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8、え、皆さんは気づいていたのですか?

「さすがは贅沢な劇場だけあって、金持ちのやつらばっかりが集まってるな!」

「リーダーの改装中の幕に隠れる案ナイスでしたね!」

「金目のもの分捕って早めに撤収するぞ!」

「「「はい!!」」」


 頭から黒のフードを被った男たちが劇場になだれ込んできた。

 劇場の一角が壊されている。


 それを見て、自分が不自然にも、劇場の改装中の幕を不審に思わなかったのも、護衛の騎士たちが劇場の不審なものが入り込んでいないか気づかなかったのも納得がいった。

 警備が上手くいっていないのも納得だった。


 これは、マティウス・ド・アイステリア殿下を攻略していると発生するデートハプニングイベントだった。

 お忘れだろうか?

 私が転生したのはデートで好感度が上がる『秘密の宝石箱~イケメンコレクション~』の世界だ。

 デートは平たんにこなしているだけではない。

 要らないハプニングが発生する。


 イベントを発生させるためにゲームの強制力が発生したのだろう。

 よくあるヒロインとイケメンの仲を縮めるためだけのランダムハプニングだ。


 お忍びでヒロインとマティウス殿下がデートをしていると、盗賊たちが貴族や富裕層を狙って乱入してくるのだ。


『私、負けないっ!』


 脳裏に光魔法が得意なヒロインの言葉が蘇る。

『光の槍』で盗賊たちに頑張って応戦するヒロイン。

 そして、自分に自信のなかったマティウス殿下が、ヒロインを守りたくて発動する氷魔法。

 アイステリア王国の王太子にふさわしいすさまじい氷魔法で生きたまま盗賊たちを魔法の氷で氷漬けにするのだ。


氷牢獄アイスプリズン!!」


 ……そう、あんな感じに盗賊なのに、イケメンゲームの世界だからなのか盗賊も微妙に顔の良いイケメンたちが都合よくフードが脱げた状態で氷漬けに…………………………、


「……っえ??」


 マティルダ様が、自身の凄まじい魔力で服やヘッドドレスをはためかせながらマティウス殿下専用魔法『氷牢獄アイスプリズン』を発動させていた。


 いえ、マティルダ様ではない。

 やっぱりお顔はよく見えづらいけれど、マティウス殿下だった。


 早速マティウス殿下は、氷漬けにした盗賊たちを騎士に応援の人員を集めさせて運ばせている。


「賊に、平民の使用は禁止されている精神魔法を操れるものがいないか特に尋問してください。襲われた状況が不自然すぎる」

「はっ」

「まだ周りに仲間がいるかもしれない更に人員を王宮からも呼んで、劇場の来ていた方たちの安全を確保して家に送り届けないと」

「この地区を担当している警備兵も呼び寄せます」


 マティウス殿下は、マティルダ様の格好のままで騎士たちにあれやこれやと指示を出している。

 取り巻き令嬢たちも、自分の家の者たちや警備兵や騎士に守られながら家に帰っていった。


 諸々が一折済んでからマティウス殿下は、私に向き直った。


「だましていてごめんなさい」

「どうして……?」


 どうしてマティウス殿下たるものが女装などして私の遊びに着いてきたのだろうか?

 どうして、私にずっとマティウス殿下である事を言わなかったのだろうか?

 皆も気づいていたのだろうか?


 私の頭を様々な疑問が駆け巡り、私はその場に立ち尽くしていた。


「これは僕の被害妄想でもないと思うのだけれど、最初の顔合わせ、僕を見てうんざりしていたでしょう? イラッとしていたでしょう?」

「……それは……」


 即座に否定できなかった私は、不敬にもマティウス殿下の言葉を肯定してしまっていた。

 マティウス殿下の悩みを聞いた時『私は別にマティウス殿下はそのままで構わないと思います』なんてどの口が言ったんだろう。


「僕は会う前から完璧な貴族令嬢であるナタリー嬢を尊敬してて、頭が良くて王妃教育もばっちりで、でもナタリー嬢が婚約者に決まるまで13年もかかって……、その上、『神の世界の作品』の文化視察活動にまで力を入れ始めたナタリー嬢の前には、とてもこんな僕では立てないと思った」


 マティルダ様の服装のまま、マティウス殿下は白のヘッドドレスをとって困ったように笑った。

 何で今まで気づかなかったんだろう。


「変装して着いていったときもあったのだけれど、取り巻きの令嬢たちと楽しそうにしている君を見て、僕も君と一緒に同じ時間を過ごしたくなったんだ……でも、それは言い訳だ。気持ち悪いよね。一国の王子たるものが女装して名前も嘘ついて婚約者にまとわりつくなんて………更に言い訳なんだけど、このドレスに見える服……一応は中はゆったりしたズボンなんだ。完全なスカートをはいているわけじゃない」


 マティウス殿下は自分で言っていて気になったのか、マティルダ様の服装の秘密について教えてくれた。

 あー……、それはそうなんだ。中がズボン……。


「ナタリー嬢がとてもリラックスしたはしゃいだ顔を見せてくれて、僕は僕自身がナタリー嬢と仲を深められている気になっていた。仲が良くなったのはマティルダとしての卑怯な僕なのに。本当にごめんなさい」


 マティウス殿下の言葉に私は何と言っていいのか分からない。

 始まったのはゲームのイベントのはずなのに。

 なんで現実はゲームよりも複雑で心がかき乱されるのだろう……。

読んで下さってありがとうございました。

もし良かったら評価やいいねやブクマをよろしくお願いします。

また、私の他の小説も読んでいただけたら嬉しいです。

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↓代表作です。良かったら読んでくださると嬉しいです。

「大好きだった花売りのNPCを利用する事にした」

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