表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ガルドラ龍神伝―闇龍編―  作者: 水沢らくあ
52/77

最後の龍戦士、その2―スーザンのありのままの姿―

スーザンとパーリーを家に帰し、リタ達は、金龍族族長の屋敷で一夜を沸かした。丁度四人が朝食を済ませた頃、スーザンが屋敷に着く。それを上から見ていたペレデイスは、歯ブラシをくわえながら彼女に声をかける。


「よお、来たな、スーザン。今日は、明るくいこうぜ」


 ペレデイスとしては、はっきりと言ったつもりだった。が、スーザンには彼が言っていることが、「ふにゃふにゃ」という感じに聞こえ、上手に話を掴めなかった。支度を済ませ、リタ達はスーザンと合流し、神殿に向かう。


「スーザン……。あの子は、慌てんぼうだからな。大丈夫か?」


「父さんが心配するまでもなく、大丈夫だと思うよ。いざという時には、リタやあの水龍族のちびも一緒だし」


 半ば不安げな眼差しで、オルファニス族長とディートは、スーザンを見送る。


 四人はスーザンの案内で、メルディーンから西に三十メートル離れた所にある、《メルディーン鉱山》という所まで足を運んだ。この鉱山は、何度掘っても掘り尽くすことはない、と言っても過言ではないほど、金塊や宝石がたくさん掘れることで有名な場所だ。


 町への入り口のことを思い出したのか、ナンシーが訪ねる。


「ねぇ。昨日あなた達を襲った召喚獣が言ってた、《聖なる金塊》って何?」


 ナンシーは、《聖なる金塊》について、スーザンに質問した。聖なる金塊とは、金龍神レグルスへの捧げ物となる金塊のことで、その産出地はこのメルディーンである、とスーザンは説明した。四人はふむふむと頷いている。


 リタ達が話しながら歩いていると、鉱山の奥地とされる場所に着いた。


「ここが、もしかして……」


「そう、ここが金龍神レグルスの神殿周辺よ」


 スーザンは、前にもここに来たことがあるかのように言った。この神殿は神殿長だけでなく、金龍族の少女達も足を運ぶ場所なのだと、スーザンは言った。


「金龍族の少女達もってことは、当番みたいに『今日は誰が行く』っていうのがあるのか?」


 ペレデイスが訪ねた。


「ええ。ただ、出入り口はここよりもずっと高い所にあって、しかもそこへの道は、つるつると滑りやすいの。だから、金龍神への捧げ物は、《勇気のある金龍族の少女》だけがすることになってるの」


(なんだか大変だな、スーザンも。こんな宗教的なことをしなくても、魔界の平和は俺達龍戦士が守ってやるのに)


 ペレデイスは、金龍族の少女達に課せられた仕事を、皮肉に思った。


 普通の山脈のように険しい鉱山を登り、リタ達は神殿の出入り口前に着いた。鉱山の高い場所にあるだけあって、この神殿は金の縁取りが施してあり、また金龍神レグルスを思わせる飾りや、ルビーやサファイアといった宝石が、出入り口に鏤められている。


「千五百年前の族長は、神となった甥のために、相当な金をつぎこんだね」


 リタは思わず、本音を口にした。


 五人は早速、神殿の中に入った。この神殿の中も、雷龍神の時と同じように真っ暗な部屋が続く。目が慣れていないせいか、ペレデイスはあたふたとしている。彼は一瞬躓きそうになり、柔らかい物によっかかるようにして、防いだ。


「ふう、助かった……」


「『助かった……』じゃないわよ! あなたは、どこを触ってるのよ!」


 スーザンに言われ、ペレデイスははっとして、右肘をどかせる。


「悪いな。しかし、スーザンがまさかペチャパイだったとはね……」


 《ペチャパイ》という言葉に反応してスーザンは、身を震わせる。そして、思いっきりペレデイスの頬を引っ掻いた。


「全く、近頃の男は、デリカシーってものがわかってないんだから……」


 スーザンはぶつぶつ言いながら、リタ達よりも先に行く。リタ達も、すぐにその後を追う。


「痛てぇな。スーザンの爪は、強力だ」


「あんたが、彼女の気に障ることを言ったからだろう?」


 ペレデイスとヨゼフは、まだ先程のことについて言っていた。


 出入り口から数メートル進んだ時、五人は妙に曲がりくねった道に遭遇する。おまけに、その道はとても狭く、リタ達の行く手を阻んでいるかのように見える。その道の先には、出入り口と似たデザインを施した扉がある。だが、よく見るとそれは、強力な結界によって、固く守られている。


「きっと、ついさっき、魔道族によって張られたものね。どうすれば良いの?」


 ナンシーは、困った顔をする。その時、向こう側からギシャア、という鳴き声のようなものが聞こえた。


「気をつけて。何かいるわ」


 ナンシーが、皆に注意を促す。


「相手がどんな魔物だとしても、俺達は負けないさ」


「ペレデイスったら……。あなたはどうして、そう調子に乗った言い方をするの?」


 ペレデイスの拍子抜けした陽気さに、ナンシーは呆れている。五人は、それぞれの武器を構えた。


「スーザン、君も戦えるのか?」


「馬鹿にしないでくれる? 私はあなたが思ってるほど、柔な女じゃないわ」


 その意気込み通り、スーザンは一見すると護身用のようにも思える二本の短剣で、蝙蝠のような魔物を一気に切り裂いていく。スーザンの手によって、魔物達は全滅した。彼女が戦う姿を見て、四人は呆気にとられるばかりだった。


「凄い。あなた、短剣の使い方を、どこで学んだの?」


 ナンシーが訪ねたが、スーザンは「内緒よ」と言って、答えなかった。またしても彼女は、四人の先を行こうとするが、急ぎすぎて神殿の底に落ちそうになった。その腕を、リタ達が一所懸命に引き上げようとする。


「駄目よ、リタ。離して。このままじゃ、あなた達まで落ちるわ」


 スーザンは諦めたように言った。だが、リタは首を横に振る。


「そんなこと、できるわけがないじゃないか。私達は友達だよ。それに、万が一落ちそうになっても、私は飛べるから、君達を助けることもできる」


 リタの言葉を励みにし、スーザンは頑張った。四人は一緒に歯を食い縛り、スーザンを引き上げる。彼女は、無事に足場まで引き上げられた。四人は、安堵の胸を撫で下ろす。


「助かったわ。ありがとう、四人とも」


 スーザンは礼を言った。だが、すぐにペレデイスが皮肉を言う。


「それにしても、スーザンって結構慌てんぼうなんだな。俺の予想では……」


 そう言いかけて、ペレデイスは言葉を切る。スーザンが、怖い顔で彼を睨みつけていたからだ。


(まずい。ここで彼女を怒らせると、あの時の二の舞を踏むことになる。ここは大人しく、黙っていよう)


 ペレデイスはびくびくしながら、スーザンの神経を逆撫でしないようにした。その様子を見ながら、他の三人が笑う。五人は無事に、扉の前に辿り着く。


 先程五人に襲いかかってきた蝙蝠のような魔物の群れをスーザンが倒したためか、強力な結界はなくなっている。


「怪しいね。きっとこの先に、金属性の魔道師が潜んでるんだ」


 リタは、魔族の気配を感じ取ったように言った。スーザンが予め持っていた鍵を、ジーパンと交差しているベルトの境にあるポケットから取り出し、それを扉の鍵穴に差し込む。だが、その鍵は古いうえに錆びているため、抜けなくなってしまった。


(仕方ないわね。なんせ、三十年前の鍵だもの。錆びて当然ね)


 スーザンはそう決めつけ、鍵のことは諦めた。五人は、そのまままっすぐ、扉に入る。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ