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ガルドラ龍神伝―闇龍編―  作者: 水沢らくあ
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風龍族の族長令嬢、その3―風龍族が崇める女神―

突如四人の所に現れ、そしてあっという間に神殿を去って行った風系魔道師フィール。おそらく彼の目的は、あくまでもリタ達に何かを話すためだったのだろう。その何かというのは、この魔界の真実かどうかもわからない物語の一部分。


 謎は、未だに解ける気配はない。だが、氷龍城の地下神殿でメアリーと会った時、彼女は確かに《黒い石》とキアの関係を話してくれた。もしその《黒い石》という物が、伝説にある《闇龍アルエス》と関係の深い物だとすれば、彼女とあの風系魔道師の話も、辻褄が合う。


 リタは深刻な表情で、先程の風系魔道師フィールの話を考えていた。その横から、ヨゼフとビオラが声をかける。


「また深刻な顔をして……。本当に、大丈夫なのか?」


「あたしも思う。まさか、さっきのフィールとかいう魔道師の話を、鵜呑みにしてるんじゃないでしょうね?」


 二人に心配をかけているということもあり、リタは首を振って誤魔化す。


 現状報告のために、四人は風龍女神ルニスの祭壇に行く。そこには、前と同じく神秘的な光を放つ水晶玉があった。祭壇にあたるこの部屋は、水晶玉や飾りだけでなく、ルニス女神の石像もある。その石像は、四人が地下室に来る前に見た物と同じ物だった。四人がしばらく水晶玉を見ていると、それが突如、水色に輝き始めた。そして、その光と共に、風龍女神ルニスのものらしき声が流れる。


『あなたは、風龍族のビオラですね? あなたのことはよく知っています。あなたが生まれてから、ずっとあなたのことを見守ってきたのですから』


 ルニス女神はまるで、水龍神アークレイのように言うな、とヨゼフは思った。


(『あたしをずっと見守ってきた』か……。もしそれが本当なら、あたしの生い立ちを全て知ってるのかしら?)


 ビオラは疑問を感じつつ、風龍女神に今自分が思っていることを訪ねる。すると、女神は頷いた。


『残念ながら、全てではありません。が、あなたとエアロビ族長の《本当の関係》なら、把握しています』


「あたしとママの、《本当の関係》? あたしとママは、血が繋がってるはずよ」


『いいえ。あなたと族長は、本当の母娘ではありません。簡単に言ってしまえば、あなたはあの族長の養女ですね』


 女神に事実を淡々と言われ、ビオラはショックを受けた。


(十五年間、あたしを育ててくれた族長……。でも、その魔族は、あたしのママじゃない? だったら、あたしの本当のママは誰なの? 教えて、ルニス女神!)


 いきなり生い立ちのことを言われたせいか、ビオラは動揺している。リタは完全にというわけではないが、ビオラの気持ちを理解できたような気がした。


(ビオラは今、衝撃的な事実を明かされて、悲しんでる。私も母親の顔を知らないから、その気持ちは痛い程わかる。だけど、いつまでも過去に溜まるのはいけない。未来に目を向けるんだ、ビオラ! 私達は、誰しも一人で生きていけはしないさ。いろんな魔族達に支えられて、ここまで生きてきたんだよ!)


(ルニス女神もなぜ、こんなことを淡々と言ったの? これじゃ、攻撃するのと何も変わらないじゃないか!)


 リタは、ビオラに対する想いと、風龍女神ルニスの無神経さに対する怒りとが、混ざってしまっている。彼女の手はぶるぶると震え、今にも怒りが爆発しそうな状態だった。それを察して、ヨゼフが制止する。


「リタ、気持ちはわかるけど、今ルニス女神が言ったことは、僕達には直接関係のないことだ。下手に関わらない方が良いよ」


(確かに。余計な詮索をしない方が、ビオラのためかもしれない)


 年下の魔族になんやかんや言われるのは癪に障るリタだが、ヨゼフが言っていることが正しいと思ったので、これ以上は言わないことにした。


『女神とはいえ、私としたことが、失礼なことを言ってしまいましたね。でもそれは、あなたがしっかりと未来に目を向けられるかを、試していたからこそです』


「……」


 ビオラの脳裏には、多くの謎が駆け巡っている。だが、ルニス女神の言うことをも一理ある、とビオラは痛感する。


『風龍族は《忠誠の魔族》。継母ですが、エアロビ族長はこれからも、あなたの家族であることに変わりありません。これからも、族長に忠誠を誓いながら生きていくのですよ』


(ルニス女神は、あたしに前を向いてほしいと言ってる。だから、できれば過去には溜まりたくない)


 ビオラは、その決意を女神に言う。


『ようやく、未来に目を向ける覚悟ができたのですね。よろしい。あなたはこれから、新たな風龍戦士として、この魔界を守っていくのです』


 そう言って、女神はビオラに武器を授ける。武器、といっても見た目は、ただのバトンだったが。


『残る龍戦士は三人ですね。あの領主の力は、ますます強くなっています。どうか、お気をつけて』


 そう言うと女神は、水晶玉から語りかけるのをやめた。リタは、先程の女神の言葉を、肝に銘じる。


「さて、ビオラが戦士として目覚めたことだし、エアロビ族長の所に戻ろう」


「そうだな」


 四人は、ルニス女神の石像の前で祈りを捧げ、ビオラの家に戻った。

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