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人はそれを無難と思う




 黒板と机にさえ向き合っていれば、そっと耳を閉じていたって、きっと誰も気に留めやしない。


 不真面目と真面目の境目で、僕はまるで真剣であることを装うように、思考に浸る。




 ただ淡々と、正面の教卓の上に教材を散乱させ、絶え間なく教鞭をとる一人の大人。


 その講釈の声に、いったいどれほどの者が耳を澄ましているか。


 ただ手慰みにペンを動かし、情報の価値を忘れてしまった者達の淡々とした作業音だけが、いやに耳につく。


 ただ、形だけの板書を取ることに、ほとんどの者が意味を見出すこともできず。


 それはただ、己の体面を気にしただけの、ただの暇つぶしと化していると。


 そうして今この時を無下に過ごす者たちが、どれほど多くいるか。


 こんな生産性のない時間に、一体どれほどの意味があるか。




 しかし、そんな一個人の見解を実際に口に出すことはなく。


 結局は、人の顔色を窺って空気をよむだけに留まる。


 そんな者は、きっと自分だけではないだろう。


 ただ、皆一様に似たような表情をしていても、僕にはわかる。


 この時間はいつだってそうだ。


 皆が皆、思い思いの空想の世界に囚われている。


 それこそ、僕達のような人間が無碍な時間を潰す方法など、いつだってこんなくだらない妄想をするぐらいしかないのだから。




 なんてことはない。


 それは、たとえ好きな女子との情事を想像していたとしても。


 たとえ、どこまでも自分を美化したボーイミーツガールを想像していたとしても。


 たとえ、この学園の危機に自分だけが立ち向かうような、そんなファンタジーを想像していたとしても。


 すべからく、表に出さなければそれはただの自己満足にとどまる。


 それでも、こんな下らない妄想に耽っているときの自分は、きっと人並みに不真面目だろう。


 しかし、そんな不真面目こそをたまの息抜きといえる人生は、きっと人並みに幸せなものだ。




 だから僕は、無難を好む。


 それを愚かだという少数の者達は、きっと多数の者達に愚かだと嗤われることだろう。


 だからこそ、無難な選択は好まれる。


 当然だ。


 多数の人間は、集団に嫌われないために無難を好んでいるのだから。


 無難を好まなくなった途端、自分は一瞬で仲間外れになるのだと、その恐れこそが多数にとって無難は正解であると錯覚させる。


 しかし、無難はあくまでも好まれるべき選択、というだけであって、必ずしも正しくある選択とは言えない。


 無難とは、あくまでも常に多数にあるものでしかない。


 少数に正解があったときは、無難もまた否応なしに間違いとなるのだ。


 この世の中、いつだって多数だけが正しいとは限らない。


 それは差別や格差という例を出せば、歴史がいくらだって証明しているだろう。


 それでもなお、未だ多数を思考放棄の理由とする人々は、いくら無難といえど、どうしようもなく愚かな者達と言えよう。


 だから僕は、無難が常に正解だとは思わない。


 あくまでも、そのときどきの正解と間違いを自分の中で判断して、選択をすればいいのだ。


 何も難しいことはない。


 ただその時の多数にとって、何が正解であるかさえ理解していれば、自分はいつだって正しい方にいることができる。


 そして、人々はそれを無難と判断してくれるのだから。


 それを是とする僕の思想が、どれほど無難ではないものだとしても。


 ただ、皆に無難と思われること。


 ただ、それ自体が、何よりも肝要な事なのだから。










 これを書いてる筆者個人は、中学校すら半分も通ってこなかった無難の欠片もない不良少年でした。


 ちなみに、最終学歴も通信制高校卒でほぼ中卒です。

 全然無難じゃなくてウケますね(笑)。


 ということもあって、成人した今では無難も大切であるということが身に染みてわかります。奏月脩


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