第十七話 話が分かる協力者
「ユリィ・セーリア?」
「ジゼルが?」
カイルとディーアが私をまじまじと見ている。
流石に言い逃れできないか。
私は変装の魔法を解いた。
金色の髪は白色になり、赤色の瞳は青色になった。
カイルとディーアは目を見開いて私を見た。
イアンは呆れたように空を仰いだ。
オーリスに驚いている気配はない。
「どうして分かったんですか?」
「魔法を使っていることには最初から気づいていたさ。確信に変わったのはお前が歩いたとき。歩幅がユリィ・セーリアと同じだったからな」
「流石暗殺者ね」
「なんだ、俺のことも気づいていたのか。ちなみに、お前がこの世界の人間じゃないことも知っているぞ」
私は流石に驚いた。
歩幅とかが分かるのは暗殺者だから納得できる。
しかし、私が異世界人だと分かるのはおかしい。
「……魂を見るスキルでもあるの?」
「正解だ。お前はこの世界の人間の魂とは違う気がする。澄んだ色をしている」
正解だった。
スキルとは、生まれつき備わっているその人にしか使えない魔法だ。
神に認められた者だけが持つと言われているが、体質や魔力量も関係しているのではないかとも言われている。
「待て!何でユリィ・セーリアがジゼルになってるんだ!?」
「魔法」
「んなもん分かっとるわ!」
「人には言えない理由があるんですよ」
ディーアはどうやら頭が追いついていないらしい。
カイルは先程から何かを考えている。
「ちなみにこの人、こっちが素だ」
「え、いつものあれは?」
「演技」
「もう役者になれよ!!」
久しぶりにこんなにツッコミのキレがいい人と話したな。
最近はいっくんともお父様とも会話をしなくなってから。
「で、お前の名前は」
オーリスは私に聞いた。
「何言ってんだよ、オーリス。ユリィ・セーリアだろ?」
「違います」
「は!?」
どうやら精霊の愛子は頭が悪いらしい。
多分ツッコミだけが取り柄のやつ。
「前世の名前は山里菜乃葉です」
「そっちかよ」
カイルはさっきから黙ったままだ。
そして、ようやく顔を上げて私を見た。
「君さぁ、誰かに脅されているの?」
「え?」
カイルは私に問いかけた。
「君が悪役を演じる理由って、それくらいしかなくない?自分が壊したものを全く別人に変装してまで治す善人が悪役を演じるのってそれくらいしかなくない?誰かを助けるために動いているんだろう?」
驚いた。
そこまで考えられるなんて。
賢者を侮っていた。
「君達が阻止しようとしているのは十人の命乞いかな?」
「そこまで分かるの!?」
「賢者の称号を持つ僕と騎士であるイアン、精霊の愛子のディーア。あと、話の流れからして暗殺者のオーリスを狙うとか、それくらいしかなくない?」
イアンは引き気味だ。
おそらく、十人の命乞いの話は一切していないんだろう。
それなのにここまで推測するって……。
「え?何?十人の命乞いって何!?」
ディーアは戸惑っている。
オーリスは十人の命乞いについて知っているのか、少し複雑な表情をしている。
「話が通じたようで良かった。イアンが殺されるのは今日。そこで、これから命を狙われる可能性があるけど、能力が高いあなた達にお願いがあるの。今日、私と一緒にイアンの屋敷で待ち伏せをしてほしいの」
「は!?俺達の命を捧げろって言うのか!?」
「お前はバカか。僕達の力を借りたいんだろう?でも、失敗すれば……」
カイルが私の顔を見た。
そう、失敗すれば四人は死ぬ。
そのリスクを考えると、私一人でやるべきなんだろう。
でも、私は魔力も剣術もみんなよりも劣ってる。
頭脳でSクラスにいるカイン、暗殺技術でSクラスにいるオーリス、剣術はそこそこ高いけど魔力が全くないからBクラスにいるイアン。
全員揃ったら強いと判断した。
「リスクはある。けど、私一人じゃイアンを助けられない。ユリィを止めれない。だから、協力してほしいの」
私は頭を下げた。
協力がないとイアンを助けられないし、ユリィと会話もできない。
「分かった」
「弟も助けられたし……」
「もちろん手を貸そう」
ディーアは少し嫌そうな顔をしたけど、みんなは強い目で頷いた。
イアンを助けたい。
ユリィと話をしたい。
ちゃんと話をしたい。
私はもう夕方になっていることに気づいた。
ユリィ、あなたは何のために殺した人の体に異世界人の魂を入れたの?
これは、十人の命乞いに関係していない行動だよね。
どうしてなの?
私は空を見た。
オレンジ色の空は、もうすぐ夜だと言っているように見えた。




