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幸せを追う悪女達  作者: 春咲菜花
第一章
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第二十六話  涙の理由

「菜乃葉、二人は……。建物の崩壊から俺達を守って死んだ」

「……え?」

「すまない、俺のせいだ」


周りのみんなを見ても、気まずそうに目をそらす。

イアンやカイル達はさっきから俯いたままだ。

まさか……。

本当に死んでるの……?


「……だ」


私の目から大量の涙がこぼれた。


「嫌だ嫌だ嫌だ!どうして!?何で!?まだ何も言えてないのに!まだごめんねって言えてないのに!どうして……?どうして私を置いていくの……?」


とめどなく溢れる涙は、いっくんの体に滴っていく。


「起きてよ!ねぇ!起きてよ!」


あぁ、分かった。

あの時、琴葉がどんな気持ちだったのか。

頭の中では死んでいると分かっている。

でも、受け止めきれない。

分かっているけど、まだ生きていると、死んでいないと。

信じたいんだ。

もしかしたら、「平気だよ。大袈裟だよ」そう言って私の手を取ってくれるかも。

そんな風に思ってしまう私がいる。


――クシャッ。


ドレスの使ったことのないポケットから、紙が折れる音がした。

私はドレスのポケットに手を突っ込んだ。

小さく折られた紙を開くと、急いで書かれた日本語で


――大好き。


それだけが書かれていた。

それを見て、また涙が止まらなくなった。

紙に涙が落ちて、インクが滲んだ。


「こんなの……。こんなのずるいよ……」


私は紙を額に当てた。

止まらない涙は、床に落ちていく。

ここが現実ではなくてアニメの世界だったら、絆とかで二人は生き返ったりするんだろうな。

そしたら、「びっくりしたでしょ〜!」って思いっきり笑ってくれるのに。

目の前の二人は、動かない。

イアン達は、私をそっと見守っているだけだった。

何をするでもなく、そっとしておいてくれている。

後ろで何かが動く音がした。

ゆっくり振り返ると、ユアンが私を見ていた。

イアン達は剣を握って、いざという時のために構えてる。


「そんなに警戒しないで。僕はもう何もしないよ」


ユアンは私に近づいてきた。


「ごめんね。君の大切な人を殺してしまって」


ユアンは申し訳無さそうに言った。

そして、ユアンは異空間から謎の本を取り出した。

分厚いその本は見たことがない。


「君は。その二人を生き返らせることができる。そう言ったらどうする?」


私は目を見開いた。

生き返らせることができる……?


「おい……。貴様……。まさか禁呪を使うつもりか?」


さっきまで立ち尽くしていた人達の一人がそう言った。

それを聞いて、黙っていた人達が次々に口を開いた。


「禁呪を使ってまで生き返らせる事か?」

「第一、ギディオン殿下がいらっしゃるし、王位継承戦にならなくて済むというメリットのほうが大きいぞ」

「やはり見殺しにしたほうが……」

「黙れ!!」


私は気がついたら大きな声でそう叫んでいた。

ざわついていた舞踏会場は一瞬にして静まり返った。


「人が死ぬのを黙ってみているつもりですか?相手が大切な人でないから、見殺しにするなどと非道な言葉が出てくるのです!相手がご自分の大切な人だった場合をお考えください!みなさんは大切な人を生き返らせる事ができると言われたら先に、メリットを考えるのですか?王位継承戦が何だというのですか!王太子だって同じ人間です!心を持っています!それを否定するような言動は、いかがな物かと思います!なにか反論がある方は前へ。思う存分お相手いたしましょう!」


私がそう言うと、ざわつきは完全になくなった。

そして、誰も私の元へ来なかった。


「ユアン、やるわ。私は二人を生き返らせる」

「それでこそ菜乃葉だ。でもね、この禁呪を使うと君は死ぬよ?」

「え?」

「正確にはいつ目覚めるかわからない眠りにつく」


そうか。

人の命の代償だもんね。

それくらいあって当然だ。


「それと、一度に一人しか生き返らせることしかできないんだ。つまり、君はどちらかを……」

「その必要はない」


イアンが私の近くに歩いてきた。

いつもよりも意思のこもった真っ直ぐな瞳に吸い込まれてしまいそうになる。

イアンは私の顔を見て微笑んだ。


「俺の人生も捧げる」

「え?」

「俺は、お前のいない人生を生きるつもりはない」


うっわ、かっこいいセリフを言ってきた。


「いいですよね?母上」


イアンが視線を送った先には、イーリス様やお父様達がいた。


「あなたが本当にやりたいことを見つけてくれて、私は嬉しいわ。あなたが決めたことなら否定しないわ」


イーリス様はそう言った。

私のところには、お父様とお母様、お姉様とアエテルナがやってきた。

みんなは何も言わずに、私を抱きしめてくれた。


「お前のやりたいことをしなさい。何も心配しなくていい」


止まったはずの涙が、また溢れそうになった。


「ありがとうございます……」


私達はユアンに儀式の用意をしてもらった。

すぐにできた魔法陣の上に、いっくんと琴葉を寝転ばせた。


「ごめんね、今度こそ本当に、みんなと生きるのは無理になっちゃった……」

「菜乃葉」


ユアンが私のところに来た。


「僕、本当はずっと死にたかったんだ。ユリアンも妻も、信頼できる人も、みんな殺しちゃったから。罪悪感を抱えながら生きるのは辛かった。これで罪滅ぼしができるとは思ってない。失われたものは返ってこない。でも、君達が幸せになれるように僕も力を貸す」


ユアンは力強い瞳で言った。


「さぁ、始めるよ。二人共、呪文を唱えて」


私とイアンは一緒に本を持って、呪文を唱えた。

読み終わった途端、強い眠気に襲われた。

視界はぼやけ始めた。

イアンの方向を見ると、イアンがなにか言葉を発しようとしている。


「――」

「え……?」


そこで、私の意識は途切れた。


* * *


そして二人は眠りについた。

誰にも邪魔されない、長い長い眠りに。

みなさんこんにちは春咲菜花です!次の次が最終回です!早いですね!イアンが最後に菜乃葉に何を言ったのか気になりますか?気になりますよね!?次回のお楽しみですよ!次回は、語り手を変えようと思います。菜乃葉でも他の登場人物でもなく、第三者が語り始めます!最終回が終わったら、番外編も書こうと思っているので乞うご期待!それでは皆さん、第二十七話でお会いしましょう!

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