第二十二話 アルトの鍵と八つ当たり
「アルト様!」
私はアルトを呼んだ。
アルトは戸惑った顔で出て来た。
「ナズナ?一体どうした?」
「鍵!曽祖父様からいただいた鍵を貸していただきたいのです!」
「なぜそれを……」
「早く!」
アルトは戸惑いつつ鍵を取り出して私に渡した。
私は一礼して、校舎から出て食堂の近くの壁の前に立った。
レンガでできた校舎には仕掛けがある。
「まずは一番下から一個上のところから上に四つ。その次はそこから右に二つ横に行く。そこからさらに下に五つ。左に七つ。上に一つ。左に三つ。できた」
私は順番通りにレンガを押し込んで行った。
すると、そこから少し離れた場所の壁が開いた。
開いた。
私はその中に入った。
すぐそこにドアがある。
その鍵穴にアルトから受け取った鍵をさす。
ピッタリだ。
私は左に回した。
――ガチャッ。
開いた。
私はドアを開けて中に入った。
机に本棚。
紅茶の入ったカップ。
私はカップに手を当てた。
まだ湯気が出ている。
「逃げられたな」
私は部屋の中を見た。
大きな保冷道具。
中を開けると、大量の食材と調理された食べ物があった。
厨房から消えた食材はここに住む者に取られていたのか。
隣にも部屋があることに気がついて、私はそっちにも入ることにした。
中は理科室のようになっている。
一本の試験管に何かが入っていることに気がついた。
それを手に取って嗅いでみる。
「あの時の液体と同じ匂い」
大舞踏会で私にかけられた精神を破壊するという液体と同じ匂いがした。
つまりは……。
「セシリアはここにいたのか。そりゃあ、見つからないわけだ」
ここはギディオンの曽祖父とメイラール王国から留学して来たアルトの曽祖父が秘密基地に憧れて作った部屋。
世界に二つしかない鍵。
一つは王宮に、もう一つはアルトが。
そういえば、半年くらい前に王宮に侵入者が入ったと騒ぎになっていた。
盗まれたのはこの部屋の鍵だったか。
私は机の上に積まれた本の一冊を手に取って開いた。
禁忌魔法が大量に書かれた本。
でも禁忌本の印である焼印がない。
じゃあ、模写されたものか。
「そういえば、セシリアがここに来る場面があったな」
アルトが大事そうに握りしめる鍵をセシリアは見つけた。
アルトの手からそれを抜き取り、何の鍵かを調べ始めた。
学園のいたる所にあるヒントを見つけ出し、見事にこの部屋に辿り着く。
そこで、アルトの曽祖父がやりたかったことが書かれた一枚の紙を見つける。
「これか」
私は小説にも出てきた紙を見つけて開いた。
でも、内容は全くの別物。
そうか、アルトの曽祖父もそうなんだ。
「……結局、死亡フラグがある人達を救うにはこうするしかないんだね」
琴葉、私はずっと気になっているの。
あなたはどうして人がたくさん死ぬ物語を書いたの?
前世からずっと気になってる。
あなたは何を抱えているの?
◇◆◇
「菜乃葉!!いた!」
「どこ行ってたんだよ。探してたのに」
「ごめん」
私は隠し部屋から出て、みんなのところに戻った。
午後の授業が終わって、日はすっかり傾いていた。
「用事を思い出してね。これからアルトに……」
「菜乃葉」
後ろから声をかけられた。
私は肩を震わせた。
イアンが私を見ていた。
今更何をしに来たんだろう。
半年も私を放置していたくせに。
「半年も放置しておいて、今更何の用?イアン」
「菜乃葉……」
イアンは私に近づいて来た。
私は後ずさりした。
やめてよ。
来ないでよ。
「イアン、やっぱり言った方がいいよ。これ以上あなたたちの関係が崩れてくのを見るのは嫌だよ」
「菜乃葉、イアンは……」
「やめろ。いいんだ。まだ片付いてない問題がたくさんあるし。あんなこときた手前、どの面下げてって感じだよな」
イアンは私に背を向けて歩き出した。
一体何なんだろう。
でも……。
お姉ちゃんが私の背中をそっとさすってくれた。
「話も聞かずにあの態度はどうなんだ?」
いつの間にかいた伊吹がそう言ってイアンを追って行った。
オーリスや藤井くんは私を見ているだけだった。
「何だよあいつ。ナノハの婚約者なんだろ?半年も放置してたってマジかよ」
アルバートが言った。
みんながイアンと言っていることには気づいてないらしい。
私はアルバートの制服の裾を引っ張った。
「いいんだよ。どうせ、解消される婚約なんだし」
私は疲れたから寮に戻ることにした。
まだご飯を食べる気にはなれないからね。
あとで食べに行こう。
「あ、ごめんね。アルバート。また今度学食を一緒に食べよう」
「分かった」
私は寮に戻った。
「琴葉、いるんでしょ?」
私は魔法球に話しかけた。
すると、琴葉が映った。
「どうしたの?」
「今度は琴葉の過去を教えてよ」
「……やだ」
「私のは聞いたのに?」
「嫌なものは嫌だ」
どうしてそんなに嫌がるんだろう。
「どうして?」
「菜乃葉には関係ない」
関係ない?
じゃあ、どの口が親友とか言ってたんだろう。
「そう。じゃあいいよ」
私は魔法球に魔力を流すのをやめた。
分かってる。
これはただの八つ当たりだ。
そのせいでみんなみんな離れていく。
イアンも、琴葉も、伊吹も。
「菜乃葉……。苦しい……?」
ユアンが心配して言って来た。
「……分からない」
◇◆◇
私は翌日、隠し部屋に行った。
アルトにこの鍵を譲ってくれないかと頼んだところ、何の鍵か分からないしいいと言ってくれた。
つまりは、この鍵を持っているのは私とセシリアだけということだ。
「やっと二人で話せるね。セシリア」
私の目の前には半年前の大舞踏会で行方不明になったセシリアがいた。
みなさんこんにちは春咲菜花です!早くも二十二話!ここまで読んでくださる読者さんがいてくださることを願います!そしてその読者さんに感謝を!さて、今回はアルトの持つ鍵と菜乃葉の八つ当たりの話がを書かせていただきました!最後はセシリアの登場です!次回も楽しみにしておいてくださいね!良ければレビュー、リアクション、グット、ブクマ、感想ください!それでは次回お会いしましょう!




