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幸せを追う悪女達  作者: 春咲菜花
第二章
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第三十四話  戻ってきた日常

「菜乃葉!」


寮に転移してすぐ、ユリィが抱きついてきた。

心配してくれたのだろう。


「良かった!」

「心配かけてごめんね、無事に解決したよ」

「お疲れ様」


お姉ちゃんがそう言って微笑みかけてきた。

部屋にいるのはユリィと伊吹、ユアンと私と伊里也、そして不機嫌な松谷さんもいる。


「感動的再開は後にしてくれない?」

「松谷さん、ごめんね。まさかみんなが気づくなんて思ってなくて」

「考えが甘いのよ。クソ女」


松谷さんは変装のために渡した指輪を私に向かって投げた。

私は指輪をキャッチした。

お怒りはごもっともだな。


「一度戻ってたなら一言言ってから行きなさいよ。こっちも迷惑だったんだから」


怒ってるって言うより、心配してくれたのかな?

松谷さんは心配性だってよく言われてたし、私が戦争を起こすって言ったときも複雑そうだった。

なんだかんだ優しいのかな。


「……はぁ、醜いやつあたりよね。あんたと入れ替わって分かったの。あんたはこの世界に来て沢山の人に愛されるようになったのね」

「そうだね。でも、それは松谷さんも同じだよ。だって私達が誰を好きになろうが、誰と一緒にいようが咎める人はだれもいない。開放されたんだ。思う存分生きようよ」

「……私、綺麗事は嫌い。でも、あんたから出てくる綺麗事は割と好きよ」


松谷さんは照れくさそうに笑った。

綺麗事っていうか、思ったこと言ってるだけなんだけどな。


「あ、そう言えばイケメン連れてこいって言ってたよね?どんな人がいい?」

「なんだかんだイーベルが一番好きだったからなぁ……。あの人を連れてきて」

「今から?所在も分からないのに?」

「ジゼルのチート能力使えばいいでしょ?」


確かに。

ジゼルなら契約してる精霊がたくさんいるしね。

私はジゼルに姿を変えた。


「どっかで見たことある顔だとは思ってたけど、まさか菜乃葉の前世だったとはな」

「私も」


伊吹とお姉ちゃんはそう言った。

まぁ、異世界に来てから前世の姿なんて滅多に見てないもんね。

ジゼルになればかなり魔力量が増す。

かと言って複雑な構成を杖なしでできるわけではない。

今日はたくさん複雑な構成の魔法を使ってるなぁ。

普通の人なら魔力不足で倒れてるよ。

私は床に杖の先を向けた。

床に現れたのは魔法陣。


「対象者を呼び寄せよ」


私がそう言うと魔法陣の上にイーベルが現れた。

みんなは感性を上げてそれを見ている。

イーベルに近づくが、意識を失っているようで気づかない。

私はイーベルに魔法で電気を流した。

死ぬほどじゃない。

電気風呂くらいの強さだ。


「あだだだだだだだ!」

「おはようございます殿下。起きてください」

「誰かお前と話すか」


私はわざとらしく手のひらで電気の音を立てた。

イーベルは勢いよく起きた。

その顔は真っ青だ。


「分かった!話すからそれをやめろ!」

「分かってくださってよかったです。危うく電気の量を増やすところでしたよ」

「サイコパ」

「何か?」

「何でもない……。で、俺を呼び出して何の用だ?」


不機嫌そうに聞いた王太子は、私の後ろにいるセシリアに気がついたらしく、目を見開いた。

小さな声で「セシリア……」と呟いた。


「殿下、あなたの行く先にセシリアも連れて行ってください」

「誰がお前の頼みなど聞くものか。セシリアは愛しているが旅のお荷物になるのはごめんだ」

「愛しているなら側にいてあげてくださいよ。あなたはそう愛する人を一人にするんですか?」

「断罪した奴がよく言う。お前が一番罪深い」


みんなすごい刺さること言ってくるね。

そもそも、私が断罪したのはその件とは別件もあってこそだしね。

私は知っている。

イーベルは、イーベルだけは松谷さんの魔法にかかっていなかったことに。


「断罪はしましたが、王家に勘当されたのはご自身のせいでは?」

「……」

「愛しているなら、これからも支え合ってくださいよ。あなたなら分かるでしょ?ひとりぼっちがどれだけ辛いかを」


イーベルは眉間にシワを寄せた。

そして松谷さんと顔を合わせた。


「「嫌な女だ」」


私は噴き出した。

二人同時に同じことを言うなんてお似合いだな。

二人も同じだ。


「殿下、私達似た者同士ですわね」

「そうだな。じゃあ、似た者同士これからも仲睦まじく生きて行こう」

「腹黒女にはいつか復讐しましょう」

「サイコパスに負けるもんか」


私は笑顔で二人に電撃を喰らわせた。

その悲鳴が寮に響き渡らないように伊里也が結界を張ってくれた。

止めればよかったのに。

その後二人は学園を出た。


◇◆◇


――翌日


「菜乃葉!」


学園に登校すると、真っ先にオーリスが走ってきた。

私を心配したような顔をしている。

オーリスは魂を見ることができる。

だからセシリアと入れ替わってるって知ってたのだろう。


「おはようオーリス。久しぶりだね」

「”久しぶりだね”じゃねーんだわ!どこ行ってた?」

「天国」

「死んでるぅ!」


ノリいいよな、オーリスは。

天国って言っても比喩的な意味だけどね。

おばさん達のとこは本当に居心地が良かったなぁ……。


「あ、オーリス。この放課後は暇?」

「暇だけど……」

「じゃあ、みんなで茶しばかん?」


オーリスは首を傾げた。

なんとなく使った大阪弁はやはり通じなかった。

でしょうね。


「おい、あれ伊里也じゃね?」

「え?」


遠くで舞う土埃。

なんか既視感あるなこれ。

息を切らして私達のもとに来た伊里也は私の腕を引っ張って、自分の側に寄せた。


「オーリス、近い」

「……そうでもないと思うが」

「ち!か!い!」

「お前は番犬か?」

「うるさい羽虫」

「ひっど」


◇◆◇


私達は放課後、セーリア公爵邸でお茶会をしていた。

ユリィはもちろん、伊吹やお姉ちゃん、伊里也とオーリスがいる。

後から藤井くんも来るらしい。

私はみんなに聞きたいことがあったんだ。


「私が戦場に行ってからみんなは何してたの?」

「セシリアが半年で帰ってくるって言ってたから半年待ってた。けど帰ってこなかったからまずは王都中を探し回った」


それは申し訳ない。

そこまで迷惑をかけちゃってたなんて思わなかった。


「私は王都にいなかったけど……。何で居場所が分かったの?」

「セシリアを問い詰めて戦場に行ったことを聞かされた。向かっても誰もいなかったから通りすがりの人にここらへんで女の子を見てないかと聞いたんだ」

「そしたら白髮青目の女の子を知り合いが拾ってたと聞いたの」


なるほど、知り合いというのがおばさんの事かな?

おばさんの知り合いねぇ……。

向かいのパン屋さんのロナルドさんかな?


「その人のところに案内してもらって、菜乃葉と会わせてくれって懇願したけどそんな奴いないって言われたんだ」

「多分、おばさんは私を守るためにいないって言ったんだと思うよ。指名手配されてる私を引き渡せば何かしら辛い思いをすると思ったんだと思う」

「だろうな。……本当にお前は人垂らしだな」


何でだよ。

ツッコミそうになるのを抑えた。

伊里也は時々失礼なことを言う。

仮にも前世では主人だった相手に。

私は人と仲良くしてるだけで垂らしてない。


「そうだ伊吹、私ずっと気になってることがあるんだよね」

「何?」


伊吹が首を傾げた。


「伊吹って昔は私のことが好きだったじゃない?どうして今はお姉ちゃんのことが好きなの?接点なかったと思うけど……」


話してる途中で背筋が凍りそうなほどの殺気を感じた。

伊吹の顔は真っ青になっていく。


「馬鹿っ!お前っ!」

「へぇ……」


ドスの利いた伊里也の声に全員が肩を震わせた。

一番震えているのは伊吹だ。

もしかして言っちゃいけなかったのかな?


「そんな話聞いてないなぁ〜?」

「待て伊里也。昔の話だ。昔の……」

「昔でも何でそれを俺に言わなかったのかな?」

「こうなることが分かってたから」

「ほぉ〜う?」


伊里也は伊吹の胸ぐらをつかんだ。

お姉ちゃん以外はみんな目を逸らして紅茶を飲んでいる。

私もそうだ。

チラッと伊吹を見ると、真っ青な顔をして私に手を伸ばして助けを乞っている。

ごめん伊吹。

私は君を助けられない。

治癒ならしてあげるから死なないで。


「遅くなって悪かったな!藤井裕翔!只今参上!……って修羅場ってんなお前ら」

「藤井!助かった!コイツをなんとかしてくれ」

「え?無理。どうせお前が悪いんだろ?」


うーん、悪いっちゃ悪いけど。

原因は私にもあるんだよねぇ。

私の中で悪い考えが浮かんだ。

私はニヤリと笑って伊吹を見た。

伊吹は頬を引きつらせている。


「伊吹ったら言っちゃ駄目ならそう言っておいてよ〜。伊吹が中学生時代に私に告白したってことを」


――ピシッ。


伊里也のこめかみが音を鳴らした。

あ、これやばいかも。

伊里也が手のひらでかなりやばいくらいの電気を出した。


「みんな、耳塞いだほうがいいよ」


私はみんなに警告した。

全員一斉に耳を塞いだ。


「忠告するんじゃなくて助けろぉぉぉぉぉぉおおお!ぎゃぁあぁぁぁああぁぁああああ!」


◇◆◇


私は死にかけの伊吹に治癒魔法をかけた。


「ごめんね、おいたがすぎたね」

「本当にな」


伊吹は私を睨みつけた。

あそこまでやるなんて思ってなかったもん。

仕方ない仕方ない。


「それで、いつお姉ちゃんが好きになったの?」

「んー。お前が死んでしばらくした頃かな」


それは初めて聞く、私が死んだ後の話だった。

みなさんこんにちは春咲菜花です!やっと平和な日常が帰ってきましたね!イーベルも再登場です!さて、そろそろ物語もクライマックスに入りました!そろそろ卒業式を書こうと思うでのお楽しみに!良ければレビュー、グット、リアクション、ブクマ、感想をいただけると嬉しいです!それでは次回お会いしましょう!

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