第十八話 断罪の始まり
「今日は王太子殿下や聖女様もご出席されるらしいわよ」
「お話しできるといいけど……」
「今日はユリィ・セーリアも出席するらしいぞ」
「最近は妙に大人しかったよな」
「何か企んでいるのか?」
みんなが色々な会話をしている。
私はあっちで着たのと同じような水色のドレスを着て、お姉ちゃんと話している。
お姉ちゃんのドレスは薄いピンク色だ。
オーリスや伊吹もそろそろ来るはずだけど……。
「菜乃葉〜」
「あ、伊吹!オーリス!」
私が振り向いた先には伊吹とオーリスがいた。
伊吹は黒色のタキシードを着ている。
あっちで見た時と変わらない服を着ているオーリス。
こういうところは変わらないのか。
「それで?準備は出来たの?」
「ばっちし」
オーリスは親指を立てて言った。
あとはその時を待つだけ。
「みんな、おまたせ」
ユリィは私の着ているのと同じような色のドレスをまとっている。
うわぁ……。
美の暴力。
目が潰れそうだよ。
「変じゃないかな?」
「ううん。とっても似合ってるよ!」
不安そうなユリィに私は笑顔で言った。
そうだ、私ユリィに聞きたいことがあったんだ。
「ねぇユリィ。裏庭での騒ぎのことを覚えてる?」
「ええ。それがどうしたの?」
「あの時ユリィは何を思っていたの?」
「え?特に何も。悪役になりきらないとって思ってたけど……」
あれ?
私はオーリスを見た。
なんか言ってたことと違いますけど?
「あー、本当のこと言うと、お前やユリィが気に病むかなって思って……」
へへっと笑うオーリスに冷たい視線を送った。
オーリスは慌てて真面目な顔に戻って私に向き合った。
「その感情はおそらくユリィのものではなく、お前のものだ」
「……私の?」
「その体はユリィのものだったのだろう?ならば、そういう感情が渦巻いてもおかしくはない」
なるほど……。
つまり、あの感情はこの体が思ったことだったんだ。
「確かに私の中にも感情が流れてきたわ」
ユリィはそう言った。
つまり、一回目や二回目の人生のユリィの感情が現れているということか。
気に病むほどではないけどな。
そういうところが優しいんだよなぁ。
恋は盲目ってことか?
「王太子殿下がいらっしゃったぞ!」
「聖女様もご一緒よ!」
私達は弾かれたように振り向いた。
あれ?
イアンがいない?
てっきり一緒に来るのかと思ってた。
まぁいいや。
私達はイーベルとセシリアの方へ歩いて行った。
そして深々とお辞儀した。
「ご機嫌麗しゅう、王太子殿下、聖女セシリア様」
私は言った。
「よく来てくれたな、ユリィ、オーリス、ナノハ、ユリナ、イブキ。歓迎する」
「ありがたきお言葉。しかし……」
私は顔を上げて、口角を上げた。
それはユリィ達も同じだ。
悪役のように。
「そのお言葉が、大舞踏会終了時に言うことができますでしょうか?」
「何?」
眉をピクリと動かした王太子は、なにかやましいことがあるようにしか見えない。
「あなたはユリィ様の婚約者でありながら、婚約者をエスコートするべきこの夜会で、聖女様をエスコートしていらっしゃる。それは両家のご関係に亀裂を入れる行為です」
イーベルの顔はどんどん不機嫌そうになっていく。
セシリアはさっきから私だけを睨んでいる。
そうだよね。
自分が主役の世界を壊されているんだから、私を目の敵にするのは分かるよ。
でもね、私も君を許せないんだ。
ユリィをダシにして何度も何度も殺したことがね。
君はしてはいけないことをした。
その罪は、そこの愚かな王太子と償ってもらうよ。
予定調和を捻じ曲げましょう。
不協和音を奏でましょう。
さぁ、断罪の始まりだ。




