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ガルドラ龍神伝―闇龍編―  作者: 水沢らくあ
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ナンシーと火龍神、その3―人違いと攻防―

(私は――私は二人に感謝しなければならない。リタ姫――あなたは奴隷部屋にいた時だけでなく、一緒に冒険してる今でも、私に優しくしてくれてる)


(ヨゼフ――あなたは時々生意気なことを言っては、私を怒らせたよね。でもそれは、私が嫌いだからじゃない。むしろ、私を気遣ってるのだけど、不器用だから上手に言葉にできないでいるだけよね。音楽夫婦の一人娘として生まれた私にとって、あなたが弟のように思えるわ)


(そして今、この二人は私が魔道族にかけられた呪いを解こうとしてる。ありがとう。私はこれからも、あなた達と一緒に戦うわ。例え私に火龍戦士の資格がなくても、ヨゼフと一緒にリタを守る義務がある。彼女のお父様、砂龍王ランディー陛下との約束だから)


 ナンシーは神殿内を歩きながら、リタ達に対する感謝の仕方を考えていた。彼女達が吊り橋を半分まで渡った時、向こう側から神殿長らしき魔族が現れた。


「君達、そこで何をしている? ここにいたら、危ないだろう」


「私は砂龍族のリタ。この二人と一緒に、各地の神殿を巡って旅をしている者です」


 リタは神殿長に対し、叫ぶように返す。三人は彼の声がよく聞こえるように、吊り橋の左端まで来た。神殿長は、首を傾げてリタに訪ねる。


「砂龍族のリタ? すると君が、九年間もレザンドニウムに幽閉されていた、《砂龍族の王女》かい?」


「はい……そうですが……」


 リタは、戸惑いながら返す。神殿長は、少し考えてから、また口を開く。


「君は《トレーシー》という、火龍族の女の子を見かけなかったかい? 意地っ張りな子なんだが」


 神殿長が発する《トレーシー》という言葉に反応してか、ナンシーが二人の前に出る。


「私はナンシーです。しかも、《トレーシー》は、私の母の名前ですよ。同種族なんですから、いい加減に覚えて下さい」


「いや、悪いね。君の髪型が、幼い頃のトレーシーと似てたものだから……」


 二人の話を遮り、リタは神殿長に話しかけた。彼女の質問内容は、闇龍アルエスと魔道族の人々との関係についてである。神殿長は首を横に振り、口を開く。


「私が知ってるのは、火龍神バイル様とその他の龍神様のことと、彼らの生前についての説だけだ。が、もしかすると、火龍神様が何か知ってるかもしれないと思ってるところだよ」


 そう言いながら、彼は三人を火龍神の祭壇まで案内する。途中、フィブラス国の地下神殿のように暗い所もあった。が、ナンシーの懐中電灯の光や神殿長の魔法による炎の助けもあり、無事に進むことができた。だが、神殿長は自分が案内役を務めたにも関わらず、首を傾げる。


(おかしい。なぜこの神殿は、所々暗くなっているのだろう。私がほぼ一日中管理して、ゼネラ族長が中を調べて下さっているというのに。火龍神バイル様の祭壇を荒らす奴が、潜んでいるとでもいうのか)


 神殿長の脳裏は、神殿内の異状についての疑問でいっぱいになった。彼が、大きな牙のすぐ下にある顎を撫でていると、ヨゼフが話しかける。


「神殿長、早く神殿への扉の鍵を開けて下さい。僕達は今回、ナンシーにかけられた呪いを解きに来たのですから」


「すまないね。ちょっと、考え事をしてたものだから」


 そう言いながら神殿長は、鞄から鍵の束を取り出し、右端についている鍵を扉の鍵穴に通す。三人は扉を開け、祭壇にあたる部屋に入る。中は薄暗く、光っているのは赤色の水晶玉だけだった。早速三人は、水晶玉の近くまで足を運ぶ。


「ナンシー、その水晶玉に触れてごらん。きっと、火龍神様のご加護を受けられるはずだ」


 神殿長に言われた通り、ナンシーは赤色の水晶玉に触れてみる。


「暖かい。ねぇ、リタ、ヨゼフ。ちょっと、この水晶玉に触れてみてよ」


 ナンシーに催促され、二人は水晶玉に手を置く。その瞬間、彼女達の掌が暖かくなった。


(確かに、心地良い暖かさだ。まるで、本当に火龍神バイルの神聖な力のようだ)


 三人が不思議な力に触れていると、唐突に神殿長の頭上から、大きな笑い声が聞こえた。


「その声は、火系魔道師フィアロスだね。隠れるために祭壇周辺を暗くするなんて、図々しいにも程があるよ。お前達の企みは何だ?」


 リタの声に反応し、火系魔道師は水晶玉の近くに着地する。


「企み? 俺達はただ、キア様のお決めに従ってるだけさ」


「キアの決定? どういうことだ?」


「俺とメアリーは急遽手分けして、お前達三人をまた捕らえることにした。領国でお前達を処刑するためにな」


 フィアロスの発言を聴いた時、リタを始め、他の三人も目を丸くした。


「どうして、私達を処刑する? 闇の大蜘蛛を倒した奴隷は即釈放と言ったのは、魔道族の側だろう?」


 リタは、フィアロスの意表を突いた。が、彼は落ち着き、もう一度口を開く。


「確かに。だが、俺に反論されても困る。全てはキア様がお決めになられたこと。あのお方は、九年前からお前達を調べたがってた」


「じゃあ、私達を奴隷から外したのは?」


 途中から、ナンシーが口を挟む。火系魔道師フィアロスの話は続く。


「お前達を泳がせておけば、何か手がかりが掴める。そう感じたメアリーは、自分の誕生日に《闇の大蜘蛛バウト》を開き、お前達をわざと勝たせた。水龍神アークレイの神殿の神域で、ヨゼフが戦士として覚醒した時点で気づいた点がある。それは、リタ姫とヨゼフが、二柱の龍神達の生まれ変わりということだ」


「つまり、残り八柱の龍神達の来世を覚醒させるために私達が行動してると、キアの計画の邪魔になる。そうなると困るから、私達を処刑したいと……」


「そうさ。が、その前に俺がお前達を見つけた。悪いが、また領国に来てもらうぞ、砂龍王女よ」


 火系魔道師は脅迫めいた口調で、リタを促す。が、彼女は首を横に振る。魔道族の首領であるキアの命令なのか、フィアロスは愛用の大剣を軽く舌で舐めてから、構える。リタは顔をしかめつつも爪を装備し、他の二人に「一緒に戦おう」と合図する。彼女の合図に従い、ヨゼフやナンシーは、槍や斧を構える。


 今、三人の元奴隷と、彼女達を襲うキア一味の火系魔道師の戦いが始まった。

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