第六章
変化を始める日常。
きっかけは些細なことから。
第6章
「人形劇が…?」
「うん。最近ぜんぜんやってないの」
「へぇ、なにかあったの?」
「知らないよぉ、というかその辺は阿求ちゃんのほうが詳しいんじゃないの?」
「あいにく情報はないんだよね」
「そっかー」
私、稗田阿求は里に来ていた。
そして花屋の前を通りがかった時に、看板娘の彼女に人形劇が行われていない事を聞かされました、が。きっと次の一言は……。
「阿求ちゃん!なんとかして!阿求ちゃんしか頼れないの!」
やっぱり。まぁ、それで断らない私も大概だとは思いますが。
いくら非力な私でも誰かの役に立てるのは嬉しいから。あ、一応言っておくと里の人間限定で。妖怪は一部を除いてロクな話持ってこないし。
とはいえ、どうしたものでしょう。たしかあの人形師は魔法の森に居を構えていた筈です、が。私一人であそこまで行くのは至難の業……いや、無理です。無理です。大事なことなので二回言いました。魔法使いと言う種族は社交的なものは少ないので、おそらく友好関係もさほど広いとは思えません。…そう言えば彼女は最近「文々。新聞」で霧雨魔理沙との熱愛報道がありましたね。彼女ならコンタクトを取っているでしょう。私が向える範囲で霧雨魔理沙が現れそうな所へ行ってみましょうか。
家を勘当されているのでこの辺にはいないでしょう。となると博霊神社と香霖堂くらいしか心当たりがありませんが、とりあえず行きましょう。博霊神社は遠いですし。第一スキマの妖怪に出くわすかもしれないので、香霖堂ですかね。
かくして香霖堂にやってきましたが、太陽は頂点を少し過ぎた頃です。あまりゆっくりしていると夕ご飯に間に合いませんのでさっさと用事をすませましょう。
香霖堂の扉をあけると店主はおらず、まるでその代わりとでも言うかのように黒い三角帽が置かれていました。これは魔理沙の物ですが、肝心の当人はどこでしょうか。商品でも見ながら時間を潰そうかと思って棚に目を向ました。するとそこにある鏡に窓に貼りついて店内を覗き込む魔理沙の姿が有りました。
「なにやってたんですか」
「いやなに、稗田の当主がなにかやらかさないかと見張ってたんだぜ」
「性根がひん曲がってますね」
「腹黒よりかはマシだと思うが?」
そうでした。こんなことを話しに来たんじゃないんでした。
「そうそう、魔理沙さん。本題なんですが」
「私にか?」
「はい。最近アリスさんが人形劇をやってないみたいなんですが、なにか知りませんか?」
「あいつにだって研究に没頭する時期ぐらいあるだろう」
「まぁ、そうでしょうが。様子を見に行ってくれませんか?」
「なんで私なんだ」
「ほかに友好関係が思い当たらなかったもので」
「酷い言い草だな」
事実ですし。
「ま、いくだけ行ってみるか」
こうして私と魔理沙さんによるアリス家訪問が決定したのでした。
阿求の登場です。
と言うか今までの作品で阿求のものだけ伸びがいいんですが、阿求ってそんなに人気だったんだろうか…。