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幸せを追う悪女達  作者: 春咲菜花
第一章
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第二十話   大舞踏会

水色のドレスを着て、私は鏡の前に立っていた。

周りには顔をこわばらせたメイドがいる。

私の今までの行動ゆえだろう。


「お、終わりました」


メイドには手を出していないけど、アエテルナのことで少し怖がられている。

私はメイド達に微笑んだ。


「ありがとう。綺麗にできているわ」


メイド達はほっとしたような顔をして出て行った。

今日で挽回できるとは思ってないけど、できれば誤解だとみんなに伝えたいな。


「ユリィ、行ってくるね」


ユリィはあの日から目覚めていない。

魔力の使い過ぎか、気が抜けたからかは分からない。

私は部屋から出て馬車に乗った。

馬車の窓が叩かれて、ドアを開けるとお姉様がいた。


「私も乗っていいかな?」


お姉様は優しく微笑んだ。

私は目を疑った。

お姉ちゃんと似た笑い方。


「大丈夫ですよ。向かいにどうぞ」


私も微笑み返した。

お姉様は目を見開いて、少しだけ口を震わせて言った。


「菜乃葉?」

「……お姉ちゃん?」


お姉様は私に抱きついた。

その腕は少し震えていた。


「良かった。いつもの菜乃葉に戻ってる」

「ごめんね、お姉ちゃん。事情があって悪いことたくさんしちゃった」

「いいの。こうしてあなたが戻ってくれて、前世から不甲斐ない私を姉と言ってくれて。それだけで嬉しいの」


私達の再開はどこか静かで、でも暖かかった。

お姉様の転生者はお姉ちゃんだったんだ。


◇◆◇


「おい」

「……」

「おい菜乃葉」

「……」

「こっちを見ろ」

「……」


イアンが私に言ってきた。

私は王太子の婚約者だが、その婚約者に合わないようには逃げてきた。

気まずいんだもん。

琴葉にあんな事を言った手前、いっくんとも顔を合わせづらい。


「イアン、私を助けて」

「じゃあ、お前も俺に向けられる冷ややかな視線から助けろ。そもそも何で俺のところに避難してくるんだよ。イーベル殿下も異世界人……。それも親友だったんだろ?話くらいは……」

「しない」


イアンは複雑そうな表情をした。


『菜乃葉』


日本語が聞こえて、私は聞こえた方に目を向けた。


「柚木」

「イアンの前で言って大丈夫なのか?」

「大丈夫。全部知ってるから」


柚木は目を見開いて微笑んだ。


「良かった、いつもの菜乃葉だ。心配したんだぞ?」


柚木はすぐに私が演技をやめたのだと気づいたんだろう。

でも、周りの人は陰口を叩いている。

イアンが睨んで牽制しているけれど、それで収まる量じゃない。


「伊吹はどうした?」


柚木が私に聞いた。

私は思いっ切り目を逸らした。


「ほら、言っただろ?この舞踏会は婚約者にエスコートしてもらうものだから不審だと」

「あ、ごめんイアン。婚約者とか待ってるなら邪魔だよね」

「いない」


耳が悪くなったかもしれない。

婚約者がいない?

この人に?

この美形に?


「えぇ……」

「「菜乃葉」」

「ディーア、オーリス!」


ディーアとオーリスが話しかけてきた。

いつも会うときは、みんな制服だったからやっぱり新鮮だなぁ。


「おー、ドレス似合ってるな」

「ありがとう。みんなの正装は新鮮だね」


制服は異世界と同じようなデザインだ。

その上に、お腹のあたりまであるマントを着ている感じだ。


「さて、そろそろあいさつ回りに行こうかな」

「大丈夫なのか?ほら、お前の状況を知ってるのって俺とディーアとオーリスだけだからさ」


イアンが私の様子をうかがうようにそう言った。

気を使ってくれているんだろう。


「大丈夫、謝罪をして改めてよろしくみたいなことを言えばなんとかなるでしょ」

「そう簡単に行くか?」


◇◆◇


「……あー、何ていうか……。残念だったな……」

「……」


イアンが丁寧にオブラートに包んでくれた一言が、私にとっては凶器になるほど刺さった。

女子に近づいていくと、逃げられるかその人の婚約者が来る。

男子は親の敵かというほど睨んでくる。

流石に無理だったか。

信用が無いのは分かっていたけど、ここまでとは……。


「あっちだ!」

「絶対に逃がすなよ!」


私とイアンは顔を見合わせた。

さっきから警備隊が騒がしい。

こんな華やかな舞踏会に侵入者なんて物騒な。


「うわぁぁぁぁあ!!」

「あっはははは!」


警備隊の叫び声とともに聞こえてきた笑い声には聞き覚えがある。

その声の持ち主は、舞踏会場のドアをぶち壊して入ってきた。


「ごきげんよう紳士淑女のみなさん。僕の名前はユアン。君達を殺しに来たよ」


ユアンは人当たりの良さそうな顔をして、爆弾発言をした。

会場の人達はざわざわしている。


「あと二十人死んでくれないかな?」

「それで『はい分かりました』殺される者がいるか」

「おや?君は?」

「この国の第二王子のイーベル・アスクレインだ」


いっくんが階段から降りてきた。

いないと思ったら、王族の控室にいたのか。


「そっかそっか。君やギディオン、セシリアとリリアは殺さないよ。安心しなよ」

「……なぜ俺達は対象外なんだ?」

「もう殺したから」


私達転生組はもうユリィに殺されてる。

確かに同じ人を殺す意味はないもんね。

いっくんは不機嫌を隠しきれないほど、怖い顔をしている。

ユアンの背後から、王家専属の騎士が走ってきた。

それも二十人ほどだ。


「舞踏会をめちゃくちゃにしやがって!万死に値する!」


ユアンは不気味な笑みを浮かべて、騎士達を殺した。


「人数が満たされた」


ユアンが誰かを探すように、会場を見回した。

イアンがいきなり私の腕を引っ張って、近くのカーテンの中に隠れた。

その中にはユリィがいた。


「ユリィ、いつの間に……」

「菜乃葉、落ち着いて聞いてね。今ユアンが殺そうとしているのはあなたよ」


ユリィは深刻そうな表情でそう言った。


「イアンは十人の命乞いをしたいわけじゃないって言ってたでしょう?」

「聞こえてたの?」

「かろうじてね。ユアンの正体は……。魔王だ」

「え……?」

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