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幸せを追う悪女達  作者: 春咲菜花
第一章
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第二話    異世界転生

ん?

あれ?

目が覚めたら、知らない部屋に居た。

私死んだよね?

ていうか天井にぶら下がってるアレ、絶対シャンデリアだ。

手は小さいし、部屋の中の家具も全部高そう。

肩からたれている髪の毛は白色。

ベッドサイドのテーブルの上の鏡を取って顔を見た。

瞳は澄んだ青色。

この容姿……。

この流れ……。

あっ、察し……。


「ユリィ!!目が覚めたの!!」


はいもう確定〜。

私がデザインした物語の悪役令嬢〜。

ユリィ・セーリア〜。

これ終わったな。

ユリィ・セーリアは未来で殺される運命にある。

転生してそうそう絶望的な状態だ。

せめて顔が書かれていないモブとかが良かった!

はぁ、どうせ死ぬなら今死んだ方がマシだ。

私はベッドから降りて、窓の近くに歩いて行った。


「ユリィ?」


恐らく私のお父さんらしき人が私を呼んだ。

多分あの人は、悪役令嬢のお父さんのユーリ・セーリアだな。


「よいしょ」


窓を跨いで、外壁にわずかにある出っ張りに立った。


「ちょいちょいちょいちょい。何してんの何してんの」

「え?いや、ちょっくら自殺を……」

「そんな『ちょっとお散歩行ってくる〜』みたいなノリで公爵令嬢が自殺しないで」


すかさずツッコミが返ってきた。

お父様が、私の腰辺りに両手を回して、抱っこ方式で部屋に戻そうとした。

私は幼いながらの体で抵抗した。

両者、小刻みに震える。


「も〜ど〜れ〜」

「は〜な〜し〜て〜く〜だ〜さ〜い〜」

「自殺は良くないぞ。お父さん泣いちゃう」

「無表情で言われても、何の説得力もありませんよ」


無表情で淡々と言うそのセリフに、説得力もクソもない。

未だに震え続ける私達は、どちらも諦めようとしない。


「死なせてくださいよ。どうせ死ぬ運命なんですから」

「正気に戻れ。何があった?怖い夢でも見たのか?」

「それはもう胸糞悪い夢を」


嘘ではない。

親友の琴葉がキャラ設定して、私がイラストを描いたキャラクターが居る世界に転生した上、最終的に悪役になって死ぬキャラクターに転生したんだよ!?

死にたくもなるのも分かるでしょ!?

分かってくれるよね!?


「お父様、落ち着いてください」

「いやお前が落ち着け」


私は一度部屋の中に戻った。


「話をしましょう」

「元々そのつもりだったんだが……」


私とお父様は、部屋の中にある椅子に座った。


「窓に鉄格子でも付けるか?」

「やだ〜。物騒な事言わないでくださいよ〜」


私は笑いながら言った。

冗談にまともに返しても、意味無いだろう。

あれ?

私……。

今、笑えた?

この子、表情筋がまだ生きてるの?

やったぁ!

私、また笑えるんだ!

内心喜ぶ私はふと目の前のユーリさんを見た。

この人すっごい美形。

金髪青目って絵に描いたような、美形。

まぁ、描いたんだけどね。

わ・た・し・が。

キャラの髪色とかを考えたのは琴葉だけど、イラストを描いたのは私だ。

我ながらいい仕事をした。


「目が笑ってないぞユリィ」

「それは、お父様もそうではありませんか?」


笑っているように見えるだけマシか?

いや、私達は一見笑い合っている。

しかし、そこから滲み出る殺意に気づかない者は居ないだろう。


「失礼します。旦那様、お客様がお見……ひぃっ!」


ほらお父様。

メイドが怖がってますよ。

あなたの出す殺意のせいでは?


「誰だ?」

「王太子殿下です」

「通してくれ」


しばらくして部屋に入って来たのは少年だ。

この綺麗な黒髪、王家を表す金色の目。

間違いない。

イーベル・アスクレイン殿下だ。

ヒロインに恋をする予定の男性の一人だ。

というか、結ばれる予定の男性だ。


「ユリィ。目が覚めたのか」


イーベル様は笑顔で私に近づいてきた。

うっわぁ。

胡散臭い笑顔。

その笑顔の裏には何があるのか私は知っている。

イーベル様は笑っているが、その笑顔の裏には負の感情が隠れている。


「私は部屋を出る。後は若い二人でごゆっくり」


そう言ってお父様は部屋を出て行った。

待て待て。

何でそうなるのか。

私とこの胡散臭い笑顔を貼り付けているイーベル様が、相思相愛だとでも思っているのか?


「……」

「……」


きっ……。

気まずいよぉぉぉぉぉお!

どうすんのコレ!

何話せばいいのコレぇぇぇぇえ!


「で……。殿下。申し訳ありません。この様な姿で……」

「大丈夫だ。君は病み上がりだからな」

「……」

「……」


終わっちゃったよぉぉぉぉぉお!

どうすんの!?

何が正解!?


「ち……調子はどうだ?」

「かなり良くなりました……」

「……」

「……」


イーベル様!

貴方それ普通にしているつもりなんですかね!?

すっごい目が泳ぎまくってますよ!?


「その……。何だ……?熱を出して寝込んでから、雰囲気が柔らかくなったな」


どうやら本物のユリィ・セーリアは熱を出して寝込んでいたらしい。

雰囲気が柔らかくなった……か。

恐らく今のユリィは6歳だ。

本物はさぞ傲岸不遜な性格だったのだろう。

というか、これからこの王子を納得させる言い訳を考えないとな。


「……怖い夢を見たんです」

「怖い夢?」


もう面倒だし、この設定で良いや。


「はい。私が今まで通り我儘ばかり言っていたら死ぬ。すなわち予知夢です。私は大切で、大好きな人に殺されます。そんなのは絶対に嫌です。だから心を入れ替えて、頑張ろうかと……」

「それは本物の予知夢なのか?」


本物……。

ではないだろう。

前世の記憶なだけで、予知夢ではない。

でも、説明が面倒だし信じてもらえないだろうからパス。


「確信はありません……。でも、このままじゃダメだと思ったんです。心が変われば、見える世界も変わる。私は我儘を言わず、人に優しくして見える世界を見てみたかったんです。……だから殿下も、その胡散臭い笑顔を捨てても良いですよ」


私はにっこり笑って、イーベル様を見た。

イーベル様は顔をひきつらせて言った。


「……いつから気づいていた?」

「さっき顔を合わせた時から。今まで私の尻に敷かれたフリをしていたのでしょう?王族教育の言いつけを守って」


そう、イーベル・アスクレインは完璧でいることを強いられていた。

王子は完璧でなければならない。

負の感情を表に出してはならない。

そんなクソみたいな言いつけを守り続けるため、イーベル様は自分らしさを捨てた。

後に、そんなことをする必要はなかった事を知る。

イーベル様の家庭教師の理想の王太子像を押し付けられただけだった。

でも、しばらくと言っても長過ぎる。

それが明かされるのは、物語の中盤だ。

あまりにも長過ぎる。


「殿下。貴方の人生は貴方のものです」

「分かっているし、当たり前だ。何を言っている」

「いいえ!貴方はなぁんにも分かってなぁい!」

「なぁんだってぇ!?」


怪訝そうに顔を歪めるイーベル様は、本当に何も分かっていない。

前世の子供の頃の私のように。

ていうかノリ良いなこの王子。


「殿下は分かっていると言いました。ですが、人の言いつけを守り続け、自分らしさを捨てることが、自分の意志で人生を歩んでいると言えるのですか?」

「……っ!」

「私はそうは思えません。人生というのは、自分で考え、自分の意志で歩んで初めて、自分の人生だと言えるのです。今の殿下はどうですか?敷かれたレールの上を歩き、自分ではない他人が決めた道を歩いているだけでしょう?自分らしさを捨ててまで」

「……」


その後、イーベル様は気分が悪くなったと言って帰った。

私は自分の部屋のベッドにうつ伏せで寝転んだ。

そして、久しぶりに家族……。

ほとんど他人の人達の事を思い出した。

いい意味ではない。

勝手に私が歩く道を決めていたところが同じだと思ったからだ。

そういえば、命が絶える最後まで、私は両親の事を思い出さなかったな。

はい、二話にして出てきました王太子殿下〜!はい、どうもこんにちは春咲菜花です(笑)。ちょっと最近ノリが現実の私に似てきた気がするんですけれども(笑)。「異世界系すごいなぁ」と思いました。もうね、どんどんネタが出てきます!良いことですね!今日中に三話を出せるかもしれません!頑張ります!また次のエピソードでお会いしましょう!

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