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ガルドラ龍神伝―闇龍編―  作者: 水沢らくあ
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魔界の花園、その4―華龍女神セルランと幻の華―


華系魔道師ウィスパーとの戦いが始まって早々、ナンシーは斧を地面に叩きつける。


「バイル・グオリテス!」


 ナンシーが呪文の名を叫ぶと、地割れが起き、その隙間から灼熱の炎が吹き出した。ウィスパーは、火山のような光景を目の当たりにして怯んでいる。


「やるな、ナンシー。僕も負けてられない」


 似たような境遇を背負っている者同士が、競争するように、ウィスパーに攻撃を仕掛ける。


「ブルー・ボール!」


 ヨゼフが呪文の名を叫ぶと、槍先から泡のような物が出て、ウィスパーに命中した。ウィスパーの服は、びしょ濡れになった。


「よくも、あたしを嘗めてくれたわね……」


 ウィスパーの怒りは、頂点に達している。


(やれやれ……。あの二人は、すぐ調子に乗るんだから)


 リタは、呆れて物が言えなかった。


「クロス・ヒャッカンタフ!」


 リタは右手に装備している武器の爪から放たれる閃光が、ウィスパーが繰り出す魔法の花弁をかき消し、顔を傷つける。


「自惚れの強い魔族には、丁度それくらいがお似合いさ」


 陰に隠れていたニアロスは調子に乗って、ウィスパーをからかう。ウィスパーは怒る気もなくしたかのように、ニアロスには近づこうとはしない。だが、遠距離から花弁を散らし、ニアロスに攻撃を仕掛ける。


「ニアロス、危ない! 早く逃げろ!」


 ヨゼフが、必死に叫ぶ。だが、ニアロスは逃げようとしなかった。


 それどころか、彼は突然薄気味悪い微笑を浮かべる。


(なんだ、あの微笑は? 余裕ぶってるようにしか見えないけど)


 そう思いつつ三人は、ニアロスが次に何をするかを、予想してみた。ニアロスは両手を高く挙げ、魔力を集中させる。


「フラワー・アトール!」


 ニアロスの両手から、凄まじいエネルギーが放たれた。ウィスパーは降参すると言いたげに、神殿から去る。凄まじい威力の魔法を使ったせいか、ニアロスは疲れている。三人はぽかんとしていて、何も言えない。


(あれだけのエネルギーを……。あんな魔法を、どこで覚えたんだ?)


 三人は先程のニアロスの意外な活躍に、ただ凄いとしか言いようがなかった。


「僕は大丈夫さ。それよりも、早くサートアンヌの華を探そう」


 ニアロスはすっと立ち上がり、辺りをうろうろする。だが、どこにもサートアンヌらしき紅色の華は見当たらない。それでも、ニアロスは諦めなかった。その意志に応えるように、祭壇付近で緑色の光が見える。四人は気になり、光源である華龍女神セルランの祭壇に入る。実際に光っていたのは、巨大な龍神像だった。


 茨のように鋭い棘を持った鱗が、敵を威嚇しているように見える。ふとニアロスは、石像の下にある紅色の華を見つけた。


(これだ、これがサートアンヌに違いない)


 可愛らしい紅色の華を見て、ニアロスはそう判断する。彼はその華を、一輪摘み取った。


 その時、リタ達の目の前で、石像の目が緑色に光った。石像から女性らしき声が、ニアロスに語りかける。


『あなたは、ニアロスですね? 荒廃した花園を元に戻すために、その華を摘み取った。そうでしょう?』


「はい、セルラン女神。でも、僕達はこの神殿を荒らしてしまいました。それは、罪ではないのですか?」


 ニアロスは神殿に入る前とは違い、真面目な態度で女神に謝罪する。その考えを悟ってか、華龍女神はニアロスに意見する。


『それは、あの魔道師が来たから、そこの水龍族の少年と火龍族の少女がしたこと。それもわざとではなく、魔道師を追い払おうとしてしたこと。罪は一切ありません』


 華龍女神セルランは、ヨゼフとナンシーの行動は間違いではない、と弁護した。


『それに、あなたはこの神殿を守ろうと、先程魔法を使った。その勇気と信頼を讃え、私はあなたに、この剣を託します』


 華龍女神セルランは、魔力のような物で剣を操り、ニアロスに渡す。


 《セルラン・ブレード》。――


 それは、華龍戦士の証であり、また信頼の象徴でもある剣。ニアロスは魔界を守るために戦うと、華龍女神セルランに誓う。


『よろしく頼みますよ、ニアロス。そしてリタ王女、あなたが戦士達を導くようになる頃には、私達龍神の力をお貸ししましょう』


 リタに誓いを立てた華龍女神は、石像から語りかけるのをやめた。リタ達が祭壇から出ると、先程ウィスパーと戦った跡が、嘘のように消えている。


(きっと、セルラン女神が聖なる力を注いで下さったおかげだ)


 リタ達は、そう思った。――




 神殿を守った功績が華龍女神セルランに認められ、ニアロスは新たな華龍女神として目覚めた。聖域と町の境目で、カリア族長が待っていた。


「ただいま戻りました、カリア族長」


「あなたにしてはやけに真面目ね、ニアロス。まあ、良いわ。サートアンヌは、手に入ったの?」


 カリア族長の質問に対し、ニアロスはポケットから紅色の華を取り出して見せた。


「上出来よ。早速、花園に行きましょう」


 カリア族長の案内で、四人は族長の家の外れにある《マラの花園》と呼ばれる場所に向かう。到着すると早速、カリア族長はサートアンヌの華を土に埋める。すると、荒廃していた花園が一瞬にして、元の綺麗な花園に戻っていく。それは、華龍女神セルランの力が、その華に宿っているかのようだった。


「ありがとう、リタ。あなた達のおかげで、この町は救われたわ。また、いつでも遊びに来てね」


 カリア族長は茶色の鬣を風に靡かせ、リタ達に礼を言った。ニアロスとカリア族長に手を振ると、三人は南に向かって走って行った。

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