪文《バイル・グオリテス》を繰り出し、同じく槍を持った兵士を火達磨にして、彼に火傷を負わせて気絶させた。一方で、リゲリオンは未だに大剣を持った兵士と戦っている。彼が持つ水属性の魔力も、そろそろ限界に近づいてきているようだ。彼の体はぼろぼろで、右手首から緑色の服、そして黒色のズボンにかけて血が出ている。彼はあまりの傷口の多さに、跪いてしまった。


(くそ、俺は自分の姉を救うこともできずに、終わるのか……)


 リゲリオンは、半ば諦めかけていた。それを見ていたリタは、必死に叫ぶ。


「リゲリオンの馬鹿! 一人で勝手に諦めるな! メアリーを――あなたの姉を助けるんだろう? 私達がついてる。だから、諦めるな!」


 そう言ってリタは、リゲリオンの前に出る。リタは大きく手を振り、砂属性の初級呪文《ヒャッカンタフ》で兵士を倒した。


 リタは、素早くリゲリオンの所に駆けて行く。彼の腕や首に、数々の赤い痣ができている。


「大丈夫か、リゲリオン」


 リタは彼を心配して訪ねる。だが、彼はそれを振り切るように言う。


「俺のことを心配している暇があれば、兵士達が鍵を持っていないか探れよ」


 リゲリオンは怪訝な顔をして、リタを促す。その態度に苛々しながらも、リタは先程四人で倒した兵士達の鎧から、牢屋の鍵を探る。


(折角心配してあげてるのに……。こういう奴と行動するのは、もうこれっきりにしてほしいね)


 リタは心底、嫌な気持ちになった。彼女は、牢屋の鍵を見つけた。鍵、といってもそれは一つの輪にくっついており、一目見ただけでは、どれがどの牢屋の鍵なのか見当がつかないようになっている。


 リタは鍵束をショルダーバッグにしまい、あちこちを確かめながら、ヒア達がいる場所を目指す。その途中、凄まじいほどの冷気と共に、女性らしき悲鳴が四人の耳を過った。


(この冷気、それにこの悲鳴……。まさか、メアリーが?)


 声の主が姉だと思ったリゲリオンは、すぐさまその声がする方へ走って行く。三人も慌てて、彼の後を追う。


 大きな鏡があるかのように、何度も似たような通路が続く。しばらくまっすぐに廊下を進むとそこには、一つの広々とした牢屋があった。その牢屋の中を覗き、リゲリオンはふと、目を凝らす。その中にいたのは、鞭を持つ二人の女性兵士と、黒い紐でぎちぎちに縛られている氷系魔道師メアリーの姿だった。


 長時間鞭に打たれ続け、彼女が身につけている水色の服や黒いズボンはぼろぼろに破け、水色の髪からは、領国の姫の面影すらなくなっていた。それでもメアリーは、ここから脱出する術を考えている。


「姫様も諦めが悪いですね。稚はキア様のご命令に背き、今頃は牢屋――」


 「牢屋行き」と言いかけた女性の目には、未だに囚われの身となっていないリゲリオンの姿が映っていた。


「稚! どうしてここに? それに、龍戦士達まで」


 女性達は、四人の無事に驚いている。


「『どうして』? それは、俺が聞きたい。親父はおろか、俺達にすら背けないはずのお前達が今、姉を《お仕置き部屋》でぼろぼろにしている。これは、立派な罪だ。その償いはしてもらうぞ」


 リゲリオンは、火系魔道師フィアロスのように逞しい口調になり、女性兵士達を睨みつける。彼女達はその眼差しに怯み、動けなくなった。


 その隙を見て、リタは牢屋の鍵を開ける。四人は紐で縛られたメアリーの側に駆け寄る。


 三人の龍戦士は、牙で固い紐に噛み付き、緩めていく。緩める程度にしていたつもりだったが、意外にも簡単に紐がほどけた。メアリーはかなり窶れていたが、なんとか立つことができた。


「ありがとう、リゲリオン。そして龍戦士達。私はお父様がリタ姫の父親に毒を盛ったことを、あなた達に知らせたくて……」


 メアリーが無理に話そうとするのを、リゲリオンは制止した。


「もう良い。あれは俺がやったことだ。親父は悪くない。それに、砂龍王は《薬仙人掌》のおかげで、一命を取り留めたようだ」


 リゲリオンは父親を庇うように、彼が無罪だと言い張った。


「リゲリオン、そんなに自分を責めないで。それに、あなた達にはまだやるべきことがあるわ」


 ナンシーは魔道姉弟を慰め、説得した。彼女の意見には、魔道姉弟も納得している。


「そうね。私達姉弟は、キアの子供。つまり、彼を説得できるのは私達だけ」


「そうと決まれば、まずはヒア達と合流しよう」


 リタは四人を纏め、ヒア達と合流するために、ひたすら城内を進む。

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