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幸せを追う悪女達  作者: 春咲菜花
第一章
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第十四話   本当の私を見ていた人

「山里菜乃葉はずっと誰にとっても邪魔者でした。誰からも愛されないのに、愛を求めてしまう愚か者でした。彼女はいつしか未来を見なくなりました。信じなくなりました。しかし彼女は諦めませんでした。いつか離れて行った友達も戻ってきてくれると。そんな浅はかな希望を信じていました。結局、離れて行った友達も戻ってこないで親友だろうと思い込んでいた少女を庇って死にました」

「あなたは……?」


目の前には高校生の頃の私がいた。

高校生の私は冷たい視線を私に向けて、立ち上がって走り始めた。


「待って!」


高校生の私はどこからか現れたドアを開けて、中に入っていった。

閉じそうになったドアを掴んで、私も中に入った。

中には、いっくんや琴葉達がいた。


「お前さ、何様なの?」

「いっくん……?」


いっくんがそんな事言うはずない。


「琴葉を傷つけてどういうつもりだって聞いてんだよ」

「やめて……!私は……!私は……」

「は?お前がやったことなのに、被害者面するのか?意味わかんねぇ」


いっくんは私に蔑むような視線を向けた。

気がつくと、周りには学園のクラスメイトや琴葉達がいた。


「お前は敵、お前は敵」

「許されない、許されない」


みんなが口々に言う。

やめて。

もうやめて。


「謝るから!もう許して!」


私がしゃがみ込むと、声は聞こえなくなった。


「やっぱり自分勝手」


幼い私が私を見ていた。

その目には明確な悪意があった。

どうして幼い私がいるのか分からない。


「あなたは謝っちゃ駄目なんでしょ?なのに『謝るから許して』なんて。許されないないことをしたのはあなたじゃない」

「……」

「あなたは私が嫌い?」

「……」

「私もあなたが嫌い」


◇◆◇


『……のは。菜乃葉』


私は目を開けた。

目の前にはユリィがいた。

あれ……?

私……。

あ、ユリィに泣きついてそのまま寝ちゃったんだ。


『大丈夫?うなされてたけど』

「大丈夫。ごめん、イアンに会えなかった」

『明日は学園が休みでしょう?イアンの家に行って話をしてくるのはどう?』

「そうする」

『ごめんなさいね。私はこれから一週間くらい用事があって来れないの。任せたわよ』


私は旧校舎から出て、家に帰った。

もうすっかり夜になっていた。

お母様たち、心配してるだろうなぁ。

馬車に揺られながらそんなことを考えていた。

家につくなり、お母様たちが走ってきた。


「ユリィ!どこに行ってたの!?怪我はない!?」

「遅くに帰ってくるから、みんな心配したんだぞ」


お母様とお父様がそう言ってきた。

「ごめんなさい」って言えないのが悔しい。

言いたいのに私は言えない。


「私がどこへ行こうと関係ないでしょう?邪魔です。退いてください」

「ユリィ……!」


お母様の悲しそうな声が私を呼んだ。

私は気にせずに屋敷に入ろうとした。

お父様の横を通りかかろうとしたとき、お父様が私の正面に歩いてきた。


「いい加減にしろ!」


お父様は私を怒鳴りつけた。

周りの使用人は驚いたような顔をして、肩を震わせた。

お父様が怒ることは滅多にない。

だから驚いたのだろう。


「お前は人の気遣いも知らずに……!最近はずっとそんな様子だな。改心したのではなかったのか!?」


私はお父様の横を通って部屋に戻った。

お父様がどんな顔をしていたのかは分からない。


◇◆◇


翌日、私はグリーファ家に来ていた。

イアン・グリーファに会うためだ。

ここで悪女を装うつもりはない。


「ユリィちゃん!久しぶりね!元気にしてた?」


イーリス様は私の家庭教師をしてくれていた方だ。

ファミリーネームでわかると思うが、イアンの母親だ。


「今日はどうしたの?」

「イアン様にお話があって。人払いもお願いしたいのですが」

「任せて!」


イーリス様に頼んだのは正解だったな。

すぐにイアンの部屋に連れて行ってくれて、人払いも済ませてくれた。

イアンは少し嫌そうな顔をしていたけれどやむを得ない。


「何の用だ?悪女と呼ばれる善人」

「やはりお気づきでしたか。あの日、旧校舎にいたのはあなたですね?」

「何で知ってんだよ。やばお前。騎士になれよ」


サラッとディスられて、サラッと騎士に勧誘された。

旧校舎に誰かいるなとは思ってたけど、目が覚めたときに分かった。

だって、上の階の踊り場にイーリス様と同じ紺色の髪が見えた。

イアンはイーリス様を男性にした姿と言ってもいいほど、イーリス様に似ている。

エメラルドグリーンの瞳も全く同じだ。


「本題に入ります。単刀直入に言うと、私はユリィ・セーリアではありません」

「だろうな。噂とだいぶ違うからな」


話が早いな。

察しが良い設定だったけど、ここまでとは。


「私は異世界から来ました」

「異世界?」

「この世界とは全く違う世界です。そこから、私の魂はやってきました」


イアンは少し考えて、私をまじまじと見た。


「……魂の転移?」

「そんな感じです」


イアンはまた考える仕草をした。

流石に直球過ぎたかな?

もうちょっと変化球にしたほうがよかった?


「本物のユリィはどうした?」

「その話がしたいんです」

「は?」

「私がこの世界に魂だけ転移してきたのは、意図的なものだと思われます。ユリィは今、魂のたまり場と呼ばれる場所にいます。私はそこへ何度も行って、ユリィと話しています。そこでユリィは口にしました。『私は殺された』と」

「はぁ?」


イアンは頭が話について行っていないようだ。

信じられないというような顔をしながら、なんとか話に追いつこうとしている。

信じられないのも無理ないだろうな。


「つまり、ユリィが死んだから君がこの世界に来たのか?」

「はい。他にもユリィと同じように殺されて、異世界から魂だけ転移してきた人は何人かいます。そして、次狙われるかもしれないのはあなたです」

「……俺が殺される?」


イアンはいきなり殺されると言われたことに驚いている。

そして疑問がいくつかあるらしい。


「犯人は?」

「知りません」

「何で俺が狙われる?」

「知りません」

「……」


呆れたように顔を覆ったイアンは大きなため息をついた。

私も質問に答えられないのは申し訳ないと思っている。

あれ?

ん?

何か、頭に響いてくるな。

この声って……。

少年?

私の頭に誰かと会話する少年の声が聞こえてきた。

少年が魔法の呪文を間違えたのか?


「おい、急に黙ってどうし……」

「静かにして」


イアンが喋ると聞こえないでしょ。


『この後どうするんだっけ?』

『しっかりしてよ。三日後に計画を決行するんだから』


少年とユリアンの声……?


『そろそろあの子も来るでしょう?早めに準備するわよ。ユアン』

『分かってるよ。アイツに怒られるのはもう嫌だからな』


ユアン?

少年の名前かな?

私はもう少し話を聞くことにした。


『ここをこうして……。よし。できた』

『ユアン、来たわよ』

『遅れてごめん』


え……?

この声って……。


『遅かったわね。ユリィ』


どうして……。

ユリィが少年と会っているの……?

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