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幸せを追う悪女達  作者: 春咲菜花
第二章
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第二十九話  固く閉ざした心

「お前が戦争を起こしたことなら、知ってる」

「なら!」


なら呆れてよ。

冷たい視線で私を突き放してよ。

贖罪なんて必要ない。

だから、こんな最低で面倒くさい女を嫌いになってよ。


「なら嫌いになってよ……」


一人の方が気楽だった。

前世ではずっと煙たがられて、幸せにすらなれなかった。

道具としか思われなくて、愛情なんて一切もらえなくて、一緒にいたい人とも引き離されて、私の元には何もなくなった。

だから一人の方が気楽で、失うものもなかった。

だから楽だった。


「……お前は俺達に心を開いているように見えて心を閉ざしてる」

「……そ、そんな事……」


そんな事ない。

私はみんなを信頼して、ちゃんと心を開いている。

何でそんな事言うの?

私はちゃんと……。

ちゃんと……。


「本当にそう思うの?」

「え?」


誰の声?

私は周りを見た。

その瞬間、あたりは真っ暗になった。

既視感あるな、この感じ。

案の定、声の主は私だった。

なんだか私の目線が低いような。

私は私を見下ろして言った。


「心の中でちょっと疑ったりしてたんじゃないの?」

「……」

「私は未来を信じたよ。あなたが信じられるようにしてくれたんだ」


私は私の右頬に触れた。


――菜乃葉、痛かったわね。でもね、お父さんはあなたのために……。


私はその手を振り払った。

呼吸が乱れる。

息が……。

苦しい……。


「……試したりしてごめん。今、あなたは私の手を振り払った。よく考えてみて?あなたは今まで、差し出された手をどうしてきた?」


――私にこの手を取る資格はない。


そうか。

私は自分が思っているよりも人を信じてなかったんだ。

振り払っていたんだ。

私は私の手を取った。


「間違えたのはあなた。でも、間違えた分だけ成長するのはあなた。人を信じろって私に言ったあなたはちゃんと人を信じてなかった。変われてなかったのは私もあなたも一緒。そりゃそうだよね。どっちも山里菜乃葉だもん。愛をもらわずに、自分を見失って育ったただの人形だもんね」

「……」


人形、か。

確かにその言い方は正しいかも。

親の言うことを素直に聞いて、都合のいいように動く人形。

操り人形。


「でも、今のあなたはどう?操られてないでしょう?自分の意思で動いて間違えてるんでしょう?あなたは人形じゃない。自分の意思で動ける人間でしょう?」

「でも、やっぱり私も怖い。私は人に心を開くのが怖い」

「人を信じていても、心を開くのは難しい。だって忘れてしまったから。私達は心を開く方法を、人を信じる方法を」


忘れたからと言って、そのまま生きていくことは難しい。

どれだけ弁解しようと、いつかバレてしまう。

恐れることは悪いことではない。

それを克服しないと成長なんかできっこない。

分かってるんだ。

分かってるのに、いざ心を開こうと思うとビクともしない。

みんなは優しい。

だからといってその優しさに甘えてちゃダメなんだ。


「開けられないなら、頑張ってこじ開けよう。私達を信じてくれたみんなのことを思い出して、力一杯に」


私達の横に、大量の鎖で開かないようにされた大きな扉が現れた。

私は私を見た。

私は私に微笑んだ。


「誰にだって怖いことはある、不慣れなことはある。それを克服するために仲間がいるんだ。自分一人ではどうもできないことでも、仲間がいれば協力できる」

「……」

「出会えたんでしょ?信用できる人に。なら、あとは心を開くだけ。簡単だ」

「ここは私の心の中だからかな」


私がそう呟くと、私は首を傾げた。

いきなり言われても意味が分からないよね。

前世は笑うこともなければ、泣くこともなかった。

笑い方は忘れてて、涙は枯れてた。

だから、感情を表に出す術がなかった。

でも今、私達は表情を表に出せてる。

前世の山里菜乃葉としての姿で。


「ここでは、私達は泣けるし笑えるんだ……。自由なんだ……」

「ここだけじゃないよ。あなたがこれから戻る伊里也達のところでも感情を出せる」


とっくの昔に、私は自由になってたんだ。

私は鎖に触れた。

過去に囚われて何もしなかったのは私。

壁を作っていたのは私。

心に閉じこもって成長できなかった私に、みんながいろんなことを教えてくれたから。

みんなが私に信頼できる人が現れると教えてくれたんだ。

今の私がいるのは、みんなが私に感情や愛情をくれたからだったんだ。

出会いや別れが多かった山里菜乃葉の人生。

出会いの分だけ私は成長できてたんだ。

それを出すことができなかっただけで、私は成長できてたんだ。

出会いと別れの分だけ人はたくさんの感情や愛情をもらう。

そして成長する。

私達はそうして大人になっていく。

心を閉ざせば成長なんかできなかったんだ。

なろう、大人に。

鎖は光を放って砕け散った。

私は斜め後ろにいる私を見た。


「ほらね、簡単だ。心と向き合えば、過去を振り払えば、あなたは大人になれる。幼かったのは私も同じだよ」


そういえば、私の目線が高くなった気がする。


「おめでとう、菜乃葉。あなたはもう、ちゃんとした大人だ」


私達はお互いに微笑みあった。

目に少しだけ涙をためて。

みなさんこんにちは春咲菜花です!もう二九話ですか!?書いてるときに話数見てビビり散らかしましたよ。さて、今回は菜乃葉が心を開く(物理)シーンを書きました!いやぁ〜、ロリ菜乃葉がまたしても登場ですよ〜。私、また登場させるとは思ってませんでした〜。おい作者って感じですよね?ごめんなさい、私後先考えずに書くタイプなんです(笑)それではみなさん、また次回お会いしましょう!

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