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幸せを追う悪女達  作者: 春咲菜花
第二章
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最終話    星降る夜の願い事

真っ白な髪をお団子でまとめて、頭の天辺にはベールにティアラが乗っている。

私の髪と同じくらい真っ白なウェディングドレスを着た私は、頬杖をついていた。

急展開がすぎる。

そうだよねぇ。

イーリス様からしたらはよ結婚しろって感じだよねぇ。


――ふふっ、菜乃葉ちゃん、伊里也。もうそろそろいいんじゃないかしら?

――何がですか……?

――結・婚・式。来週でいいかしら?


という感じで現在に至る。

分かるよ?

千年も待ったんだもんね。

でもさ、早いって。


――ガチャ。


控室のドアが空いた。

そこには琴葉がいた。

琴葉は私を見るなりギョッとした顔をした。


「ちょっと、なんて顔してんの?」

「疲れがねぇ……」

「あー、急だったもんね。お疲れ様」


琴葉は部屋のカーテンを開けた。

入ってきた光はとても眩しい。

今日は快晴で空が青くてきれいだ。


「今日晴れててよかったね」


琴葉は私の方を見て微笑んだ。

そして私の方に歩いてきて、私の頬を上に引っ張った。


「もっと嬉しそうに笑ってよ。ほら」


この感じ、懐かしい。

私が死んだ日に同じようなことを琴葉がやってくれたのを思い出した。


「琴葉。私、死んだときに少しだけ琴葉の様子を見ていたの」

「え?」


――菜乃葉!!菜乃葉!!ねぇ!!一緒に……一緒に夢を叶えようって約束したじゃん!!一緒に……一緒に頑張ろうって……言ったじゃん……!!


「私達の夢は幸せになることだったよね。私の死に方はとても幸せとは言えないものだった。でも、この世界でまた琴葉に出会えて、また笑いあえてとっても楽しかった。前世ではハッキリ幸せだなんて言えなかった。でもね琴葉。私、今ならハッキリ言えるよ」


琴葉は涙を流し始めた。

私は琴葉の両手を握って、琴葉の頭に私の頭を乗せた。


「千年以上かかっちゃったけど、私は幸せだよ!琴葉はどう?今幸せ?」

「……うん。幸せだよ……。とっても幸せ!」


私は泣き喚く琴葉を柚木に預けた。


「何したんだよ……」


私の横には伊里也が立っていた。

伊里也は私をジトッとした目で私を見ている。


「いじめてないからね?私は今幸せだって話をしたら泣いちゃったんだよ」

「垂らしが」

「何で!?」


伊里也はたまに失礼だ。

いつ私を垂らしたんだか。

伊里也は私の手をそっと握った。


「どうしたの?」

「いや、俺も幸せだなって」

「伊里也、私ね。伊吹に告白された時にどうして断ったと思う?」

「え?うーん」


伊里也はすごく悩み出した。

前世ではずっと不思議だった。

どうして嫌いじゃないはずの伊吹のことをフッたのか。

伊里也の記憶を思い出して、納得した。


「シンプルにタイプじゃなかった……。とか?」

「答えはね」


私は伊里也の耳元に口を寄せて言った。


「伊里也のことが記憶がない時もずっと大好きだったからだよ」

「ほぁぁぁあああああ!?」

「ふふっ、行こうか。伊里也」


伊里也は顔を真っ赤にしながら、私をエスコートし始めた。


◇◆◇


結婚式は滞りなく終わった。

私はユリィ・セーリアからユリィ・グリーファになったのだ。

そして、パーティーが始まった。

私は各家の人達に挨拶をして回った。


「ユリィ様、イアン様、ご結婚おめでとうございます」

「ありがとうございます」


確かこの人は柚木の補佐役の人だったかな。

少し年配の方だ。


「こっ、セシリアは最近仕事をしっかりこなしていますか?」

「はぁ、まぁ」


あ、この反応はやってないな。

琴葉は本当に必要な仕事以外の時は私達のところに来ているから。


「それはいいのですが、そろそろお世継ぎをとご相談しているのですが」

「あー、まだ二人に子供いませんもんね」


少し困ったように補佐役の人は頷いた。

即位した時に結婚式はやったらしいけど、それから世継ぎの話なんて微塵も出てないらしい。

まぁ、あの琴葉だもんな。


「あ、それではお二人とも。良き夜を」

「はーい。……大変そうだね」

「世継ぎの件が問題になってないのは、必要ないからと言うこともあるだろうがな」

「あー」


この国の人は大体の人が不老になってる。

つまりは王族の世継ぎ問題はなくなるということだ。

私は思わず笑ってしまった。


「何笑ってんだよ」

「いや、考えたなぁって思って」


伊里也は首を傾げた。


「琴葉が不老の呪いを作ったのは、もちろん時を超えるためってのもあるだろうけど、世継ぎ問題を何とかしたかのも目的の一つだと思う」

「さっすが菜乃葉。私のことよく分かってるね」


後ろから聞こえた元気な声に私達は振り向いた。

琴葉は「いい結婚式だったよ」と言いながら近づいて来た。


「世継ぎを急かされるのは嫌だったから、一石二鳥だったんだ〜。……にしても、すごい盛り上がってるね。やっぱり有名人の二人の結婚式だからかな?」

「平民の入場も許可してるし、それもあるかも」


私達の結婚パーティーは王城でやらせてもらっている。

琴葉が遠慮なく使えと言って来たから。

だからそれなりに広いし、セーリア家とグリーファ家の領民達が「お二人の結婚式やパーティーを見たい!」と言ったことが始まりだ。

結婚式は外に出た瞬間すごい歓声が上がってたし。

「良かったね、たくさんの人に祝福されて」

「そうだね」


パーティーが終わった後、私と伊伊里也はベランダで星を見ていた。

キラキラ光る星はメイラール国の国境の草原で見た流星群よりもきれいだった。

一つ一つの星が輝いている。

そこが魅力的だなって思う。


「やっと色々と大変なことが終わったな」

「ずっとバタバタしてたもんね」

「これから先は何もないといいけどな」

「そうだね」


でも、何だかんだ何かあった方がちょっと落ち着くよね。

平穏な日々が続いて欲しいけど。

少しのトラブルはあって欲しいかもな。


「菜乃葉」


この声、ユアン?

ユアンは目が覚めたときにも結婚式にもパーティーにもでていなかった。

私は声が聞こえた方を見た。

浮遊魔法で空を飛んでいるユアンはベランダに着地した。


「どこに行ってたの?」

「……菜乃葉、僕は王城を出ようと思うんだ。……僕は女神様のところに行く」

「え?」


女神様のところ?

何で?

どうしてユアンが女神様のところに……?


「この世界で一番のイレギュラーは僕なんだ。僕も読んだよ。小説を」

「……」

「本物の魔王は僕じゃないんだ。過去に起きたことすべてが、この世界の理を変えた。本来の魔王はフレリア王国の第一王子だったんだ。小説では語られてないけどね。……僕達は知らず知らずのうちに世界の理を変えてしまっていたんだ」

「どうして……?どうしてユアンが魔王になったの?」


フレリア王国の第一王子が魔王になるはずだったのなら、どうしてユアンが魔王になったの?


「……当時、フレリア王国の王太子には、とある能力があると噂されていた。それは未来予知」


フレリア王国の第一王子も転生者……。

自分が魔王になると知ったから、ユアンにその役割をなすりつけた……。


「本来なら、僕が勇者であいつが魔王と呼ばれていたはずなんだ。フレリア王国第一王子はセシリア達同様に並列世界を移動する力も持っていたらしい。だから、どの世界に行っても僕が魔王なんだ。さっき女神様が教えてくれたんだ。それでね、女神様が僕に新しい世界を作ってくれるって行ってくれたんだ」

「新しい世界?」

「この小説通りの世界。僕が勇者って呼ばれる世界。小説通りって言っても、ユリィもアルトも、オーリスも、イアンも、誰も死なない。みんなが幸せになれる世界」


そっか。

ユアンも幸せになれる世界を女神様は作ってくれるんだ。

それなら、安心だ。


「ユアン、あなたはずっと辛い思いをしてたんだから、女神様の作った世界でしっかり幸せになってね」

「うん。菜乃葉もちゃんと幸せになるんだよ?」

「大丈夫だよ。だってもう、こんなに幸せなんだから」


ずっと一緒にいたいと思った人達が側にいる。

一緒に笑い合えている。

それだけで私は幸せだ。

ユアンは優しく笑った。


「そっか、良かった」


ユアンは転移魔法の魔法陣を出して、その上に乗った。

そして、伊里也をまっすぐに見つめてニヤリと笑った。


「横から攫われないようにしっかり捕まえておきなよ?」

「何を言うか。今更離すわけがないだろう?」


何の話だろう。


「それじゃあまたね。菜乃葉、伊里也」


ユアンは笑顔を見せて消えていった。


――コンコンコン。


そのタイミングで部屋のドアが叩かれた。

私は立ち上がろうとしたけど、伊里也が行ってくれるらしい。

伊里也は歩いてドアの方に行った。


「誰が来たのかな?」

「楽しそうだね」


私は声の方を見た。

そこには、何度も心の中で会った幼い私ではなく、高校生くらいの私が立っていた。

高校生の私の視線はとても冷たい。

この目、見たことある。

この私は、琴葉に冷たい言葉をかけたあの日に夢の中に出てきた私だ。


「うん、すっごく楽しいよ」

「あなたは誰からも愛されないよ。期待しないほうがいい。だって、今までずっとそうだったじゃない」

「そんなことないよ」

「嘘よ。だって今までそんな人いなかったじゃない」

「ううん、あなたは大切なことを見落としてる。だって、あなたはみんなといるときに幸せだって思えてたでしょ?」

「……」

「これは私の感じたことでしかないけど、一番幸せだって思えるときは、人から愛をもらうときじゃないかな?」


私がそう言うと、高校生の私は少し俯いた。


「でも……!」


高校生の私は私を見て息を呑んだ。

私は立ち上がって、高校生の私を抱きしめた。


「やっと私のこと見てくれたね」


さっきから高校生の私は私を見ようとしなかった。

それは過去の私と同じだった。

過去の私からすると、私は未来の私。

未来を見るのが怖かった過去の私は、現在と過去以外に目を向けることができなかった。


「幸せになることを諦めないで。幸せを追う事をやめないで」

「……」

「未来のあなたは幸せだよ」


高校生のときの私は笑って消えた。

どうして実体化して見えたのかわからない。

けど、まぁいいか。


「菜乃葉ぁぁぁああ!!」

「ぐぇっ!」

「今日ね!流星が降るってぇぇぇえ!」

「ぐ、ぐるじい!」


一見、琴葉に私が首を絞められているような状況だ。

マジで死ぬ。


「おい琴葉!菜乃葉が死ぬだろ!」


あとから来た伊里也が琴葉を引き離した。

私は呼吸を整えた。


「全く、琴葉は怪力も何とかならないのか?なぁ、柚木」

「俺には何ともできない。諦めろ」

「このままだと菜乃葉が殺される」

「失礼な!親友を殺すわけないでしょ!」


琴葉と柚木と伊里也が喧嘩を始めた。

その横を通ってお姉ちゃんと伊吹が私のところに来た。


「賑やかね」

「由梨奈、あれを賑やかって言えるのか?」

「楽しそうじゃない」

「あれが?」


伊吹が拍子抜けたように聞いた。


「髪の毛引っ張んな!」

「うるさい!馬鹿!」

「小学生かよ!」


私はこの賑やかな感じが好きだけどな。


「あ、流れ星」


私がそう言うと、琴葉達は喧嘩を止めて空を見上げた。

その空にはたくさんの流れ星が流れている。


「わぁ、きれい」


琴葉が呟いた。

本当にきれいな流れ星。

琴葉が手を合わせだした。

そう言えば、流れ星に願い事をすると願いが叶うっていう話があったな。

私も願い事をしようかな。

私は手を合わせて願い事をした。

終わった途端に琴葉がニヤニヤしながら私を見た。


「何願ったの?」

「……内緒」

「え〜、いいじゃん!教えてよ〜」

「こういうのは人に言っちゃいけないんだよ」

「え〜」


不満げな声を出す琴葉はどうしても知りたいらしい。

秘密だよ。

だって私の願い事を言ったら、琴葉達は自分のために祈れって怒るでしょ?

私はもう一度空を見上げた。

来年も、再来年も、その先もこの空をみんなで見上げられるといいな。


――この先も、みんなが笑顔で幸せに過ごせますように。

みなさんこんにちは!春咲菜花です!今回で「幸せを追う悪女達」は最終話となります!みなさまの感想や応援、ブックマークなどに励まされ、ここまで書くことができました!本当にありがとうございます!一章を含めると合計で69話あることに気がつきました!まさかこんなに書いてるなんて……。異世界系はやっぱ書くの楽しいですね!三章があるのかどうか気になっている方もいらっしゃるかもしれませんが、残念ながら三章は書きません。ネタ切れです(笑)本編は終わりましたが、番外編はまだ書くのでよければ見てくださいね!ネタ切れなのに番外編は書くのかと言うツッコミはしないでください(笑)改めまして、この物語を最後まで見てくださった方々に心から感謝を申し上げます。今後も春咲菜花をよろしくお願いします!

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― 新着の感想 ―
大号泣
春咲さん!!!!!!執筆お疲れ様でした!!!!!!大量に張られた伏線が全て回収されたのすごく良かったです!!!!!!!!1話で張られた伏線(琴葉と交わした約束)が最終回で回収されるのエッモ〜!!!!三…
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