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幸せを追う悪女達  作者: 春咲菜花
第二章
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第三話    並列世界

私と琴葉達が話していると、教室のドアが乱暴に開かれた。

誰か来たのかな。

私はドアの方に目をやった。


「……っ!」


私は目を疑った。

そこには私がいた。

イアンは私の前に立ちふさがった。

いっくんも琴葉を庇うように立ちふさがった。


「楽しそうですわね。皆様」

「ユリィ・セーリア……!」


いっくんが憎らしそうに言った。

どうしてもう、悪役になってるの……?


「相変わらず、婚約者よりもその女を優先するのですわね」

「当然だ。聖女は守り、慈しまなければならない」

「そこに私情があるのではなくって?」

「……」


いっくんは……。

いえ、イーベルは黙った。


「菜乃葉」


イアンは小声で私に話しかけた。

私は頷いた。


「あれは私じゃない。そして、クラスの人達も過去とは違う。つまり……」


並列世界。

そんな言葉を私は思い出した。

世界が一本の木だとする。

木は枝分かれしている。

それと同じように世界も枝分かれしている。

その世界には誰かがいなかったり、それぞれが違う選択をしている。


「この世界は、私達のいた未来の過去じゃない」


でもどうして、並列世界に来てしまったのだろうか。

目の前で繰り広げられる、ユリィとイーベルの言い争いを黙ってみていたセシリアは、いきなりユリィ達の間に立った。


「二人共もうやめて!どうしていつもいつも喧嘩ばかりするの!仲良くしてよ!」

「『仲良くして』ですって……?全ての元凶のあなたがそれを言うの?愚かね」


ユリィはセシリアを叩いた。


「セシリア!」


ギディオンはセシリアの肩を抱き寄せて、ユリィを睨みつけた。

ユリィはギディオンを睨み返した。

周りは小声でユリィの陰口を言っている。


「どうしてイーベル殿下はあんな醜女と婚約しているのかしら」

「セシリア様はも、どうしてユリィ様を庇うのかしら」

「あんなクズ、さっさと処刑してしまえばいいに」


酷い言いようだ。

ユリィも同じ人間なのに。

ユリィの言う通り、この世界は狂ってる。

誰かが処刑されることをなんとも思わず、誰かが処刑されることを望んでる。

私の体は動いた。


「お、おい……」


イアンは私を止めようとした。

私はそれを振り払い、ユリィの前に立った。


「ナズナ、なぜそいつを庇う」

「私はユリィ様だけが間違っているとは思いません」

「どういうことだ?」

「イーベル殿下がユリィ様を蔑ろにしているのではないのですか?」

「あなた……」


ユリィの声が聞こえて振り返ると、目を見開いて私を見ていた。

私は微笑んで、イーベル達と向き合った。

イーベルは少し考えるような仕草をして、ユリィに頭を下げた。


「な、何をしていますの……?」

「謝罪をしなければと思って……。すまない、確かにナズナの言う通りお前を蔑ろにしていたかもしれない」


イーベルは小説内でも素直な性格をしている。

だから、本人も納得できる理屈を言えば、素直さを発揮してくれる。

私はそれにかけた。


「私はそういうことを気にしているわけではありません。王族が簡単に頭を下げないでくださいませ。私まで変な目で見られるではありませんか」


もうすでに変な目で見られていることに自覚がないのかな。


「もういいです」


ユリィは戸惑ったように言った。

しかし、私を憎むような顔はしていなかった。

それどころか、感謝されているような……。


「何あの態度」


周りがまた何か言い出した。


「庇ってもらったのに、あんな態度を取るなんて……」

「いくら相手が平民でも感謝は伝えるべきでは?」

「本当に最低」

「あの悪役令嬢が」

「流石悪役令嬢」


私達はユリィの印象を完全に何とかすることは出来ない。

でも、少しでも良くなるように善処しようと思う。


◇◆◇


「おい菜乃葉?俺は迂闊に動くなと言ったはずだが?」


私はイアンに問い詰められていた。

壁ドンで逃げ道を塞がれて。


「いやぁ……。それは……」

「あ?」


イアンは一見笑っている。

でも、よく見ると目が全く笑ってない。

怖すぎる。


「でもさ、よく考えてみて。私達がいた未来の過去じゃないってことは改変しても、未来は変わらないってことじゃない?」

「確かにな」

「ねぇ、ユリィを助けちゃダメかな?」


こんな時こそ上目遣いをする時だ。

イアンに効くかどうか分からないけど、やってみよう。

私はイアンを下から見上げた。

イアンはすぐに視線を逸らして、手を顔に当てた。


「……った?」

「え?」

「誰から教わったのかな?」


明らかに怒っている。

なぜかは分からない。

でも怒っていることは確かだ。


「琴葉です」


私はすぐさま親友を売った。

間違ってはいない。

前世で上目遣いを教えて来たのは琴葉だ。


「帰ったらシメる」


私はその時、生贄に差し出したのが琴葉だったことを後悔した。

いっくんにすれば良かった。


「で、いい?」

「俺達の未来が変わらないならいいんじゃないか?」

「やった!」

「本当にお人好しだよな」


だって、シナリオは琴葉が考えたものだけど、反対しなかったのは私だ。

人が死んだとしても、物語の中だ。

私には関係ない。

そう思っていた。

でも、ここではそんな物語の中でも、確かにみんな息をしている。

みんな生きている。

だから、できるだけ誰も死なせたくない。


「きゃぁぁぁあぁあ!」


叫び声が聞こえて、私達は瞬時に振り向いた。


「この声……。教室から……」

「行こう」


私はイアンの言葉に力強く頷いた。

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