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幸せを追う悪女達  作者: 春咲菜花
第一章
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第七話    涙を流す君の過去

「お嬢様、あなた……。転生者でしょう」


なんで……。

それを……。

「転生者」という単語は、この世界の人は知らない。

つまり、アエテルナも転生者ということだ。


「え、えぇ。私は転生者よ」

「何てこと……」


アエテルナは額を抑えて、少しよろけた。

そんなにショックだったんだろうか。


「ユリィ様を……。ユリィ様を死の運命からお守りする事ができなくなるじゃないですか!!」

「ん!?」


何を言ってるのかな?

ユリィを死の運命から守る?

この子……。

もしかして私達の小説の読者?


「待って待って?君、もしかして……」

「はい!『キミセカ』の読者です!」


『キミセカ』は『君が世界を救うなら』の略称だ。

やはり読者だったのか。

最終回の感想が聞けるかもしれない。

これは絶好のチャンスだ。


「ねぇ、『キミセカ』を見ていたなら、最終回の感想を聞いても良い?」

「私、最終回は見てないんです」

「え?」

「私、病気だったんです。それで、最終回は見れていないんです」


やらかした。

最終回を見れていない子に感想を求めてしまった。

私、最低だ……。


「ごめんなさい」

「い、いえ。大丈夫です。もしかしてユリィ様も『キミセカ』の読者ですか?」

「いや、私は『キミセカ』の制作に関わってたっていうか……」

「えぇ!?ホントですか!?」


アエテルナは私の手を掴んで、キラキラした目で私に問いかけてきた。

こりゃ、ガチオタだな。


「うん、私はイラスト担当。『楓夏菜(かえでなつな)』って聞いたことない?」

「大っファンです!!知らない人なんているんですか!?私は夏菜先生の影響で『キミセカ』を見始めました!!まさかユリィ様が夏菜先生だったなんて!感激すぎて涙が出そうです!」


私の影響……。

なんだか嬉しいな。

アエテルナに掴まれていた手に、温かい水が降ってきた。

アエテルナを見ると、彼女は泣いていた。


「アエテルナ?」

「すみません……。前世のことを思い出してしまって……。みっともないですよね」

「ううん、そんなことないよ。アエテルナの前世を聞かせてくれない?」


アエテルナは私の言葉に頷いた。


* * *


私の名前は天津紬(あまずつむぐ)

幼い頃から重い病気を患っていて、人生の半分以上は病院で過ごしていた。

20歳になる前に死ぬ。

ずっとそういう話を聞いていた。

スマホでどれだけ自分の病気のことを調べても、治療法はなく、20歳になる前に死ぬ。

それしか出てこなかった。

生きる意味すら見失っていた頃、幼馴染があるイラストレータを紹介してくれた。


「見て!この人の色使いと体や顔の書き方、すっごく優しくない?この人のイラストが好きなんだよね」


友達が紹介してくれたのは楓夏菜というイラストレーターだった。

最初は全く興味がなかった。

そんなイラストを見て、この病気が治るわけでもない。

私は完全に人生に期待するのをやめていた。


「この人ね〜、小説のイラストも描いてるの!すっごくいい話だよ!Web版しかもってないから、かせないのが残念だよ……」

「何て小説?」

「『君が世界を救うなら』だよ!」


どうせ暇だし、読んでみることにした。

お母さん達に頼んで、今出ている分を買ってきてもらった。

読むと、すごくいい話だった。

文にも惹かれたけど、楓夏菜さんが描いたイラストに一番惹かれた。

本文に合った場面を描いているように見える。

でも、私には分かる。

楓夏菜はその場面その場面に共感して、感情移入している。

イラストがそんな気がした。

私は小説を読む方だから分かる。

ただこのシーンを描けば良いという、感情で描いているんじゃない。


「楓さんも……。人生に期待していないのかな……」


◇◆◇


最終巻が出たという話を聞いた。

でも、その時にはもう私は本を読める状態ではなかった。

起きているのも億劫で、もう死んだほうがマシだと思っていた。

今まで新イラストを楽しみにして生きてきた楓夏菜さんは、通り魔に刺されて死んだらしい。

もう、生きていく理由すらない。

きっと最後に楓さんが手掛けたはずの最終回も読めない。


「楓……さん……」


私の最後の日は、ずっと病室で涙を流していた。

楓夏菜さんのことを考えて。


* * *


想像以上に悲しい過去過ぎて、途中から涙が止まらなくなってしまった。

話をしているうちに、アエテルナは落ち着いたらしい。


「私はあなたの描くイラストを生き甲斐に生きてこれたんです」

「そこまで言われるほどのことじゃ……」

「いいえ、あなたの絵に込められている思いは私と同じでした」


確かに私は琴葉の書く小説の内容によって込める思いを変えていた。

でも、自分のイラストには「孤独」「悲しみ」などの感情を込めていた。

この子はそれに気づいていたんだ。


「確かに私とアエテルナは似ているね。私もずっと孤独で、未来を信じていなかった。でも、今は未来を信じてる」

「私もです。前世と同じ思いは嫌です!」


気合を入れたように言う。

私が今世の未来を信じているのは、みんながいるから。

そういえば、どうしてアエテルナはユリィを死の運命から助けようとしていたんだろう。


「アエテルナ」

「はい」

「どうしてあなたは、ユリィを助けようとしたの?」

「楓夏菜さんの手掛けた小説の登場人物と死なせたくないからです」


感激ぃ!

良い子すぎるこの子!

アエテルナのことを琴葉に教えてあげたいなぁ。


「それでは、おやすみなさい。良い夢を」


アエテルナはもう使用人の部屋に帰る時間らしく、部屋から出ていってしまった。

私も、もう寝ることにした。


「明日は何があるのかな」


前世の私からは考えられない言葉だ。

それだけ、今世は楽しい!


「誰か……。俺を……。殺して……」

みなさんこんにちは!春咲菜花です!年末!!今気が付きました。今日が大晦日だということに。一年ってあっという間だなぁ。あーあ。今年終わっちゃうよ。さて、今回はアエテルナの過去が出てきました!アエテルナが菜乃葉のイラストを生き甲斐に生きていたというところで、菜乃葉はシンプルに喜んでいましたね。次回は社交界デビューの話になると思います!頑張ってみます!ではまた次回!良いお年を!

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