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だが男だ!  作者: 衣谷強
5/5

第五話 一夜を共にする男のコ

お待たせしました。


ゲリラ豪雨で帰れなくなった二人。

取れた宿は一室のみ。

男女が一晩過ごすとなれば、する事は決まっている訳で……。


トランプかな?(すっとぼけ)


どうぞお楽しみください。

「美味しかったですねー、先生」

「あぁ、そうだな」


 夕食を済ませた私と晶は、フロントで部屋の鍵を貰い、エレベーターに乗り込んだ。

 西縦にしたてアウトンは思った以上に綺麗で、対応も丁寧な良い宿だった。

 しかも武藤むとうさんの手配で、オプションは完備。

 豪華な夕食朝食付きに、アメニティと冷蔵庫内の飲み物は使い放題。

 寝巻きや下着なども完備で、コンビニに寄る必要なしとの事。

 その上服のクリーニングサービスまで付いてくるなんて。

 しかもお代は会社持ちで支払い済み。

 流石武藤さんだ。

 突然の事態でもこんなに快適な宿を確保してくれるなんて。


「あ、この階です」

「あぁ」


 エレベーターを降りてすぐ近くに、指定された部屋番号が見えた。

 心からの感謝を込めて差し込んだ鍵を回し、


「……」

「あ、あれ? この部屋……」


 私と晶は絶句した。

 入口入ってすぐの扉は、恐らくトイレとお風呂だろう。

 その奥に広がるスペースに置かれた大きなベッド。

 ……一つしかないように見えるが……?

 奥に進むが、別室などはなく、ベッドとテレビだけの大きい部屋……!

 こ、これは一体……?


「だ、ダブルベッドのお部屋だったんですか……?」

「!」


 晶の言葉に慌てて携帯を確認する!

 違うよな!?

 ベッドが二つある二人用の部屋をダブルって言うんだよな!?

 『ホテル ダブル』で検索……!


「……」


 あ、あはは……。

 ベッドが二つある部屋は『ツイン』って言うのかぁ……。

 大きい二人用のベッドで寝るのがダブルなんだなぁ……。

 そっかぁ……。

 初めて知ったよ……。

 ……なんて遠くを見つめている場合じゃない!

 このままでは晶と同じベッドで一晩過ごす事に……!

 そんなのもう……!


「あ、あの、先生……」

「にゃっ!? な、何だ!?」

「……た、多分武藤さんが、何か間違えたんだと思います……」


 ……いや、どうだろう……。

 多分意図的に選んだんだと思う……。


「だ、だから僕、どこか別の場所に泊まりますから、先生はこの部屋で……」

「いや、それは駄目だ!」

「えっ」


 窓の外は未だ雨が降り続いている。

 駅近くの宿はどこも満室だろう。

 傘を差しながら空室を探して、街を彷徨さまよう晶。

 そこに忍び寄る男の下劣な笑み。


『ぐへへ……。君可愛いね……。泊まるところがないのかい……? 良ければおじさんの家に泊まらないかい……?』

『……は、はい……』

『ぐへへ……。一晩おじさんと楽しく過ごそうねぇ……』


 駄目だ!

 そんなの絶対に駄目だ!

 そんな地獄に晶を置くくらいなら……!


「……ベッドは十分広い。二人でも寝れるだろう」

「えっ、あ、は、はい……。でも……」

「明日に備えて早めに寝よう。いいな?」

「は、はい」

「では先にシャ……、ふ、風呂に入ってくれ。私は今日撮った資料をまとめておく」

「わ、わかりました。は、早めに上がりますね」

「……ゆっくりでいいからな」


 そそくさと風呂場に向かう晶。

 よ、よし、今のうちに資料の整理を……。

 ……風呂場から聞こえる水音に、何かドキドキする……!

 あ、雨だと思え!

 ……とにかく資料を使いたいシーン毎にまとめて……。


「……あの、先生。お先にお風呂、いただきました」

「な、は、早いな……」

「そ、そうですか……?」


 ……気が付けばもう三十分も経っていたのか……。

 全然まとめられていない……。


「……では私も入ってくる」

「は、はい」

「……テレビでも見ていてくれ」

「わ、わかりました」


 か、覚悟を決めろ佐々ささき美弥乃みやの

 死ぬほどの事はない!

 皆そうしてお母さんになる!

 天井のシミでも数えていれば終わると聞いた!

 ……そ、それに晶なら、そんなに酷くはしない、はず……!


「〜〜〜っ!」


 と、とにかく身体は綺麗にしよう!

 ……クリーニング希望の服は、この『女性用』と書かれた赤い袋に入れて、このダストシュートみたいなのに入れるのか……。

 ……これで朝までこの宿を出る手段はなくなった……!

 正に背水の陣!

 あああどうしよう……!




『こ、コイツはやべぇ……! と、とりあえず謝っちまおうぜ、なぁ益荒男ますらお……?』

『……いや、武士もののふ。俺は何があっても戦いからは逃げねぇ』

『な、何でだよ益荒男! 別に戦わなきゃいけない訳じゃねぇだろ!?』

『……俺が引いたら、千枝李ちえりが不安になる。だからだ』

『! ……お前、そこまで……』

『武士。お前は逃げても構わんぞ』

『……へっ! 見損なうなぃ! 俺様の新たな武勇伝を、都把姫つばきちゃんに聞かせる絶好のチャンスじゃねぇか!』

『フ……。なら行くぞ!』

『お、応っ!』




 ……そうだ。

 私は『すめらぎ! 雄斗呼おとこ学園』で、益荒男にも武士にも、逃げる事を許さなかった……。

 作者の私が逃げてどうする!

 よし!

 風呂に入ろう!




 身体も頭も綺麗にした!

 新しい下着も寝巻きも身に付けた!

 い、いざ!


「ま、待たせたな。あ、あき……、ら……?」

「……すぅ……。すぅ……」

「……」


 ね、寝てる……。

 余程疲れていたのだな……。

 律儀にベッドの端っこで丸くなって……。

 ……こうして見ると、二十歳には思えないあどけなさ。

 私の取り越し苦労だったな。

 晶は男だ。

 だが欲望のまま、私を慰みものにするような男ではない。

 私は男という存在に怯えるあまり、晶の本当の姿を見誤っていたのかもしれないな。


「……ありがとう晶。これからも私の側にいてくれ……」

「……すぅ……。すぅ……」


 頭を軽く撫でると、反対側からベッドに入る。

 電気を消すと、外の雨音はだいぶ弱まったようで、エアコンの音と晶の穏やかな寝息だけが部屋に満ちていく。

 私はとても安らかな気持ちで眠りに落ちていった……。




「……ん」


 目を開けると、部屋はもうすっかり明るくなっていた。

 外はすっかり晴れ、昨日の雨が嘘のようだ。

 これなら問題なく帰れるだろう。


「……ん、むにゃ……」


 可愛い寝息に振り返り、


「!!??」


 う、薄いパジャマのズボンを押し上げているあれは!?

 世に聞く男の生理現象!?


「……!」

「……んぅ……」


 はだけていた掛け布団を晶に掛け直し、私は冷蔵庫から水を出して飲む……!

 や、やっぱり晶は男だ……!

 男なんだー!

読了ありがとうございます!


「晶くんと何事もなく一夜を過ごしたのは予想通りとして、何故武蔵先生の警戒心は高いままなんだ?」

武藤はいぶかしんだ。


ともあれこれにて完結となります。

一話の前書きで短編とキッパリ書いたのに……

スマン ありゃウソだった

でもまぁ五話まで書いて完結させたんだから良しとするって事でさ……


ごめんなさい


最後までお付き合いいただき、ありがとうございます!

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― 新着の感想 ―
[良い点] 純粋無垢で可愛い晶くんと奥手で初心な先生の楽しいお話をありがとうございました、とっても面白かったです。 晶くんが先生への尊敬の気持ちが恋愛感情に変わる日がいつになるかが二人が結ばれる日ま…
[一言] 完結お疲れさまでした。 これからも(´∀`*)ウフフな日々が続くと思うと(´∀`*)ウフフですねぇ。 また続き書くまでお待ちしていますね。
[一言] 完結お疲れさまでした。 この恋?が成就する頃には、ふたりは共白髪かもしれません(笑)。 せめて、武蔵先生が三十代のうちには、想いを通じあって欲しいものですね♥️
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