007
「なぁ、作者よ」
「なにかな」
「なぜ第7話にしていきなり投獄された」
「大人の事情だ」
「「年下に言われたくねぇっ!」」
「ゴメンネ」
そんなわけで始まります。
「……ふざけるなよ……」(ビビリ)
と、半ば諦め口調で呟いた。
そもそもおかしいにも程がある。何でこんな世界に来てたった1日で牢獄投下なんて信じられん。
アニメディレクターがいたら、堪忍袋は間違いなく決壊しているだろう。
生まれたてのバンビの如くビクビクしている状況で、何かしないと精神崩壊起こしそうなのを本能的に感じ取ったため、殺されない程度のことをしよう、と決めた。
今現在俺が居るのは文字通り監獄のような場所である。(つーか独房?)まさにマンガのような場所である。
ガラスのような透き通ったドアの向こうには、妙な武器を持った看守(しかも超完全武装)が二人も居る。
……そんなにやばいことしたのか?俺。
「おい、貴様、何をしている」
あ、やっべ、さすがにブツブツ言い過ぎたか?
「い、いや?なんでもないんじゃないかな?」
「……………」
…その沈黙の黙殺作戦やめて、泣き出しそうになってくる。
しかし、これ以上変なことを言おうものなら本当に首が羽ばたいてしまう事になる。
まぁ、挙げれば色々と出てくる不便分子だが、最大の物といえば…
「は、腹減った…」
結局、朝起きてから朝飯も食えず、そのまま監獄投下である。果たしてこの過密スケジュールのどこに食事を取るような暇があっただろうか?
「食事はあと30分後だ、黙って待て」
あ、そーなの?いやーよかったよかった、1時間とか言われてたらまず抹殺覚悟でわめきたてただろうからなぁ。
よし、そうと決まれば、後は寝るか。
え?脱獄?いやぁ知りませんなはっはっは。
~終身タイム~(字がおかしい?知りませんなはっはっは)
side アル…ミナ
捕まる事は分かっていたが、どうやら場の状況はかなり悪いようだ。
少し肌寒い空気が、ここが最下層である事を教えてくれる。脱獄の可能性もかなり薄い、魔鏡壁に、魔術障壁の2重構造になっている。物理的に脱出するためには、賢者クラスの魔法を数発叩き込まなければ壊せないだろう。
先ほど半ば自棄になって、障壁を殴りつけたが、それと同じ力で吹き飛ばされた。どうやら、ギルティ・リバーストがかけられているらしい。
そして、その目の前には――――
「よう、ようやくおとなしくなったか?」
私を連行した本人、コードネーム黒が薄い笑みを浮かべ、立っている。
「いいや、まだね、そんなに黙らせたかったら首かっとばしてみなさい」
「またそんなしとやかさの欠片もない発言をする、そんなんだから男の一人も捕まんないんだよ」
……無論皮肉とは分かる、が、腹は立つ。
「あーあ、かわいそうに、こんな女じゃあ、まず一生独り身だろうなぁ~
あ―――かーわいそっ!」
二度言いやがった!
……まずい、殺意が抑えられない、この忌々しい障壁さえなければ、2秒で抹殺してやるのに…
そして、この辺を潮時と見たのか(実際賢明な判断だ)立ち上がった。
「さて、そろそろ勤務交代の時間だな、チャオ~♪」
そのまま、ふらふらといかにもチャラい歩き方で去っていった。
「ええ、もう二度と来なくて良いわよ?」(殺)
この言葉に隠された意味を悟ったのか、黒は汗を垂らしながら早足に駆けていった。
「……ふぅ……」
一つため息をついてから、黒に言われた自分の容姿について考え、腰まで伸ばした赤髪に触れてみる。
…確かに、特別な手入れをしているわけではないが、人並み程度の自信はあった。
それから、ブツブツと呟きながら髪をいじくり、黒の言った事を鵜呑みにしている事には気づかなかった。
――side レン――
遅い、結局あれから約45分ほどが経ったが、一向に食事が来る気配が無い。
発狂するのは何とか防げているが、それも時間の問題だろう。
「あのー看守さん?一体飯はいつになれば食えるのか教えてくれる?」
「…貴様に答える権限は無い、そして貴様は質問権も無い。」
ブチッ!と切れました、ハイ、もーきれいに。
「ンだとコラ!テメー何様のつもりじゃおんどりゃあ!」
もう言ってしまいました、終わりですね、俺。
「いいだろう、そこまでお望みとあらば、
楽にしてやる。」
ガラスのような扉が開かれ、看守の一人が中に入ってくる。
斧が大きく振り上げられ、振り下ろされる。
自分が死ぬ原因を見据えて逝こうか、眼をつぶって楽に逝こうか。
まぁ、生来めんどくさいのは嫌いなので、後者を選び、眼を閉じ静かに終わりが訪れるのを待った。
が。
直後、激しくぶつけ合うような金属音に反射的に眼を開けた、そこには、一般人が見たら、恐らく信じないであろう光景が広がっていた。
「うそぉ……」
なんと、先ほど俺達をここに連行した人物、黒が看守が全体重をかけた斧の一撃を、片手で支えたおよそ身の丈程もあろうかという大鎌で、軽く(少なくともそう見える)防いでいたのだ。
「く、黒さん!?」
なんと、《さん》付けとは、それなりの地位にいることが見て取れる。
驚愕に動けない俺をさておき、会話はさらに続いていった。
「そろそろ止めにしとけ、勤務時間交代だ。」
「は、………しかし、我々はどこへ?」
疑問を述べる看守だったが、黒が笑みを浮かべた時点で、それはフラグだと気づいた。
「そうだな……いい夢見ろよ」
そう言った瞬間、看守が二人、同時に崩れ落ちた。
痛い痛い、と呟き、右手を振るしぐさを見ると、どうやらあの一瞬で、重装甲の看守二人を、眼にもとまらぬスピードで殴り倒したようだ。
そして、黒はこちらを見ると、首をかしげた。
「ありゃ?驚かないの?それともよく分からんかった?」
「いや、もう驚くのもメンドくせぇ」
そう反論すると、「あー、そう…」と呆れるような、哀れむような視線をぶつけてきた。
「まぁ、色々あった、ということだな。少年」
その物言いに、俺は少なからず苛立ちを覚えた。
「少年って、お前も似たような歳だろ」
「じゃーお前何歳?」
どうでもいい、とでも言わんばかりの態度に、さらに腹がたった。
「17だ」
「勝った」
「じゃあお前こそ何歳だ」
「176歳」
「………………は?………………………」
「ああ、事後承諾で悪いが、二度言う気は無いからな」
「あ、そ。別にいいけど」
凹んだように顔を手で覆い、呟いた。
「……その完全無関心な対応やめてくれる?ホント悲しーっつーか虚しい。」
「俺は悲しくも、ましてや虚しくもない。」
遂にうずくまり嘘丸出しの嗚咽を上げながらさらに呟いた。
「でもさ、でもさぁ、何でこんな長寿か聞きたくない?」
「聞きたくない」
完・全・敗・北!
なぜか吐血して、床に力なくぐてっと倒れる黒を見ると、いい加減かわいそうに見えてきたので、そろそろ聞いてやる事にする。
「……まぁ、歳の事は少し気になるケド………」
ぼそりと、独り言のように呟く、すると、もう耳がピクッ、と動き出すような勢いで反応し、バネ仕掛けのように跳ね上がり、どアップで顔を寄せてきた。
「だよな!」
「うんうん(あーウゼェ)」
「いいだろう、そこまで言われちゃしょうがない、教えてやろうフッフッフ」
(シバキ倒してぇ~殴りてぇ~)
薄暗い監獄に、ポジティブと殺意が交錯した。