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第2話「ルールは絶対。つまらなければ地獄行き」

「で、でも待ってください! あなた、自分で言ったじゃないですか! 『面白い展開なら叶える』って!」

 俺は必死に元女神から逃げながら叫んだ。

「それはお前が傍観者として楽しむ前提だろうが!私を巻き込むな!!」

「いや、だって一番面白いじゃないですか! 『飽きた』って言ってた女神が、自分で異世界転生体験するなんて!」

「誰が体験したいって言ったああああ!!」

 元女神――名前、そういえば聞いてない――は、草原を俺を追いかけ回している。

 神力は失ったらしいが、身体能力はやたら高い。というか、俺より速い。

「ま、待った! とりあえず落ち着きましょう!」

「落ち着けるかああああ!」

「ノート! ノートで確認しましょう! ルールを!」

 その言葉に、元女神の動きが止まっ―た。

「……ノート」

「そう、ノート。これ、まだ機能してるはずですよね?」

 俺は手に持っていた黒いノートを掲げる。

 元女神は忌々しげに、しかし真剣な目でそれを見た。

「……見せろ」

 彼女がノートを手に取る。パラパラとページをめくると――

「あ」

 最初のページに、光る文字が浮かび上がっていた。


【ノートのルール】

1. このノートに書かれた展開が『面白い』と判定された場合、それは現実になる

2. 『面白い』の判定は、元女神の感性による

3. 書き手(桐ヶ谷蒼太)が展開を書かない、または『つまらない』展開を書いた場合、自動的に『不幸ルート』が発動する

4. 死に戻り、ループ、チート能力による無双など、既存作品で使い古されたテンプレ展開は『つまらない』と自動判定される

5. 元女神も、このノートの効果対象である

6. ノートの所有者は桐ヶ谷蒼太。彼が死亡した場合、元女神もろとも地獄行きが確定する

7. 地獄ルートは交渉済み。魔王ルートも交渉済み。石ころ転生ルートも可能。

※楽しい異世界ライフを! by 神界管理局

「…………」

「…………」

 沈黙。


 そして。

「ふざけんなああああああああ!!」

 元女神の叫びが、草原に響き渡った。

「なんでよ! なんで私まで対象なのよ! 私、神だったのよ!? 神界管理局の上層部に文句言ってやる!!」

「あの、ルール6が一番ヤバくないですか? 俺が死んだら、あなたも地獄行きって……」

「そっちもヤバいわ!!」

 元女神は頭を抱えた。

「つまり……つまりよ。あんたが『面白い話』を書き続けないと、私たち二人とも不幸になるってこと?」

「そういうことですね……」

「で、テンプレ展開は全部ダメ。死に戻りも、チートスキルも、ハーレム展開も――」

「全部、『つまらない』判定になると」

「詰んでるじゃない!!」

 元女神は地面にへたり込んだ。

「あんた、ラノベ作家なんでしょ!? しかもテンプレ異世界転生書いてたんでしょ!? それが使えないって、あんた何ができるのよ!!」

「う……それを言われると……」

 確かに。俺の作品、テンプレだった。

 『異世界で俺だけスキルマシマシ』なんて、タイトルからしてテンプレだ。

「と、とりあえず! まずは現状確認しましょう! 俺のステータスとか!」

「はあ? ステータス?」

「異世界転生したら、ステータス画面が見れるじゃないですか! 『ステータスオープン!』って叫べば――」

「そういうのがテンプレって言ってんのよ!!」

 元女神のツッコミ。

 でも、試すだけ試してみる。

「ステータス、オープン!」

 ……何も起きない。

「スキル確認!」

 ……何も起きない。

「ウィンドウ、表示!」

 ……何も――

「だから無理だって言ってんでしょうが!!」

 元女神が俺の頭をはたいた。

「テンプレ機能は全部使えないの! わかる!? あんたは本当に普通の人間として異世界に来たの! チートなし! 特殊能力なし! あるのはそのノートだけ!」

「じゃ、じゃあ俺、何もできないじゃないですか!」

「だから困ってんのよ!!」

 元女神は俺の襟首を掴んだ。その目は、本気で怖い。

「いい? あんたがここで『面白い能力』を思いつかないと、私たちは今すぐ地獄行きなの。わかる? 今すぐよ。魔物に襲われて死ぬ、とかじゃないの。『展開がつまらない』って判定された瞬間、地面が割れて地獄に直行なの」

「そ、そんな……」

「ノートに書きなさい。今すぐ」

 元女神がノートを俺に突きつける。

「あんたの能力。面白くて、テンプレじゃなくて、でも生き延びられる能力。書け。私の命もかかってんのよ」

 プレッシャーがやばい。

 頭が真っ白になる。

 能力、能力、能力――

 チートはダメ。テンプレはダメ。でも、面白くないとダメ。

 どうすればいい。どうすれば――

 その時。

 遠くで、何かが吠えた。

「……なに、今の」

「…………獣、かしら」

 元女神の顔が青ざめる。

「まさか、もう魔物!?」

「ちょ、ちょっと待って! まだ能力決めてないのに!」

「だから早く書けって言ってんでしょうが!!」

 草むらがガサガサと揺れる。

 何かが、近づいてくる。

 大きい。速い。

 そして――

「あ」

 俺たちの前に現れたのは――

巨大な狼だった。

 いや、狼というより、魔獣。

 体長三メートルはある。赤い目。鋭い牙。殺意に満ちた唸り声。

「う、うそでしょ……」

 元女神が震える。

「私、神力ないのよ……? 戦えないのよ……?」

「お、俺も何もできないんですけど!!」

「だからノートに書けって言ってるでしょうが!!」

「今から書いたって間に合わない!」

「じゃあ死ぬしかないじゃない!!」

 魔獣が、跳んだ。

 鋭い爪が、俺たちに迫る。

「うわああああああああ!!」

 俺は無我夢中でノートに書きなぐった。

 何でもいい。何でもいいから――

【俺の能力:】

 ペンが走る。頭に浮かんだ、最初の言葉を--

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