第二十三話 アスクレイン王国初代国王
「あたりかな?初代アスクレイン国王陛下?」
「何でそれを知っている?」
「お前の瞳、元々は金色だろう?魔王になったせいで金色の瞳がくすんだんだろう?」
「……」
ユアンは黙り込んだ。
初代国王は魔物堕ちした。
そんな伝説がこの国には存在している。
初代国王の名はユアン・デイス・アスクレイン。
この国を姉と共に立ち上げた人物だ。
いや、他国から独立したというべきか。
姉の名はユリアン・シャール・アスクレイン。
ユリアンこそがユアンを魔物堕ちするまで追い詰めた。
国王はユアンで、ユリアンはその姉という立場にあった。
国民からは崇められ、一緒に国を守ろうという約束を忘れられるほど、ユアンは忙しかった。
一人で国を守り、英雄と称えられた。
いつしか王妃も娶り、二人で国を支えだした。
ユアンはユリアンに政治に関する資料を渡すことはなくなった。
ユアンはユリアンに負担をかけないためにした行動なんだろう。
しかし、それがユリアンを追い詰めた。
やがて、ユリアンは敵国の王太子と恋仲になり、愛おしかった国を裏切った。
悲しみに暮れたユアンは禁呪に手を出した。
それは後に十人の命乞いと呼ばれるようになった。
それからどうなったかは、話が多くてどれが事実なのか確証はない。
ユリアンの恋人の王太子によって殺されたという話もあれば、魔物になったことを後悔して自害したという話もある。
その真実を知っているのはこの世界ではユアンだけだ。
「そうだよ。僕が初代国王だ。でも、元々の話だ。今はこの国に執着もないし、滅びようと僕には関係ない」
ユアンは切なそうな顔をした。
そんな顔をしているのに、お前はどうして滅びてもいいと言うんだ?
「初代国王の誇りを忘れたか?」
「誇り……?誇りなんてとっくの昔に捨てたよ!!裏切られたあの日に!あの瞬間に!ユリアンに愛していた王妃を殺された時に!」
ユアンの周囲から強い風が吹いた。
まずい。
魔力が不安定になっている。
「ユアン!落ち着け!」
「僕は何も悪くないのに!国を守ろうとしてただけなのに!」
ユアンの体からは魔力が溢れ出てきた。
魔力暴走になる。
そうなれば、王都は吹き飛ぶ。
◇◆◇
「でさ〜」
「え〜、マジ〜?」
今日も平和だなぁ。
「……は。菜乃葉!」
「うわぁあ!」
私はいきなり声をかけられて、驚いて椅子から転げ落ちた。
びっくりした。
私は椅子に座り直しながら、声をかけてきた人を確認した。
「何だいっくんか」
「何だじゃない。次の数学テストだぞ」
「え!?」
私は急いで後ろの黒板を確認をした。
「数学……。単元末テストぉ!?もっと早く言ってよ!」
いっくんに不満を言うと、不機嫌そうな顔をして私の額をでこピンした。
地味に痛いでこピンをしてきたいっくんは、イタズラをした子供みたいに笑った。
「誰が言うかよバーカ」
「うぅ……。ムッカつく!屋上の柵に登って足滑らせて落ちて死ね!」
「地味にリアルな表現!」
どうしてだろう。
いつもやっているはずのやり取りが、どこか懐かしく感じるのは。
私は立ち上がった。
いっくんは首を傾げた。
「トイレ」
「お、うんこか?」
「ほんっとにデリカシーがないね。そんなんだから彼女ができないんだよ?」
私は教室の後ろの扉を開けて、廊下に足を踏み出した。
足を地面に足をつけた瞬間、あたりが真っ暗になった。
「え?なにこれ?」
振り返ってもクラスメイトはいない。
歩いてみても、どこかにつながっている気配もない。
「何なのよ……」
いきなり目の前に扉が現れた。
まるで、アニメに出てくるかのような、お城の扉。
私は重い扉を開けた。
「図書館……?」
――バン!
突然聞こえた大きな音に肩を震わせた。
「どうしてユアンを殺す必要があるの!?」
この声……。
激しい怒りがこもった声が聞こえて、私は本棚の奥を覗いた。
思い……。
出した……。
私はもう菜乃葉じゃない。
ユリィ・セーリアなんだ……。
図書館には、ユリアンともう一人がいた。
二人に私の姿は見えていないようだ。
でも、どうして?
「アスクレイン王国は成り立ちが間違っているんだ」
「間違っているなら正せばいいじゃない!なにも弟を殺さなくても……」
「俺の頼みが聞けないのか?忘れるな。お前の生殺与奪を握っているのは俺だということを」
「……っ!」
ユリアンは悔しそうな顔をした。
アスクレイン王国の成り立ちが間違ってる?
ユアンを殺す?
ユリアンの生殺与奪を握っている?
意味がわからない。
「もう一度言うぞ、ユリアン・シャール・アスクレイン。ユアン・デイス・アスクレインとその王妃を殺せ。夜が明けたら戻れ」
「……え?」
突然強風が吹き、場所が変わった。
ここは……。
旧アスクレイン王国王城?
でも、まだ新しい。
「おい!しっかりしろ!」
誰かに語りかける男の声が聞こえた。
ユアンが女性の体を揺らしている。
その女性の胸元からは大量の血が出ていて、口から血が出ている。
「ユリアン!何のつもりだ!?」
「ユアン、お願い。死んで」
「どうして……。国を守るんじゃなかったのか!?」
「うるさい!!」
ユリアンが悔しそうな声でそう言った。
ユアンはなんとか逃げて、夜明けを迎えることができた。
しかし、ユリアンは去り際に言った。
「また明日」
また強風が吹き、場所は変わった。
「ここは城の居間……?」
あたりを見回すと、なにかの魔法陣の上に、九人の死体が転がっているのを見つけた。
悲惨なものに私は目を疑った。
「これは……」
「あなたも知っているでしょう?」
「……っ!」
誰かが通路から歩いてきた。
「これは、十人の命乞いよ」
「ユリアン……」
こんにちは!春咲菜花です!今回は、アスクレイン王国初代国王である、ユリアンがどうして魔物堕ちするのかがざっと話されましたね!そして最後に登場するユリアン!これからどうなっていくのでしょうか!
それよりも私、気づいたんですよ。他の作家さん、大体の方がブクマや高評価をあとがきで頼んでいることに。「やばい!こんだけの話数書いておきながら一話も頼んでない!!(笑)」と思いました。ということで、ブクマや高評価、感想をお待ちしています。感想にはお返事いたします!




