第十二話 森での実習
「今日は森で実習を行います。前回の授業でやった魔石が評価基準になります。魔石は魔物を倒す、精霊から貰っても良いです。森には危険な魔物もいます。対処不能だと感じれば、すぐに魔法を空に放ってください。それでは、実習スタート」
先生がそう言った。
すぐに班を作る人がたくさんいた。
私はすぐに走って、魔物の大群を探した。
「いた」
私は自分の持つ剣を握り、鞘から出した。
「お命、頂戴いたします」
そして、魔物を殲滅した。
私の羽織っていた学園の生徒を意味するマントは、返り血で赤くなった。
帰ったら洗いに出さないと。
私は魔石を拾い始めた。
今頃、琴葉達は友達と一緒に魔物狩りしてるのかな?
「ユリィ!」
背後から声が聞こえて、私は振り返った。
そこにはいっくんがいた。
「一緒に魔物を……。ってもうこんなに殺したのか?」
「……何の用ですか?」
「婚約者と組もうと思って。っておぉい!何逃げようとしてんだよ」
「してません」
私はしばらくいっくんに付きまとわれた。
なんとか撒いたと思ったら、どこからか悲鳴が聞こえてきた。
『助けに行くの?』
「うん」
私は走って悲鳴が聞こえた方向に行った。
そこには大きな魔物がいた。
魔物は男子生徒を捕まえている。
あれって、危険な魔物だったはず。
しかも人食い。
「やめてくれ!助けてくれ!」
先生も馬鹿だな。
魔法は落ち着いていないと使えないのに。
私は木に隠れたまま出ていかないでいた。
まだ誰かが助けに行くかもしれないと。
でも、時間がない。
もう捕まった男子生徒は魔物に食われそうになっている。
仕方ない。
* * *
金髪と赤く染まったマントがなびく。
魔物に捕まっている男子生徒を見て、すぐに走って行くその姿は戦妃とも言えるだろう。
少女は魔物の腕を切り、男子生徒を横抱きで抱きとめた。
「ジゼル……?」
「ご無事で何よりです。もう安心してください。あの魔物は私が倒します」
ジゼルの声に安心して力が抜けた男子生徒を、ジゼルは魔物から少し離れたところに降ろした。
「君はしてはいけないことをしたんだ。制裁を受けてね」
ジゼルは魔物に優しく声をかけてから地面を蹴って、宙に飛んだ。
そして魔物を優しい太刀で切った。
「天使……」
「女神……」
物陰に隠れていた複数の生徒たちが口々に言った。
着地したジゼルを沢山の生徒たちが囲んだ。
ジゼルは戸惑っている。
「ありがとうございます!助けてもらって!」
「ジゼルさん!握手してください!」
「ジゼル、僕の名前を呼んでくれないか?」
「えっと、その……」
何かを言おうとしているジゼルの声は、生徒たちに届いていないようだった。
ジゼルが困り果てたとき、生徒たちを止めに入る声が聞こえた。
「何をしている」
「い、イーベル殿下……」
「その子、困っているじゃない」
「セシリア様……」
セシリアとイーベルが来たことにより、ジゼルを取り囲んでいた生徒たちはジゼルから離れた。
「ありがとうございます」
「困っていたんだろう?ん?君は……」
「それでは、失礼いたします」
ジゼルはまた姿を消した。
生徒たちはいつもいきなり姿を消すジゼルが不思議で仕方ない。
「見たことがない生徒だな」
「イーベル殿下は知らないの?最近噂のジゼルっていう天使らしいよ」
「天使……。か」
「何?」
「確かに美人だったなと思って」
「あなた婚約者いるよね?」
「いるけど……。さっき振られた」
さて、どうやら魔物も死んだらしいし私は退散しますか。
みんなから慕われるジゼル。
みんなから疎まれる私。
正反対だ。
この間まで私も、みんなと仲良くしてたのに。
「魔物の気配……」
私はまた走って魔物の大群の中に突撃した。
魔石を拾い終わったときに、丁度実習終了の笛がなった。
全員が広場に集まってきた。
そして、魔石の収集をして順位発表になった。
「ということで、魔石が一番多かったのはユリィさんです」
先生が私の評価を言った。
三位から一位までの評価を発表する場。
さっきまで歓声や拍手が鳴っていたのに、私になったときに鳴り止んだ。
辛いけど、自業自得だ。
『なにか言ってやりなよ』
また体が軽くなった。
少年の声で、私の体はいつも軽くなる。
どうしてだろう。
その後、私はクラスメイトを口汚く罵った。
琴葉もお姉様もアエテルナも私を冷たい目で見ていた。
もう、私に居場所はないと言わんばかりに、私はみんなから冷たい視線を受けた。
「……聖女はどうするの?聖女の運命は流石に変えれないでしょう?」
「ねぇ、覚えてる?聖女が覚醒するキッカケ」
「本当に愛する者の死……。だっけ?」
「そう。つまりはあの子を殺せば良いんだよ」
「舞台が整うまでもうちょっとあるわね」
「楽しみだ」
◇◆◇
「あなたねぇ、何であんな事してるのよ」
夢の中で目覚めて早々、ユリィが死んだ魚を見るような目で話しかけてきた。
「色々ありまして……」
「まぁいいわ。座って」
「はい……」
私は椅子に座ってユリィと向き合った。
相変わらず綺麗な顔してるなぁ。
「今日はあなたに頼み事があるの」
「頼み事?」
「イアン・グリーファに接触してほしいの」
「ブフッ!」
思わず紅茶を吹き出してしまった。
「大丈夫?」
「お、お構いなく……」
イアン・グリーファって、ヒロインに惹かれる一人。
剣術が得意で魔力と学力は低め、Bクラスの生徒だったはず。
学園では氷の騎士様とも言われている。
セシリアに惹かれているかどうかは分からない。
私は全学年にまで悪評が広まっているから、正直話しかけづらい。
「理由は?」
「イアン・グリーファはまだここに来ていないの」
「前から気になっていたんですけど、ここはどこなんですか?」
「ここはあなたにとっては夢の中。私達にとっては魂のたまり場。この間話した、異世界との狭間って言ったら分かる?」
あー、異世界との狭間って魂のたまり場なんやぁ。
ん!?
ちょっと待って。
私達が転生したのって、異世界との狭間を彷徨ったからだよね!?
ってことは、ユリィ達もいなくなっちゃうんじゃ……。
「ユリィ!いなくならないで!」
「え?どうしたの?」
「だって、ここは異世界との狭間なんでしょ?じゃあ、いつかみんないなくなっちゃうんじゃ……」
ユリィは優しく微笑んで、私の頭を優しく撫でた。
その顔には悪役令嬢の面影なんて全くなかった。
「バカね。私はいなくならないわ」
「本当に?」
「本当」
こんなに優しいユリィが、悪役になるなんて信じられない。
優しい表情、優しい声、優しい手つき。
落ち着く。
「話を戻すけど、イアンは次に狙われる可能性が高いの。他にもディーアやカイル、オーリスが危ないわ」
「え?それって……。」
「私達も読ませてもらったわ。『君が世界を救うなら』っていう物語を。まさかこの世界が異世界では本になっているなんてね。そして、今まで殺されてきたのは全員、物語の中心人物。つまり、イアン・グリーファ、ディーア・ベイルド、カイル・シルコード、オーリス・クレイト。この四人が次に殺される可能性が高い」
確かに、今転生してる人物たちはかなりの重要人物。
次に殺されるとしたら、この四人の内の誰か。
でも、オーリスとは正直会いたくない。
だって、未来で私を殺すんだもん。
嫌すぎる。
「明日はイアンに会ってほしいの」
「でも、悪評が……」
「大丈夫よ。イアンは聞き分けが良いはずだから」
「えぇ……」
◇◆◇
目を開けると朝だった。
いつもそうだけど。
さて、学園に行く準備をしよう。
私が起き上がると、目の前にユリィがいた。
『おはよう、菜乃葉』
「うわぁ!な、ななななな何で!?」
こんちっちは〜!春咲菜花です!最近後書きのネタが無いです。さて、今回は実習の話、ユリィの話でしたね。ジゼルの正体は誰なんでしょうか!そして、どうしてユリィは異世界との狭間から出てこれたんでしょうか!謎が増えていきます!伏線回収どうしよう(笑)!次回もお楽しみに!




