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幸せを追う悪女達  作者: 春咲菜花
第二章
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第三十二話  死ねばよかった人

「なんか暗いわね……」


お姉ちゃんが言った。

確かに暗い。

外はまだ昼なのに、そんなこと関係なく暗い。

窓は固く閉ざされ、黒いすすが溜まっている。

ちなみに今いるメンバーは、伊里也、伊吹、お姉ちゃん、ユリィ、ユアン、ユリアン、私の六人だ。

私は窓に近寄ってガラスに指を滑らせた。

人差し指は真っ黒になっていた。


「これが不気味さの原因だね」

「ん?どれどれ?」


伊里也が私の元へ寄ってきた。


「汚っ!」

「つけようか?」

「いらないいらない」


私は水魔法で指を洗い流し、謁見の間にみんなでゆっくりと向かった。

ついた謁見の間の扉は、窓よりも固く閉ざされ、分厚い。

しかも、扉の端の方には何か道具を使って回すような穴がある。

つまり、人力では開かない。


「よし」


私は杖を取り出した。

杖は、私の手のひらに現れた。

私は宙に浮く杖の持ちを持った。

一回やってみたかったんだよね。

ていうか、杖って初めて使うかも。

キミセカの世界の魔法は杖なしでも魔法は使える。

けど、複雑な構成を組んでの魔法は杖があった方が効力が上がる。


「やるぞー」


私は杖を構えた。

杖の先には魔法陣が現れた。

それまで黙って見ていた伊里也が初めて顔に焦りを滲ませた。


「え?おいおい、ちょっと」

「爆散魔法!」


そう言って私は杖の先を扉に向けた。

扉はバラバラに砕け散り、開閉は不可能になった。


「おー!」

「すごい魔法ね」

「ちょっとやり過ぎじゃ……」

「俺もそう思った」


歓声を上げる伊吹と褒めるお姉ちゃん。


「随分と野蛮な入り方だな。アスクレイン王国も廃れたものだ」

「ごめんなさーい!覚醒するのやめてもらっていいですかー?」


私は大人の姿のユアンに言った。

伊里也は「馬鹿野郎!」と言わんばかりの顔をしてこっちを見ている。

伊里也さん、こういうのは相手を揺さぶったもん勝ちなんですよ。

心理戦だよ。

心理戦。


「……馬鹿なの?僕がそんなことでやめるとでも?」

「話が通じませんね。世界滅ぼすとか非常識ですよ。非常識」

「人の城の扉爆散させるやつよりかは常識はある」


おっと、そうきたか。

そう言われると何も言えないな。


「よいしょ、みんな座って〜。ほら、ユアンも早く」

「何で僕の名前を……」

「早く〜」


ユアンは渋々私達のところに来て座った。

すごく不思議そうな顔をしている。


「じゃあ、手札配るよ〜。ババ抜きのルールはみんな知ってる?」


全員が頷いた。

私はジョーカーを抜いてみんなに手札を配った。

しばらく戦ってから、ユアンは小刻みに震えだした。

そして


「おかしい!」

「何が?」


私はユアンに聞いた。

みんなは横を向きながら震えているだけだ。


「君達は僕を倒しに来たんだよね!?」

「そうだけど?」

「なぁんでババ抜きを楽しくやってるの!?」

「倒すため?」

「何でだよ!物理攻撃しろよ!」


そんなに切れの良いツッコミをしなくてもいいのに。


「私に人を殺す度胸はないから」


ユアンは眉をひそめた。

そして、少し悩むような素振りをした。


「ごめん、何言ってるから分からない」

「え?」

「ブフッ」


誰だよ、今吹き出したやつ。

一人だけ肩を上下に激しく揺らしている人がいる。

伊吹か。

後でシメよう。

それより、何が分からないのかな?


「魔王城の扉を爆散させたり、魔王とトランプする度胸はあるのに?」

「それはそれ、これはこれだよ。私はできれば平和に事を済ませたいんだ」


ユアンは扉を指さした。


「……」


それは忘れてよ。

言われたら何も言えないでしょうが。


「私ね、人を殺したくないんだよ。だから穏便に済ませたい」


ユアンはまた指を指した。

うん、分かった。

直せばいいんだよね?

私は立ち上がった。


「おい、お前まさか……」

「そのまさかだよ、伊里也。ずっと隠せるとも思ってないしね」


私は姿を菜乃葉……。

ジゼルに変えた。

お姉ちゃんや伊吹は目を見開いた。

この格好になるのも久しぶりだな。


「「ジゼル!?」」


お姉ちゃんと伊吹が言った。

それを気にせず、私は扉に手のひらを向けた。

扉は元通りになり、なんなら古さがなくなっていた。


「復元魔法……?君何者なの?」

「前世持ちのチートだよ」


ユアンは眉をひそめた。


「さぁ、茶番は終わりだよ。本気の話し合いをしようか、ユアン」


私がそう言うと、みんなの持ってたトランプのカードが消えた。

私が消した。


「え?」


後ろで誰かが声を上げた。

みんなの足もとには転移魔法陣が現れた。

みんなの魔力は私よりも低い。

だから、伊里也以外は全員学園に戻す。


「菜乃葉!」

「伊里也がいるから平気だよ。私達がヘマをした場合は国を守ってね」

「……りょーかい……」


伊吹はそう言った。

そして、お姉ちゃんとユリィと共に消えた。

後で怒られちゃいそうだなぁ。

まぁ、ネチっこい伊里也を残したし、怒られないか。


「……処刑」

「きっつぅ……」


ちょっと怒ってたわ。

ごめん、魔王化なんてされたら魔力量が少ない人は魔物化する。

大事を取って二人には帰ってもらった。

二人も、それは分かってるだろう。


「分かってるでしょ?二人は魔力量が私達よりも少ない。魔物化なんかされたら二人を殺さないといけないんだよ?」

「あー、そっか」

「え〜?分かってなかったの〜?え〜?習ったはずだけどなぁ〜。あれ〜?あだ!」


伊里也を全力で煽りまくってたら、すごい思いっきり殴られた。

マジで痛い。


「やるならやるぞ」

「あいよ。ユリアン」


私がユリアンを呼ぶと、姿を変えたユリアンが前に出た。

私はユリアンにかけた変装魔法を解いた。


「ユリ……アン……」

「ユアン、ごめんなさい」


ユリアンが一歩前に出て、ユアンに頭を下げた。

茶番はここまでだね。

ユアンはユリアンを見て、不機嫌さを表に出した。


「魔王になれば王妃が生き返るなんて嘘なの。私は、私に心臓の呪縛をかけたあいつの国に復讐がしたかったの」

「心臓の呪縛?」

「私はあのクソ王太子に心臓の呪縛をかけられた。だから言うことを聞かざるを得なかった。私はユアンを殺すように命令された。だから殺した」


ユアンは眉をひそめた。

その顔には恨みや殺意はもちろんある。

でも、どこか寂しさもあった。


「それは……!それはお前のミスじゃないか!どうして僕は……!僕達はお前が死にたくないがために死ななければならないんだ!」


ユアンはそう叫んだ。

辛そうに。


「お前が死ねば良かったんだ!無様に生きることに縋らずにいれば……!」

「……ユアン、気持ちは分かるけどその言い方は良くないよ。ユリアンにも大切なものはあったはず。その言い方はいただけない」


私は耐えられずに言った。

軽々しく人に”死ね”なんて言っちゃいけない。

本気で死ねって言われる辛さは、私もよく分かっている。


――許さない!私の彼氏をたぶらかして……!目障りなのよ!さっさと死んでよ!

――……ごめんね。


ユリアンだってやりたくてやったわけじゃない。

その言い方はあんまりだ。


「うるさい!部外者は黙ってろ!」


「君は何も分かってない。ユリアンの苦しみを」

「知らない!大切なものを失う気持ちなんて……!お前に分かるはずない!」


偏見がすごい。


「私も失ったよ。大切な弟と妹を。実の親のせいでね。あなたの妻と違って、本当の悪意によって殺された」

幼くなったユアンが私を横切った。

私は止めようとした。

けど、ユアンの顔を見てやめた。

だって、すっごく真剣な顔をしているから。


「もうやめよう」

「……僕?」


ユアンは眉をひそめて幼いユアンを見た。

そりゃあ驚くよね。

目の前に幼少時代の自分がいるんだから。

さて、ユアンはどう出るかな?

みなさんこんにちは春咲菜花です!長らく投稿をしなくてごめんなさい!言い訳を言いますね?番外編を書いていたんです〜!皆さんお気づきかもしれませんが、番外編を別の場所に移しました!色々面倒だったので!良ければそちらもご覧ください!これからはどちらにも手を入れていくのでよろしくお願いします!それではみなさん、また次回!

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