表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
幸せを追う悪女達  作者: 春咲菜花
第二章
42/70

第十三話   トラウマ

最近いないと思ったら、セシリアと親睦を深めていたのか。


「ナズナ……」


ユリィが心配したような声で言った。

イアンがどうしようと私には関係ない。

でも、なんだかモヤモヤするなぁ。

イアンはセシリアをエスコートしていた。

平民なのに、エスコートできるなんて知られたら大変じゃない?

まぁ、そこは指摘するか。


「イリヤ」

「……」

「どこでエスコートなんて覚えたの?見様見真似なら、セシリア様もご不快に思われるかもしれないし……」


私はイアンに手を伸ばした。


――パン!


イアンは私の手を乱暴に振り払った。


「イリ……」

「話しかけるな」

「……っ!」

「菜乃葉!大丈夫!?」


ユリィは私に駆け寄って、手を見た。

私の手は少し赤くなっている。


「イリヤ!乱暴しちゃだめだよ!」

「……そうだな」


どうしちゃったの?

イアン、どうしてそんな目をしているの?

イアンは私に冷たい視線を送っていた。


◇◆◇


「ってことなんだけど、何か知らない?」


私は放課後、オーリスとユリィと話していた。


「知らねぇな」


やっぱり知らないのか。

あんな顔、向けられたことなかったんだっけどな。

イアンは私が悪女と言われていたときも優しく接してくれた。


――何の用だ?悪女と呼ばれる善人。


あの時も私を信じてくれた。

なのに……。


「おい、陰気臭い空気を出すな。話があるんだろう?コイツらに」


オーリスが指を指した方向には、カイルとディーアがいた。

二人はイレギュラーの可能性がある。


「お二人の前世は?」


私がそう聞くと、二人は目を見開いた。

これは黒だな。


「僕は猫でした」


ディーアが口を開いた。

猫から転生するパターンもあるのか。


「野良?」

「ギリギリ野良でしたね」

「ギリギリって?」

「僕は学生に大切にされていましたから。縄張り争いに負けてしまって、死んでしまいましたけどね」


それはそれは。


――頑張ったねぇ……。


学生時代、私も猫を大切にしていたな。


「名前はあるの?」

(かえで)だったかな?猫の記憶力はかなり劣ってるから曖昧ですけど、瞳の色が紅葉と同じだかららしいです。まぁ、紅葉というものを、僕は俺か知らないんですけどね」


――わっ!びっくりした。白猫?

――お前の目は紅葉みたいだね。よし、名前は楓だ。

――かーえで!

――今日も最高に可愛いね!

――楓、ひっつき虫だらけじゃない。


偶然?

楓というのは、中学生の時に私に懐いていた猫の名前だ。


「学生の名前は……。分かる?」

「菜乃葉……。だったかな?」

「楓!」


私は楓に抱きついた。

楓は困惑している。


「私だよ、楓。山里菜乃葉だよ」

「僕を可愛がってくれた人?」

「そうだよ。幸せそうで良かった」


さて、感動的な再開は終わらせよう。

次はカイルだ。

賢者と呼ばれる彼の前世は一体……。


「山里、俺を覚えてるか?」

「……誰?姿変わってるから分からないよ」

「……」


何度言われたって分かるはずがない。

人の口調を覚えて判別できるほど人と話していない。

この人、知り合いだったんだ。

嫌だな。

何を言われるんだろう。


――気持ち悪い。

――姉の残りカス。


何度も言われたその言葉。

絶対に会ったことのない姉を褒め称える人達。

私を残りカスと蔑まれる毎日。

大学ではなんともなかったけど……。

高校は……。


「……っ!」

「菜乃葉!」


気持ち悪い。

お腹がグルグルする。

気持ち悪い、気持ち悪い。


「ユリィ、退け」

「あなたは……。誰?」


誰かの声が聞こえる。

遠くから聞こえてくる声。

苦しい、苦しい。

誰かが私の背中に手を添えた。


「菜乃葉、落ち着いて」


誰の声?

知らない人の声のはずなのに、落ち着く。

暖かい。

誰なんだろう。

私は落ち着いて、眠りそうになってしまった。


「お前は来ると思ってた」

「そりゃあ来るさ」

「安心した。それがお前の……」


私は限界が来て眠ってしまった。

陽だまりのような声。

懐かしい。


◇◆◇


「お嬢様ー!どこですかー?」


私を探す声が、面白くて仕方ない。


「どうしよう。今日のおやつはマシュマロの予定でしたのに、いらっしゃらないのであれば私が食べるしか……」

「だめー!!」


私は思わず隠れていた場所から出てしまった。

フッと笑った彼は、いつも優しい。

こうやって困らせても全然怒らない。

私が勉強が嫌で逃げ出しても、探してくれる。


「お嬢様、こちらにおいででしたか」

「こっちに来ないで」

「駄目ですよ。何をしでかすか分からないのに。……お嬢様、辛ければ私に言ってください。見ているだけで、何もできない無能にしないでください」


いつも優しい。

でも……。

いつからだろう。

彼の名前が思い出せなくなったのは。

唯斗と雪菜の葬儀を抜け出した車の中で、私は彼に何と言った?


ーあなた……。誰だったかしら?


分からない。

どうして忘れてしまったのか。

絶対に忘れちゃ駄目なはずなのに。


「それは全部ぜーんぶあなたのせい。あなた自身のせい」


小さい子の声?

私は振り向いた。

そこには小さい頃の私がいた。

前にもこんなことがあったような。


「あなたは誰?」

「私はあなた。必要がないあなたと同じ」

「私は必要ある。必要ない人なんていない」

「ないんだよ!必要とされたことなんてなかったでしょう?必要とされてると思い込んで、また裏切られる。もううんざりだよ」

「……あっ」


足場が崩れた。

落ちる……!

私の足場しか崩れていないようで、幼い私は私を見下ろしていた。


「まっ!」


私はどんどん下に落ちて行く。

幼い私はもう見えない。

伝えたいことがあるのに。

これじゃ届かない。


「また!また伝えに来るから!それまで待っててね!」


私はできる限り大きな声で言った。

それが私に届いたのかは分からない。

届いていたらいいな。


◇◆◇


私は目を開けた。

白い天井。


「ナズナさん、起きましたか?」


先生がカーテンを開けて入って来た。


「あれ……?私、みんなと話してて……」

「気を失ったのよ」


先生はベッドの端に座った。

オーリスが誰かが運んでくれたのかな?

はぁ、ユリィにも迷惑かけちゃったなぁ。


「うん、大丈夫そうね。大事をとって今日は寮に戻りなさい。しっかり休むことね」

「はい」


私は寮に戻った。

雪菜と唯斗は小説が出る前に死んでしまった。

楓もそうだ。

そもそも猫だから文字を読めないはず。

つまり、この三人は白。

となると、セシリアとカイルが怪しい。


「……」


――山里、俺を覚えてるか?


彼が誰なのかは分からない。

けど、高校か中学の同級生だということが分かる。

怖い。

私は高校では中学よりもひどい扱いを受けた。


「菜乃葉……。大丈夫……?」


ユアンが私を気にかけて手を握ってくれた。

心配させたいわけじゃない。

怖い。


「外の空気を吸ってくる。ごめんね、ユアン」


私はユアンを部屋に残して寮の屋上に出た。

屋上と言っても、二階までしかないから、見晴らしは良くないけどね。

風が気持ちいい。

誰かが屋上に転移してきた。


「何の用ですか?」

「……」


振り向くと、そこにはカイルがいた。

話したくない。

本当は今すぐ逃げ出したい。


「俺さ、謝りたくて……」

「何を?そもそも君は誰?」

「……俺は。藤井裕翔(ふじいゆうと)

みなさんごきげんよう春咲菜花です!今回は菜乃葉のトラウマが明かされましたね!そして、まだ明かされていない高校時代の扱い。次回からはそれを書こうと思っています。ちなみに今回出てきた、猫の楓は一章の番外編で出てきたキャラです!それにしても、この作品登場人物増えましたね(笑)これからも増えていくと思うので、どんなキャラが出てくるのか予想してみてください!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ