岩龍女神の神殿、その2―岩系魔道師の大剣―
岩龍族の民にとっては慣れていても、他の種族の人々には気持ちの悪い足場にしか感じられない、ギルネスの地面。そのような場所が続く岩龍女神シトラルの神殿の中で、リタ達は様々な仕掛けを解きながら進む。お転婆で世間知らずのリアスにとっては、この神殿での冒険が大きな試練に感じられるかもしれない。リタは父親に似た眼差しで、リアスをそのように見ている。
凸凹とした道が続くなか、四人は幅広く広がった箇所と、遠回りに使えそうな道とに分かれている場所に出た。この分かれ道をどのように進もうか、四人は相談した。リタは、他の三人に、二人ずつに分かれて進もうと意見する。
「それは、どういうこと?」
ヨゼフは訪ねた。
「つまり、一人は私の背中に乗って穴を越え、残った二人は走って遠回りをする。この方法で、四人一緒に合流しようってことさ」
リタの案には、三人とも納得した。ドーナツのように丸く開いた穴を、リタとヨゼフは乗り越えた。一方でナンシーとリアスは、がむしゃらに走って遠回りをした。こうして三分後、四人は合流した。
この先は大きな岩が二つあり、まるでリタ達の行く手を阻んでいる者が、この神殿に潜んでいるように見える。
「どうしようか……。二つもばかでかい岩があったら、引き返すしか……」
リタは予想外の出来事にばかり出会したので、思わず弱音を吐く。そこへヨゼフが、ここは僕に任せろと言わんばかりに腕を回し、いかにも自信に満ちているかのよに振舞う。彼は強い力で岩を持ち上げると、先程リタと通った広く深い穴の方に向かって投げる。すると、岩はずしん、という音を立てて下に落ちていった。
「凄い……」
リアスは、先程のヨゼフの力仕事を見て、驚かされるばかりだった。ヨゼフの力によって、封鎖された道が開き、四人は更に神殿の奥を目指して走る。その先には、頑丈な鎖で封鎖された茶色の扉があった。
「こんな鎖、私の火の魔力をもってすれば、朝飯前よ」
ナンシーは余裕綽々な態度で、爪の先に魔力を集中させ、それを鎖に近づける。すると鎖は、使い物にならないくらいに焦げてしまった。ナンシーは、満面の笑みを浮かべている。
四人は、扉を開ける。その先には、またしても魔道族の一人が、リタ達を待ち構えていた。三人は武器を構え、魔道師を威嚇する。
「お前は、リバドブルム。なぜ、ここにいる? ここには、岩龍族やほんの一人握りの魔族しか、入れないはず」
リタは顰めっ面をして、尚もリバドブルムという魔道師を威嚇する。
「随分と大きな口を叩くようになったな。小癪な龍魔族など、キア様が処刑するまでもない。この俺が、お前達を冥界フェルシスに突き落とす!」
リバドブルムは吐き捨てるように言い、リタ達に襲いかかる。その様子を見て、リアスは岩の陰に隠れ、リタ達の勝利を見守っている。
(リアス、君はなぜ隠れる? 隠れても、何の得もない。魔法がある程度使えるなら、君も戦うんだ)
リタの体は戦闘に励んでいるものの、目線や思考は全て、リアスの方に向けられている。
「どうした、さっきの威勢の良さは? あの岩龍が一緒では、戦いにくいか?」
リバドブルムにずけずけと言われても、リタは気にせず右腕にはめた爪で引っ掻こうとする。だが、その一撃は、かつて彼女達が火系魔道師フィアロスと戦った時同様、いとも簡単に弾かれた。
(くっ! フィアロスといい、こいつといい、なんて力だ。これが、上級魔道師の力か)
そう思いながらリタは、必死に岩系魔道師の攻撃を受け止め、防御している。その一瞬の隙を突くように、リバドブルムはリタに襲いかかる。彼女はジャンプしてかわそうとしたが、リバドブルムの方から先に、彼女の体を踏みつける。それはまるで、リタがリバドブルムの動きに翻弄され、彼のペースに引き込まれているかのように見える。
「リタ!」
ヨゼフは、思わず姫の名を叫ぶ。彼はリタを助けようと、リバドブルムの方に走る。が、それをリタが止めた。
「来るな!」
「な、なんでだよ?」
「君を、巻き添えにしたくない」
リタは仲間のことを想うあまり、強がってしまった。
「ほう、やけに抵抗するな。だが、その抵抗も、ここまでのようだな」
岩系魔道師リバドブルムは、大剣の先を、リタの後頭部付近に突きつける。




