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ガルドラ龍神伝―闇龍編―  作者: 水沢らくあ
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ゲルデナの雷龍神、その4―雷龍神ハンスの祭壇―

暗闇が続くなか、リタとその仲間達は手分けして神殿内を探り、進んでいく。途中で仲間に化けた召喚獣がリタを襲うこともあったけれど、彼女はそれに迷いもせず、彼を倒すことに成功する。その時の残酷さを覚えながらも、彼女はひたすら神殿の奥を目指す。しばらく走ると、リタはドーム状になっていて、広々とした空間に出た。


(きっとここが、この神殿の中央なんだ)


 リタは部屋の雰囲気から、ここがどういう所なのかを想像していた。別の出入り口から、ヨゼフとペレデイスが来た。二人ともリタを見ると、笑顔になる。


「リタ……。良かった、無事で何よりだよ」


 ヨゼフは、涙を流しながら言った。その時の彼の体は、なぜか黒焦げになっていた。


「ヨゼフ、その黒焦げの体、何があったの?」


 リタは心配になり、ヨゼフに訪ねた。それをヨゼフが案じて、「ありがとう、僕は大丈夫」と言った。続いて彼は、黒焦げになった理由をリタに話す。


「この神殿に入って数メートル走った時、僕はペレデイスの後ろ姿を見かけたから話しかけてみた。でも、彼があまりにもおかしな言動や仕種をしてきて、次々と質問攻めしてやったのさ。そしたら、急に『俺の正体を見破ったな』とか、わけのわからないことを言って、召喚獣みたいな奴と戦って――」


「で、その途中に感電して、黒焦げになったの?」


 リタが聞いたことに対し、ヨゼフは静かに頷く。その時、彼女達の後を追うように、ナンシーが来た。


「もう、災難だったわ。まさか、召喚獣が、リタに化けて出てくるなんて……って、まだいたの?」


 合流して早々、ナンシーはリタを先程戦った召喚獣だと思い込み、斧を左手で構える。それをヨゼフが、必死に止めた。


「待てよ、ナンシー。こっちは、本者のリタだよ」


「え、そうなの?」


 ヨゼフが言ったことに、ナンシーは驚いた。彼女は斧をしまい、そっとリタの全身を覗くように見る。そして、先程ヨゼフが言ったことが本当だと確信したように、ふむふむと頷いている。


「良かった……。勘違いしてごめんね」


 ナンシーは謝った。


「いや、大丈夫だよ。私もさっき、ヨゼフを勝手に召喚獣だと思い込んじゃったし」


「……」


 リタの発言に、ヨゼフは嫌気がさしてしまった。


(召喚獣と戦ったのは、私だけじゃないんだ)


 リタは仲間達が話しているのを聞き、そう感じた。


「合流したのは良いけど、どうする? ここも出入り口が幾つもありそうだよ」


 ペレデイスが、鬣の乱れを直しながら言った。その言葉を否定するように、リタは首を横に振り、正面の扉を指差す。その方向には、カーテンのようにひらひらとした物がついている出入り口がある。


「きっと、あの向こうに、雷龍神ハンスの祭壇があるのね」


 ナンシーは、期待に胸を膨らませて言う。リタ達は四人で団結し、手前の出入り口に入る。


 召喚獣か魔道族の気配を感じているかのように、三人の龍戦士はそれぞれの武器を構えた。ペレデイスは、急に気弱になった。足ががくがくと震え、歯軋りを始めた。リタは怖がらなくても良いさ、と言いたげに、ペレデイスの歯軋りを制止する。


(そう、彼が怖がる必要なんてない。戦うのは、私達だけ。彼が新たな龍戦士というなら、話は別だけど)


 リタは自分に言い聞かせる。部屋に入ると、その手前には巨大な雷龍神像があった。その石像の真下には、黄色の水晶玉がある。


(思った通りだ。ここが、雷龍神ハンスの祭壇なんだ)


 リタは思った。四人がしばらく石像を眺めていると、リタの背後から稲妻のようなものが飛んできた。それを察知してか、リタ達は軽くかわした。


「いきなり稲妻で攻撃するなんて、大したご挨拶じゃないか」


 リタは、四枚の羽を使って宙を舞いながら言った。間もなく彼女は、地面に足をつける。


「流石は、砂龍王の娘。身のこなしは、大したものだな」


 先程四人が入ってきた方向から、今度は稲妻模様が入った黄色い服を着た黒髪の男性が入ってきた。


「お前は誰だ? この神聖なる雷龍神の居場所から、出て行け!」


 ペレデイスは侵入者の男性に向かって、強く言い放つ。それを、ヨゼフが制止した。その時の彼の目は、後は僕達に任せろと言いたげに、ペレデイスにはとれた。


「私はバティカル。雷の属性を操る上級の魔道師で、キア様の忠実な僕だ」


 そう言うとバティカルという男性は、右手から雷属性の魔法を、リタ達に向けて放つ。


「アクア・ウォール!」


 ヨゼフは槍先を地面に突き刺し、水の壁を作る呪文の名を叫ぶ。すると、地面の裂け目から、波のようなものが現れ、稲妻を防いだ。それはまるで、リタ達を守っているかのようだ。


「なかなかやるな。流石は、水龍戦士というだけのことはある」


「前に似たようなことを、別の魔道師から言われたよ」


 ヨゼフは、バティカルと似たようなことを言われ続けているせいか、うんざりした顔をして答える。黒焦げになった顔を拭きながら、ヨゼフは槍を持ち直す。


 次にリタは、バティカルの背後に回り、攻撃する隙を窺う。


「バティカル、あなたの魔力は大したもの。でも、隙が大きすぎるね。ヒャッカンタフ!」


 バティカルが攻撃の手を休めた。その一瞬の隙を、リタは見逃さなかった。彼女は勢いをつけ、鋭い爪でバティカルの右腕を強く引っ掻いた。召喚獣との戦いと同じように、彼女の右腕から爪にかけて、大量の血が滴り落ちている。


「バティカル、どうやらあなたの負けのようね」


 横から口を挟むように、ナンシーが言った。勝負に負けたバティカルであったが、なぜか彼は高らかな声で笑っている。それは、リタが装備している爪についている自分の血液を見たからだった。彼女の腕が徐々に赤く染まっているというのに、この魔道師は平然と笑う。


「何が、そんなに可笑しい?」


 リタは、すぐさま疑問に思ったことを、バティカルに訪ねる。


「砂龍王女よ。お前の腕も、血に塗れてきたな」


 バティカルは、気味の悪い言い方をした。リタはそれを聞いた途端に、背筋が凍てつくほど、ぞっとした。雷系魔道師バティカルは、更に続けて言う。


「確か砂龍族は、《正義の魔族》と呼ばれているはず。だが、今の状況を見て、正義を貫いた行為と言えるか?」


「……」


 リタはこれ以上、言い返せなかった。バティカルの言っていることは、間違いとも言い切れない。父上が、いつも言っていた。


 ――無闇に魔族を殺してはいけない。それは、王族がする行いではないし、正義を重んじる砂龍族の心意気に反することだ。――と……。このままでは、私はいつか魔族を殺してしまう。リタは、動揺を隠せなかった。


 彼女が大量の冷や汗を流しているのを感じ、ペレデイスが声をかける。


「そんな奴の言うことなんか、信じちゃ駄目だ! リタは決して、悪い魔族じゃない!」


 ペレデイスは、リタを庇うように言い放つ。続いて、ヨゼフやナンシーも、口々にリタを励ます。


(ヨゼフ、ナンシー、ペレデイス……。良いの? こんな私が、君達の傍にいても)


 気弱になったが、リタは自分に言い聞かせ、すぐに立ち上がる。


「そうだね。悪人の言うことを、真に受ける必要はないんだ。ヨゼフやナンシーの家族を殺害した魔道領主の僕の言うことなんか、信じるものか!」


 リタは、強く拳を握る。先程まで眉を潜めていたが、今の彼女の目は、父王よりも希望に満ちた眼差しに変わっている。その眼差しに怯んだのか、バティカルは足早に神殿から去っていく。


 リタは再び腕と武器についた血液を拭き取り、武器をしまう。戦いが終わると、リタは地面に膝をつく。


「久々の激闘だったよ」


 リタは、呟くように言った。他の三人がリタの傍に駆け寄り、彼女を支えるように両腕を持ち上げる。


「大丈夫か、リタ」


 心配して、ヨゼフが訪ねる。


「ありがとう、大丈夫さ」


 そう言ってリタは強がってみたものの、くらくらしていて、ゆっくり歩かないと危ない状態だった。リタはヨゼフやナンシーに支えてもらいながら、雷龍神像の前で、ペレデイスと共に軽くお辞儀をした。すると、前と同じように、石像の真下にある水晶玉が光り、雷龍神ハンスらしき声が聞こえた。


『やあ、やっと来てくれたね、ペレデイス』


 雷龍神ハンスは、ペレデイスに語りかけるように言った。


(やっと来てくれた? 雷龍神は前々から、俺達がここに来るのを知ってたってことか?)


 ペレデイスは、雷龍神が言ったことに疑問を感じた。雷龍神ハンスは、そのまま彼の気持ちを悟らずに、話を続ける。


『ペレデイス、君の日常はいつも見守ってるよ。君が美術家の息子として、生を受けたこともね。もちろん君だけじゃなく、リタ姫達の日常も見守ってるよ。デュラック王子達と一緒にね』


 雷龍神は穏やかな口調で、自分が今まで見守ってきたことの内容を具体的に話す。四人とも、真剣に彼の話に耳を傾けている。


『君達は、頑張ってここまで来てくれた。俺もペレデイスに、未来とこの鎖鎌を託すよ。この魔界を、アルエスから救ってくれ』


 雷龍神は半ば偉そうに、でも、神らしい口調で、ペレデイスに武器を託す。雷龍神像の顎の部分から、鎖鎌が宙に浮くように、ペレデイスの手元に渡った。それは、稲妻をデザインしたように刃の部分がギザギザになっており、紫色の長い鎖が特徴的な武器だった。


(俺が、新たな雷龍戦士……)


 ペレデイスは、雷龍神ハンスから選ばれたことを、不思議に思っていた。


『ペレデイス、俺はこれからも君達を見守っていくよ。他の龍神達と一緒にね。それと、リタ姫……』


 名前を呼ばれ、リタは緊張していた。その緊張のせいか、彼女は先程の疲労感を忘れている。雷龍神ハンスは続ける。


『残る龍戦士は、後一人。メルディーンに住む《金龍族》という一族の戦士のみ。つまり、龍戦士が全員揃えば、闇龍と戦う準備が整うってわけだ。健闘を祈る』


 そう言うと雷龍神ハンスは、水晶玉からリタ達に話しかけるのをやめた。

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