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幸せを追う悪女達  作者: 春咲菜花
第一章
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第十三話   隠したはずの本音

『菜乃葉、落ち着いて』

「落ち着けるか!」


私は正直テンパっていた。

狭間から出てこられたの!?

体が少し透けてるから幽霊?

わかんないよぉ!


「え?え?どういう事!?え?えぇ?」

『もう、菜乃葉!落ち着いて!』


ユリィが私の頬を両手で叩いた。

痛い。

夢じゃない。

なんなら、幽霊なのに私に触れてる。

何で?


『私がこっちに戻ってきたのは、理由がある。あなたの様子を見てくれって頼まれたの』

「だ、誰に?」

『ユリアンよ』

「へぁ?」


ユリアン?

聞いたことがない。

多分物語にもいなかった。

一体誰のことなんだろう。


「私のことだね」


ベランダに銀髪と金目を持つ少女が現れた。

そういえば、少年も金よりの瞳だったな。

どことなく二人は似ていた。

あれ?

この国では金色が王家の証じゃなかったっけ?

まぁいいや。


「私の名前はユリアン。呼び捨てで構わないわ。私はなぜか異世界の狭間に干渉できる人間だよ。よろしくね」

「あ、はい。よろしくお願いします」


ユリアンは私に微笑んだ。

その表情には何か他の感情があるように見えた。


『ところで菜乃葉。学園は?』

「あ!やばい!」


私は急いで制服に着替えた。

微笑みながら私を見るユリィ達は楽しそうだ。


「いってきます!!」


私は急いで部屋を出た。


「そそっかしいくて無邪気な子ね」

『あんなんでも、前世ではずっと悲しい思いをしていたのよね』

「報われてほしいけど、無理だろうね」

『何の話?』

「なんでもない」


◇◆◇


私は門の前で立ち止まっていた。

本当は行きたくない。

もうみんなを傷つけるのは嫌だ。

みんなのためでも嫌なんだ。

人を傷つけるのは。


『菜乃葉?行かないの?』

「行くよ。でもね、ちょっと行きたくない。ごめんね。ユリィの評判下げちゃって」

『いいよ。もうあなたの体だもの』


私は門をくぐって、学園内に入った。

周りを歩いている人は少し私から距離を取った。

いつものことだ。

いつものこと。


『菜乃葉、大丈夫。一人じゃないから』


ユリィは私の手を優しく握り、微笑みかけてきた。

誰かが横にいるだけで、喜びを感じてしまう。

教室について、ドアを開けるとクラスメイトが私を見た。

いや、睨んだと言ったほうが良いだろうか。

どうしたんだろう。

いつもは空気みたいに扱ってくるのに。


「ユリィ嬢!これはどういうことだ!」


一人の男子生徒が私にそう言った。

男子生徒が指を指している方を見ると、破られた教科書があった。

しかし私には心当たりがない。

一体誰がこんなことを……。

持ち主は誰だろう。


「存じ上げません。その持ち主の方の自作自演ではなくって?持ち主はどなたですの?」

「セシリア嬢だ」


え……?

琴葉が?

琴葉は私を複雑な表情で見ていた。

琴葉は自作自演をすることはしない。

じゃあ、本当に誰かにやられたってことになる。


『菜乃葉、これって……』

「私じゃない。もし私がやってたら、少年がなんとかしてくれているはずだから」

『少年?』

『僕が君の手助けをしてあげたんだよ。感謝してほしいくらいだね』


少年の声が聞こえた。

少年はいつもテレパシーで私に話しかけてくる。

今まで私に何か命じてきていたのに……。

少年の声はユリィには聞こえていないようだった。


『君さぁ、悪役になればいいって問題じゃないんだよ。確かに僕は君に悪役になれと言った。そして君が事を起こした後、君に手を貸すという約束もした。でも、セシリアをいじめないなら話は別だよ。セシリアをいじめないなら、僕は約束は守らない』

「……っ」

『さぁ、悪役になりなよ。人に嫌われなよ。琴葉に嫌われなよ』


涙が出そうになるのを必死にこらえた。


「言いがかりはよしてくださいます?」


これでいい。

これでいいんだ。


「私がやったという証拠はありますの?」

「早朝にお前の姿を見たという生徒がいる!誰もいない時間を狙ってセシリア嬢の教科書を破ったんだろう!」


少年ったら、意外と念入りにアリバイを作っているんだね。

逃げ道はない。


「ふふっ……。あっははははは!」

「何がおかしい!」

「そうよ!私がやったのよ!なにか文句でもある?」


これが正しい。

否定することなんて、誰も望んでない。

これでいい。

私が悪者になればみんな幸せになれる。


「そいつが善人で私が悪者?そんな茶番があってたまりますか!その偽善で綺麗事と理想しか言わないあなたが、いつも嫌いだったわ!幼馴染だなんて思われることが恥よ!」

「どうして……?どうしてそこまで言われないといけないの?ずっと昔から一緒にいたのに!一緒に笑い合っていたのに!」

「私があなたと本気で笑い合うとでも?大嫌いなあなたが不幸のどん底に落ちる瞬間がずっと見たかったわ!あーあ、おもしろい。あなたなんかが幸せになれるわけがないのよ!せいぜい不幸になって、私のお茶のつまみになることをありがたいと思いなさい。それでは」


これでいい。

これでいいんだ。

もういいんだ。

惨めに幸せになりたいなんて、叶わない理想を口にするのはやめよう。

私は人気のない旧校舎に行った。

ここなら誰も来ない。

ここなら落ち着ける。


『菜乃葉、あの子はあなたの親友じゃないの?』

「親友だよ」

『どうしてあんな事を?』

「ごめん、言えない」


ユリィは私を慰めるような声で話しかけてきた。

私は俯いていて、ユリィは私を心配している。


『大丈夫?』

「だい……。じょうぶ……」

『大丈夫なわけ無いでしょう!」


ユリィは私を怒鳴りつけた。

それは心配ゆえだろうか。


『菜乃葉、私に本当の気持ちを話してくれていいのよ?ここには誰も来ない。泣いたって誰も気づかないでしょうね』


ユリィは私を抱きしめて、優しい声で言った。

それが私が心の奥深くにしまい込んだ気持ちを引っ張り出した。

私は、防音魔法を旧校舎にかけた。

そして、今まで我慢していた分の涙が溢れた。


「本当は……。本当はみんなに嫌われるなんて嫌だった!みんなに意地悪するのは嫌だった!でもそうしないと……!誰かが不幸になるんだもん!私だって本当は琴葉と!いっくんと!柚木と!みんなと一緒に笑い合いたかった!幸せになりたかった!人に嫌われるのが平気なわけじゃない!平気になんてなれない!前世から色んな人に疎まれていても慣れることなんてない!私だって幸せに……!笑顔になりたい!でも、誰かにこの役割を押し付けて自分だけ幸せになるなんて嫌なんだ!嫌なんだよ……。幸せに……。なりたいよ……」

『でも、あなたは結局はみんなの笑顔を守っているじゃない』


私にフォローを入れるように言った。


「守ってない……。守れてないよ……」

『いいえ。ジゼルはあなたでしょう?あなたが誰かの魔法でジゼルになって、自分が壊したものを、ほとんど新品に戻るまで魔法をかけていたことを私は見ていた。みんな結局笑顔になっているじゃない』


そこまで知っていたんだ。

私と少年の約束というのはこれだ。

私が人のものを壊したり、人を傷つけたら姿を変えてほしいというもの。

これで私は姿を変えて、壊したものを直したり、傷つけた人のフォローをした。


「でも、一度は傷つけた……。悲しませた……」

『傷つけたままにするよりかはマシよ。あなたの優しさがあなたを追い詰めているのね。その気持ちを隠さないで、これからは私に相談してね。楽に慣れるから』


ユリィは私の額に人差し指を当てた。

その瞬間、ひどい眠気に襲われた私はその場で眠ってしまった。


『イアンのことはまた今度でいいわ。今はただ、休みなさい』

「最近ずっとシリアスだなぁ」と思うけど何もしない春咲菜花です(笑)。さて、今回はなぜか自室に居たユリィの事情を把握したり、少年が勝手にセシリアの教科書を破ったり、菜乃葉がユリィに本音を打ち明けたり、ジゼルの正体がユリィだったことが発覚したりと盛りだくさんでした!いやぁ、なかなかシリアスな展開ですね(笑)。そして、早くも十三話ですよ。早いですね。それでは第十四話でお会いしましょう!

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