第三章
魔理沙の気持ち。
二人の気持ちが重なる時。
第3章
思えばこの気持ちはいつからだったんだろう
最近の私は事ある事にあの人形師が頭をよぎり、思いはせていた。そのせいかここの所彼女の家に詰めていたのも確かだ。
それにいかに研究が魔法使いの本分だといっても三日不眠不休、食事も取らずに研究に…しかも私の魔法に関係のないことに没頭するなど、以前の…いや今の私でも考えられない。このまえ…確か昨日あたりにあの鴉天狗に心配されてしまったのも、無理はないだろう。アリスが帰った後に鏡をみたら酷い有様だったし。第一私はまだ人間なんだからそんな事は絶対に無理だろう。もしかしたら二日研究してもう一日は丸ごと寝ていたのかもしれない。
こんなにも心乱されているのはアリスが私の心に居座っているからであり、それを不快に思っていない自分がいるのも確かだ。
これは恋なんだろうか
私の魔法は星の魔法だけどスペルカードにはしっかりと恋を刻んでいる。もしこれが恋ならば、私は言葉の真意さえ知らずにいた痴れ者ではないか。これじゃああの小悪魔に笑われるな。
私がこんな風に彼女に夢中になったのはいつからかと考えたら全く持って見当がつかない。最初からこんな感じだった気もするし、認識が変わるようななにかが有った訳でもない。もしかしたら一目惚れだったかもしれないし、ゆっくりと恋に落ちたから気がつかなかったのかもしれない。いまではどっちでもいいような気もする。だって私のなかは彼女で満たされていて、それで私は満足なのだから。
そんな事を考えていたものだから、彼女がうちに現れた時は心臓が飛び出すかと思った。なにせ研究に没頭し、気がついたら目の前にアリスが居たのだから。なんとか一人になろうとして客人の予定など無いのにハッタリをかまし、窮地に迫った時に外に見えたあいつの名前を出した。だからある意味あの鴉天狗が来たのは僥倖ともいえる。
でもあんなことを、しかも本人の前で言われてしまってはたまったもんじゃない。しかもあいつの事だ、絶対に記事にして、配って回るだろう。今まではガセネタだったから否定して回れたが、今回はそうもいかないし。それにアリスの反応も少し気になるものが有るから、放置するのも一つの手かもしれない。その先は一方通行になるけど。まぁ、その辺は新聞の内容次第だろう。
かくして件の新聞は取材が終わってから15分程で届いた。
内容は…。誇張がすぎるだろう。第一アリスに妊娠説とか私もアリスも女なんだからもし子供がいたら第三者の登場になってしまうだろうに。しかも式の予定まで書いてあるよ、来月とか早すぎるだろ…。
これは放置するわけにもいかない。どうしたものか。新聞のことは知らないふりでもしとこうか。とりあえず新聞を玄関に戻し、高級品の紅茶―アリスの家から借りてきたものだ。―を入れる。
そしてテーブルに着き、一息いれてから香霖の日記を読む。にしてもこのあたりは「何もなし」ばっかりでつまらな…
「魔理沙!どういうことなの!?」
だれか来たみたいだな、と言うかアリスだろう。
「どうした、アリス」
「どうした、じゃなくて。新聞読んだでしょ」
「新聞なら玄関だぜ」
嘘はついていない。
するとアリスは自宅から持ってきたであろう新聞を突き出してきた。読め、ということだろう。既に読んだ内容だが、さっと目を通す。ここは冷静に行こう。
「で?」
「それだけ?」
「うん」
「私が妊娠したことになってる事とか、魔理沙の気持ちとかに反応はないわけ?」
「アリスは妊娠しそうにないし、どうせ相手もいないんだろ?それに全部が間違いじゃない」
しまった。冷静に行こうとしすぎて口が滑った。ま、まぁ。明言した訳じゃない。ばれないことをいのり……。
「魔理沙…」
無理でした。
アリスが「まさか…」みたいな目で見てますよ。完全にばれました。
隠す事もないんだけどさ、いつかは伝えようと思ってた事だし。でも、いざ伝わると恥ずかしいな。
だんだん顔が熱くなってきた。
「魔理沙…」
「ん?」
「私、魔理沙のこと、好きだよ」
私はその言葉をなんとなく予測していた。自分でもびっくりする程度には冷静だと思う。顔は赤いけど、取り乱していない点では。だから今なら言える気がした。
「私も、だぜ」
それでも、実際に言ってみるとこれ以上なく恥ずかしかったけど。
はい、甘いですかね。
実際この「いつまでも」は既に完成してたりします。
ですが、「一気に読むと甘すぎる」とのことですので区切っていきます。