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ガルドラ龍神伝―闇龍編―  作者: 水沢らくあ
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リタ姫の旅立ち宣言、その2―部屋での調べ物―

(私が父上に手紙を送り、パーティの開催を勧めたのは、明日からヨゼフ達と共に旅に出ることを、国民達に知らせるためだ。そう、これは運命なのだ。将来この城を継いで女王になることも、《セイント・ウェポン》を砂龍神から授かり、戦士になったことも。これらは全て、運命が決めたことなのだ。今更、後戻りはできない)


 リタは兵士達の列の間を通りながら、ずっとそのようなことを考えていた。前方で向かい合わせに立っている二人の近衛兵が、リタの顔を包んでいるベールを外した。その裏には、キアの呪術による仮の顔ではなく、色白で美しく、ざらついているのがほとんど目立たない龍の顔があった。


 先程ランディー王が驚いていたのは、彼女にかけられていた呪いが解け、元の姿に戻っていたからに違いない。セルセインはリタの耳元で囁く。


『殿下、挨拶が終わりましたら、一緒に化粧室に参りましょう』


『い……いきなりどうした、セルセイン?』


『お気づきになりませんか? 足元をご覧下さい』


『はぁ? 足元?』


 セルセインに促され、リタは足元を見た。青色のドレスの下から龍の足の爪が覗いていることに気がついたリタは、首を縦に振り、セルセインに答える。


 彼女はそのまま大きな扉を開け、国民達の前に出た。そして、マイクを握った。その時に見えた龍の手に、またしても彼女は驚かされた。


(こ、これはどうしたことか。手足が元に戻ってる。もしかして、亡き母上や砂龍神デュラックが助けてくれたおかげなのか?)


 リタは呆然としていて、声も出なかった。が、同族の大人達が「リタ殿下、しっかりして下さい!」と、一斉に叫びだした時、彼女は我に返る。彼女は一礼をして、自ら決意したことを述べる。


「この度、私が水龍族と火龍族を連れてこの砂漠に戻ったのは、皆様方に申し上げたいことがあるからです。私達三人は九年間、レザンドニウム領国の領主キアの奴隷として働かされていました。彼は今、とても恐ろしい呪術を身につけていて、正直言いますと、私も怖いです。が、いつまでも怯えていては何も始まりません。今こそ、魔道族と戦わなければならない時なのです。明日、私は客人の水龍族や火龍族と共に、キア達と戦うための修行の旅に出ます。以上」


 リタが抱負を述べた後、周囲から割れるような拍手が送られた。


「リタ姫様、最高!」


「リタ殿下、かっこいい!」


「ランディー陛下、万歳!」


「リタ殿下、万歳!」


「フィブラス王国、万歳!」


 周囲の大人達が口々に叫ぶ。ヨゼフやナンシーも、負けないくらいの声で叫んだ。


(ヨゼフ、ナンシー……。それに、一族のみんな。ありがとう。本当に、ありがとう)


 リタは一族の民や他龍族民からの声援を受け、涙を流した。


(リタ……。九年間の奴隷生活を経て、逞しく成長したな。これも、ヨゼフ達のおかげだろう。天界のレイア王妃も、お前のことを頼もしげに見守ってくれることだろう)


 城の天井の方を見ながらランディー王は、娘を見守ってほしいと、亡き后に祈る。




 リタによる旅立ち宣言が終わり、食事の時間が来た。ヨゼフやナンシーは、奴隷部屋にいた時よりもたくさん食べられると思ったのか、大好物の海藻や肉を、ここぞとばかりに食べる。


「久しぶりに、故郷の産物である海藻を食べることができて、幸せだよ」


「この肉、私の故郷、スクルド町産ね。懐かしいわ」


 二人が食べ物を頬張っている間、リタはセルセインに連れられて、女性兵士専用の化粧室の鏡を見ていた。その鏡に映っているのは、父親似のダークブルーの鬣とまっすぐに伸びた黄色い角、五歳の頃よりも細長い顔、そして四枚の翼と青いリボンを巻いた尾が揃った姿だった。


「凄い。本当に、元通りの砂龍の姿だ」


「おそらく、殿下がデュラックから授かったセイント・ウェポンに込められている、聖なる力の効用ではないでしょうか?」


(そうか! 地下神殿であの爪を手にした時、癒されるようなオーラが漂ってたのも、そのためだったのか!)


 リタは近衛兵が立てた仮説を間に受けると、化粧室を出て、自分の部屋に戻る。自分が幼い頃に部屋で読んだ、《龍神とセイント・ウェポン》という題名の本を探すためだ。彼女は部屋に入ると、早速その本を探し始める。本棚には辞書や古い地図帳、この魔界の歴史等について解説した本など、様々な種類の本が四段に分かれて入っている。


「殿下、何をしているのですか?」


「確かこの本棚に、セイント・ウェポンについて解説した本があるはずだ」


 リタはひたすら古文書を探した。その中から、赤色の表紙で厚みのある本を見つけた。ただそれは、大量の埃をかぶっているうえに、ページの所々に染みができている。おそらくその染みは、前の襲撃の時に起こった火災が原因でできたものだろう。が、見方次第では、コーヒーが零れているかのようにも見える。年数が経っているので、無理もないだろう。


 それでも、リタは諦めなかった。彼女はまず埃を払い落とし、題名を確認する。表紙には、《龍神とセイント・ウェポン》と書かれている。


「これだ! 早速、調べてみよう」


 リタは古文書を置き、幾つかページをめくった。事実、五十ページから先は、まだ誰も読んでいない、いわば未知の情報だった。


《神々の聖なる力を秘めた武器、これを〝セイント・ウェポン〟と言うなり。これらの武器を得し者達、つまり神々に選ばれし龍戦士達は、如何な願いも必ず叶うと言われている》


 古文書に記されている事柄は、幾分横道にそれている、とリタは思った。が、確かにその通りかもしれないとも思った。というのも、仮に砂龍神が願い事を叶える力を持っていなかったとすれば、自分自身の姿が元に戻ることは、まずなかっただろう、と考えてのことである。


 答えが見つかり、ほっとしたリタは、古文書を本棚に戻し、セルセインと一緒に城外に出た。

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