第七章
すれ違う二人(物理的な意味で)
第7章
「ここがアリスの家だぜ」
「随分奥の方に居を構えてるんですね」
「そうか?私はもっと奥だが?」
「まぁ、貴女ですし」
「振り落とそうか?」
「止めてください。死んじゃいます。幻想郷縁起が途切れちゃうじゃないですか」
そんな風に阿求と軽口をたたきながらアリスの家の前にたつ。
なんだかんだで最近はアリスの方から来てもらってばかりだったから、なんだか久しぶりな気がするな。
玄関は…あいてないな。よし。
「開いてないんじゃ、仕方ないですね。また今度―」
「仕方ないからこうするぜ」
「ちょ…!魔理s」
「うりゃあ!」
ガシャン
「よし、入るぞ」
「な、何やってるんですか!…私、何言われても知りませんから」
“粉々に割れた窓”を踏みつけながら室内に入る。
しかし、ホントに見当たらないな…。
「こんなことまでしなくても、いいじゃないですか…」
「研究室かもしれないな、行ってみようぜ」
「帰りましょうよ」
「お、開いてる開いてる」
足取り軽やかに進み、部屋の中央まで進むと…
「魔理沙さん!足元!」
「ん?」
私の下にはやたらと複雑で豪勢な巨大な魔法陣があり、私が放つ魔力に反応して光り輝いているようだった。
そして光は強さを帯びて……視界を真っ白に染め上げた――。
私は暗い空間に漂っていた。
それはまるで光と言う概念が欠如したような、完全な暗闇。
しかし、魔力の流れだけは感じる事が出来る。
その流れを辿ると魔導言語のようだが、なにせ現れてから消えるまでが早すぎる上に高速で移動しているのだから読めない。
この空間はどこまで続くのだろうか。
マジックミサイルを撃とうとしたけど…腕がどこにあるか解らなかった。
それどころかだんだんと自身が曖昧にしか認識できなくなる。
自分が分解されていくようで、怖い。
しかし、分解された「私」はもとの形を取り戻しつつあるように思えた。
いや、「私」は確かに霧雨魔理沙の形をしていた。
そこまで来て、正常な思考がよみがえる。
そして、かつて読んだ魔導書の一節が頭に浮かんだ。
「魂の解析」
「解析された魂は、術式が完全であれば精神の糸を辿り、自らに還る事が出来る」
どこだ。
その糸とやらはどこだ。
いくら探してもあるのは暗闇で。
ただ一つ浮かぶ魔法陣と繋がっている、
事切れたように座り込む人形だけが、
まるで「私」を取り込もうとしているかのような眼で見ていた。
そして「私」は消え入るような暗闇に耐え切れず、
その人形にずがってしまった
そして散り散りになって飛んでいくような感覚に包まれていった。
はい、いきなりシリアスです。
まぁ、前々から言ってはいたのでそんなにいきなりではないかもしれませんが。