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幸せを追う悪女達  作者: 春咲菜花
第一章
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第九話    役割の放棄

「悪役令嬢のくせに、悪いことしてないなんて。そんなのいけないんだよ」

「どうして……。その事を……」

「いきなり現れて、お嬢様に対して悪役令嬢だなんて。失礼ですよ」


反論してくれたアエテルナは、少年が放った魔法で倒れた。

私はアエテルナの体を支えて、少年を睨んだ。


「いきなり魔法を打つなんて……。どういうつもり?」

「君には言われたくなぁい。悪役になってもらわないと困るんだよぉ」


悪役にならないと困る?

どういうこと?


「君が悪役を放棄したらどうなると思う?」

「全員が幸せになれるんじゃないの?」

「へぇ。そういう考えなんだ」


意味がわからない。

私が悪役になれば、悲しい思いをする人が現れてしまう。

そんなのは嫌だ。


「君が悪役にならなかったら、他の誰かが悪役にならないといけないんだよ?」

「……は?」

「だってそうじゃん。君が悪役にならなかったら、この世界の全員の運命が変わってしまう。特に君と距離が近い人達の運命や宿命が変わってしまうんだよ。誰かが役割を放棄したら、誰かがその役割を担わないといけない」

「……っ」


私が放棄した役割は悪役。

それを誰かが担うとしたら、誰かがユリィ・セーリアのような人物にならないといけないって事だ。

今はユリィ・セーリア、イーベル・アスクレイン、ギディオン・アスクレイン、セシリア・フィーリアの役割が放棄されている。

ユリィ以外の役割はみんな幸せになれる役割。

でも、ユリィは……?

ユリィの役割を担った人は?

悪役になって、みんなを苦しめて、セシリアの役割を担った人をいじめて、暗殺者に殺される。

そんなのはだめだ。


「運命を変えることはできないの?」

「どういうこと?」


少年は首を傾げた。


「誰かが放棄された役割を担うっていう事は、阻止できないの!?」

「できないよ。それが自然の摂理だよ」

「おかしいよ……!そんなのおかしいよ!私は幸せになれないの!?悪役になったら幸せになっちゃいけないの!?運命から逃げちゃいけないの!?」

「僕は逃げるなとは言っていないよ。ただ、君が逃げたら他の人が……」

「私は……!前世で自分の気持ちを蔑ろにされてきたの……。だから……。今世でこそ幸せになりたい……。そんな願いも叶えられないの……?」


少年は私に哀れみの目を向けている。

どうしていつも、私は幸せになれないの?


「運命から逃げるか逃げないかは、君が好きに決めるといいよ。僕は無理強いはしないよ。それじゃあね」


少年は姿を消した。


――お前は私達の言う事を聞いているだけでいいんだ。

――自分の意志なんて捨てなさい。


ずっと、思いを蔑ろにされてきた。

今世こそ、幸せになりたかった。

視界が揺らいで、私の瞳からは涙がこぼれ落ちた。

いっくん……。

柚木……。

琴葉……。

ごめんね……。


「ごめん……。私は幸せになれない……」


私は涙を拭って立ち上がった。

私は幸せになれない。

でも、私はみんなを幸せにするよ。


「お嬢様、ご無事ですか!?」


アエテルナが起きたらしい。

すぐに私の身を案じてくれるなんて優しいな。

でも、ごめんね。


「誰に物を言っているのかしら」

「え?」

「あなた失礼ではなくって?」

「お……。嬢様……?」


心配しているように私を見るアエテルナを見ると、心が痛む。

ごめんなさい、ごめんなさい。


「人の部屋で倒れるなんて、床が汚れてしまうでしょう!」


私はアエテルナを怒鳴りつけた。

アエテルナの体は震え、その瞳には涙が滲んでいた。


「何事だ!?」


お父様やお母様、お姉様と他の使用人も私の部屋に入ってきた。

全員この状況を理解できないようだった。


「ユリィ、何があったの?」

「ノックもせずに部屋にズカズカ入ってくるなんて……。いつからあなた達はこんなに野蛮になったのですか?」

「ゆ、ユリィ?」


私が今まで築き上げてきた信頼関係が、音を立てて崩れていく。

お姉様達は目を見開いて私を見た。

使用人達は困惑を隠しきれていない。


「どうしちゃったの!?」

「邪魔な使用人を躾ていたまでです」

「アエテルナとお前は仲が良かったんだろう!?なぜこんなことをするんだ!」

「こんな野蛮人と仲が良い?寝言は寝て言ってくださいな」


アエテルナは本格的に涙を流し始めた。

ごめんね。

でも、みんなが幸せになれる方法はこれしか無いんだ。


「出ていってくださる?そこの無礼者の処分は任せます」


私は全員を部屋から追い出した。


「結論が出たみたいだね」


少年はまた姿を現した。


「一人にしてくれない?」


少年は目を見開いた後に、少しだけ笑ってまた消えた。

私の瞳から涙がこぼれた。

私に泣く資格なんてない。

でも、もうこれ以上我慢はできない。

アエテルナを傷つけた。

これから他の人達も傷つけることになる。

もうこんなのは嫌だ。

私はベッドに寝転んで、声を殺して泣いた。


「これから運命が整い出す。歪められた運命がね」

「悪趣味ね。それに、運命を狂わせるように言ってきたのはあなたじゃない。おいたが過ぎると痛い目見るよ」

「大丈夫さ。歪んでしまった運命はもとに戻さないと。これは悪戯でも何でもない。ただの修正だよ」

「よく言うよ。意味のないことをやらせておいて」

「うるさいな。さぁ、綺麗事まみれの汚い世界を、君が正して見せてよ。山里菜乃葉」

こんにちは〜!春咲菜花です!!小話してもいいですか?実は、山里菜乃葉の口調や設定は親友に寄せているんです!他にも、「絶対振り向かせたい私と絶対振り向かない君」の春本莉緒や岡山唯斗、三井舞菜もクラスメイトや友達に寄せているんです!さて、今回は変わってしまった運命の成り立ち?について語る少年が出てきました。ユリィはその話を聞いて悪役を演じることになってしまいましたね。そして、この物語は早くも第九話になりました!いやぁ、小説書くの楽しい!これからもみなさんを楽しませるお話を書きたいと思っております!それでは第十話でまた会いましょう!

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