【夢か現実か】
【夢か現実か】
これは夢なんだと頭の中で思っていても
感じたことのない恐怖から
サツキは走ってその車に駆け寄った
窓越しにその男性を覗き見る
明るい色の髪
細身で筋肉質な腕が
ハンドルにもたれかかっている
「あの、すみません」
窓をコンコンとノックする
その男性は気付く様子も無く
そのまま動かないでいる
サツキは色んな感情の混ざった緊張で、そっとドアに手をかける
恐る恐る
男性の肩に手を置いて
少しだけ、揺さぶってみた
「大丈夫ですか…?あの…」
『ん…』
「あっ!!」
小さな声が聞こえて
男性の体が動いたことに
サツキはホッとした
少なからず
この男性が死んでいるかもしれないという考えもあったからだ
何より
この誰もいない状況で自分以外の人間を見つけられたことに安心した
「あの!!ここ、何か変なんです!!誰もいないんです!!」
『…?』
「さっきまで人がたくさんいたのに…車にも誰も乗ってなくて、それで…!!」
男性は頭を痛そうに支えながらサツキのほうを見た
この頭の痛みは何だろう
この子は誰だろう
誰もいない?何を言って…
その言葉がどういう意味か
彼はすぐに自分の目と耳で知った
『…何だ、これ………』
人が、いない
聞こえるのは
機械が流す音だけ
自分の横には
泣いている少女がいる
彼もまた思う
これは夢なのか、と