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幸せを追う悪女達  作者: 春咲菜花
第二章
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第三十八話  別れの時間

「……のは。菜乃葉」

「ちょっと退いてくれ。はよ起きんかいこのスットコドッコイが!」


脳天を誰かに思いっきり殴られた。

周りの全員引いてるよ、伊里也……。

私は立ち上がって時計を見た。


「やばっ、あと七分じゃん!」

「ほら、さっさとやるぞ」

「あ、うん」

「菜乃葉」


ユリィが私の方に歩いてきた。


「もう一度伝えるわ。私を助けてくれてありがとう」


私は頷いた。

もう十分感謝の気持は伝わってるよ。


「「お姉ちゃん!」」


雪菜はお姉ちゃんに、唯斗は私に抱きついた。


「会えて嬉しかった」

「幸せな時間をくれてありがとう」


前世の教育のせいで大人びているけど、心は子供のまま。

私達に見せることのなかった子供らしい一面が見れて良かった。

私をまた”お姉ちゃん”って呼んでくれて嬉しかった。


「私も本当に楽しかった。ありがとう雪菜、唯斗」

「幸せになってね」

「「うん!」」


次は楓かな。

私は楓の方を見た。

楓は目元を赤くして私を見ている。

私は楓を抱きしめた。


「楓、前世から今世までありがとう。前世で孤独だった私を救ってくれてありがとう」


両親に愛されるために頑張ってた私を癒してくれていたのは、紛れもなく楓だ。

楓が死んだ時はすごく悲しかった。

でも、涙は楓に似合わないと思ったから私は笑った。

伊吹には無理してるってバレてたけどねり

私は楓と額を合わせた。


「また会えて嬉しかった。今世はちゃんと長生きして、幸せになったね」

「……うん」


私は楓から離れて、楓の頭を撫でた。

心地良さそうにする楓は本当に猫みたいだ。


「裕翔くん」


私が呼ぶと、裕翔くんは緊張したような顔をした。


「前世では話すことなんてなかったし、正直恨んでる節はあったよ。でも、君は私と伊吹を繋げてくれたし、今世で私と向き合ってくれた。君が向き合ってくれたから、私は君の本心を知ることができて、仲良くなれたんだよ。私が君達に苦手意識を持ってることを分かっていたのに、君は私と向き合ってくれた。味方がいなかったわけじゃないと教えてくれた本当にありがとう」


裕翔くんは驚いたような反応をした。

私がそんなふうに思ってるなんて思ってなかったんだろうな。


「前世では庇ってあげれなくて本当にごめんな」

「大丈夫だって」


私は笑ってみせた。

その姿を見て裕翔くんは安心したように笑った。

私はオーリスの方を見た。

寂しそうに眉を下げるオーリスは暗殺者だとは思えない。


「オーリスはこっちの世界でも、あっちの世界でも私達を助けてくれた。冷たく見えるように演技しているけど、あなたは優しい人。もう暗殺業なんてやめなよ。これ以上優しいあなたが傷つく必要はない」

「……っ。何でそれを……」


オーリスが暗殺業をしているのは、暗殺組織に脅されているからなんだ。

組織はオーリスの身体能力を利用するために彼の大切な妹を人質に取った。

指示に従わないと妹を殺すと脅されて、オーリスは暗殺業を続けている。


「脅されてるんでしょ?従わないといけなかったんでしょ?でもね、オーリス。それは今日で終わり。あなたはもう、裏社会で生きなくていいの」

「何を……」

「菜乃葉さーん!ねぇねぇ、ユアンはどこにいるの?最後の挨拶をしたいのにどこにもいなくて……。兄様……?」


寮の出入り口から出てきたのは幼い少女だ。

その少女はオーリスを見て目を見開いた。


「リディア……」

「兄様!兄様!」


オーリスは駆け寄ってくるリディアを抱きしめた。

この間、暗殺組織を潰しに行った先で見つけたんだよね。

その話は伊里也には秘密にしよーっと。


「菜乃葉?」

「oh……」


伊里也が私の肩を叩いた。

怒ってる。

この声怒ってるよ。


「こ、これで一件落着だね、オーリス!」

「ありがとう菜乃葉。本当にありがとう」

「暗殺業なんてもうやめてね」


オーリスは頷いた。

さて、帰るかな。


「もう時間だね」

「ああ、お前をシメるのは帰ってからにしよう」


忘れてなかったか。

そう思った時、幼いユアンとユアンとユリアンが現れた。


「ユアン、どこ行ってたの?」

「僕と話してたんだよ」


ああ、ユアンと話しがしたいって言ってたな。

私は幼い方のユアンに魔法陣を渡した。

ユアンは魔法陣を地面に置いて、その上に立った。


「菜乃葉、僕とユリアンを仲直りさせてくれてありがとね」


大きい方のユアンが言った。

さっきから感謝されてばかりだな。


「仲直りできたのは二人の絆が強かったからだよ。私は何もしてない」

「手伝ってくれたのは事実だよ。感謝くらいはさせてよ」

「……分かった」


みんな押しが強いんだよなぁ……。


「さぁ、帰ろうか」


十二時になった。


私達の体は光をまとって透け始めた。


「お姉ちゃん、また会えて嬉しかった!」

「お姉ちゃん達と過ごした時間はとっても楽しかったよ!」

「前世から僕を愛してくれてありがとう!」

「リィデアを助けてくれたこと、感謝する。お前と過ごす時間は案外楽しかったぞ」

「伊吹!お前とまた会えて嬉しかった!みんな幸せになれよ!」

「菜乃葉、私を幸せにしてくれたように、周りの人や自分もちゃんと幸せにしてあげてね!」


みんなが口々に言った。

涙が出そうになるのを堪えて、私はみんなに微笑みかけた。


◇◆◇


「どうして……。由梨奈……。どうしてなの……」

「あんなに愛情を注いでやったのに……」


刑務所のような場所でぶつぶつと呟いている人がいる。

それは私の両親だ。

醜いな。


「本当にそれは愛情だったのかな?」


私が声をかけると両親は弾かれたように私を見た。

そして憎らしそうに眉をひそめた。


「……菜乃葉!」

「どうしてここに……?」


これが女神様が与えてくれた最後のチャンス。

まともに話すこともできなかった両親と話せる機会。


――あの両親を一度見返してあげなさい。


分かってる。

言いたいことを全部言うから。


「その愛情は私達にとって毒になるとなぜ分からなかったの?」

「……」

「あなた達が私達に注いでいたという愛情は、愛情とは言えない。あなた達の愛情は私達からしたら呪いだったんだ」


二人は何も言わない。

お母さんは少し泣きそうになって私を見ている。

そんな顔するなら最初から私達を助けてくれればよかったのに。


「あなた達は私達に期待をしすぎたんだ。期待に応えても褒めてくれなかったのは、まだ私達ならやれると思ってあえてやっていたことかもしれない。でも、人は褒められなければ頑張る気になれないんだよ」

「……」

「あなた達は間違えたんだ。愛し方を、期待のしかたを。あなた達が私達をちゃんと愛せていたら、私達はあなた達を恨まなかった。ちゃんということを聞いていた。家族みんなで笑い合えていた。家庭を壊したのはあなた達だ」


本当はね、私も分かってたんだよ。

お父さん達は先代様に劣らないように努力していたことを。

先代様の方が良かったって言われないように。

でも、先代様はすごかった。

誰もが尊敬し、憧れるような方だった。

だから、自分達の代からもそれを受け継ごうとしてた。


「あなた達は先代様とは違う。そんな当たり前の事を見落としていたんだよ。先代様のほうが良かったって言われてもいいじゃない。きっと誰かがあなた達の努力を見てくれているんだから。自分を信じて、会社のことだけじゃなく、子供のことも考えていれば、もっと違う結果があったはずだよ」

「……会社が立派になることが私達の幸福だ。子供を大事にしたから幸福になれるわけじゃない」

「チヤホヤされることだけが幸福だと思うの?違うでしょ?あなた達も一人の人間だ。ちょっとした時間が幸福だと思わないわけじゃないでしょ?」

「……っ」


両親は夫婦二人で仲良く話している時間は幸せそうだった。

彼らの幸せを決めるのは私じゃない。


「私も、お姉ちゃんも、雪菜も唯斗も、お母さんもお父さんも、先代様も、みんな人間なの。幸福は人それぞれだ。そして、幸福だと思えるのは一つのことだけじゃない。いくつもある幸福の内のたった一つのために頑張りすぎたんだよ」

「……」

「でもね、私はあなた達を嫌いだと思ったことはね、一度もないんだよ」


私は微笑んだ。

私を見て両親は目を見開いた。

彼らが私の笑顔を見るのは初めてだろうな。


「それじゃあね」

みなさんこんにちは春咲菜花です!最終回が近づいてまいりました!長らく続いていた「幸せを追う悪女達」は四十一話で最終回となります。最終回まで残り三話!頑張って書いていくので応援よろしくお願いします!よければグッド、リアクション、レビュー、ブクマ、感想ください!感想には泣きながら返信いたします!それではみなさんまた次回!

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