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いずれは処刑される悪役令嬢ですので、毎日遊び歩きます。  作者: ひとみんみん


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35/38

35、婚約は破棄できない。遠い日に王子がかけた魔法。黒鳥を見抜けなくとも。

「ナタリー嬢、君のような悪女とはもう無理だ。僕は君と婚約を………………………………………………………破棄しない」


 マティウス殿下の言葉に会場中の招待客が目を見開いた。

 マティウス殿下も自分の口から出た言葉に驚いているようだった。



 もちろん、私も当然『婚約を破棄する』という言葉が続き、そしてルーチェさんと婚約を結びなおす宣言がされて、マティウス殿下の想い人を害した罪で、『光の聖女』を害した罪で処刑されてしまうのかと思っていた。


「僕は以前、自分が女装していることがバレた時に、自分がダメな人間だと思ったけれど、でも、ナタリー嬢が僕を心底嫌になって、『婚約を解消したい』という意思を見せるまではナタリー嬢の婚約者で果ては結婚する相手としての座を誰にも譲りたくない、と誓った。その時に契約魔法を自分にかけていた。『婚約破棄や婚約解消を自分から言わない』という契約魔法だ。破ったら僕は死ぬ。だって、僕はとても弱い人間で、ナタリー嬢の立派さを見て、ナタリー嬢の婚約者である自分がとても恥ずかしくなって、いつか自分から言いだしそうな気がしたから。それに、アイステリア王国の為には絶対ナタリー嬢にお嫁さんになってもらった方が利点もあるし」


 マティウス殿下がマーキス家の夜会会場の真ん中で、自分の思いを手繰り寄せるかのように喋る。


 キラキラ王子の演技もはがれて、昔のマティウス殿下のようで懐かしかった。

 さっきマティウス殿下に感じた恐怖は嘘のようだった。


「きもっ。マティウスが女装なんてキモイじゃん」


 ルーチェさんが思わずと言うように、手に口を当てて吐き気を抑えるようなしぐさをした。


「ナタリー嬢は僕にそんな態度を取らなかった。僕の事が気持ち悪いと言うよりは、意外と言った顔だった。不思議だよね、ナタリー嬢のイラっとした嫌悪の視線は、僕の自信のなさそうな上目遣いの表情の時にだけ感じたんだ」

「そんなの貴族だから表情や態度を抑えていたんでしょ?」

「残念ながら、自分に自信のなかった僕は人の顔色を読むのが得意なんだ」


 マティアス殿下は穏やかな諦めたような目をして、ルーチェさんに告げる。

 確かに私はマティウス殿下が女装をしていたのが分かっても嫌悪感とかそういうのはなかった。

 そんな事をさせてしまった自分に自己嫌悪して、自分は悪くないとベッドの中で言い聞かせていたっけ……。

 今思うとすごく幼稚だわ……。


「マティウスー、なんでそんなにその女の肩を持つのよ。ナタリーとは縁を切って、私の彼氏になってくれるって約束したよねー? 私を王妃にしてくれるって」

「確かに、君の事はそこまで興味がなかったはずなのに、そんな事も言ったかもしれない」

「だったら……」

「君の事は好きなんだけれど、それ以上に僕はナタリー嬢が好きだ」


 改めて、マティウス殿下の発言に、私は頬が熱くなるのを感じた。

 こんなに人が居る目で言われるとは思わなかった。


「はぁ~? どういう事よ、ナタリー。話が違うでしょ?」


 ルーチェさんが眉をひそめて私を見る。


 どうしよう。処刑?


「あ、後はね、清廉潔白で優秀なナタリー嬢は、当然、その清廉潔白さでも僕の婚約者に選ばれている。王太子の婚約者や王太子妃、王妃が罪人なんて絶対に認められない。だから、どうしてもナタリーを罪人にするためにはまず婚約破棄をしなくてはならない。僕が婚約破棄をしなければ、ナタリー嬢の問題も時間を稼げるはずなんだ」


 マティウス殿下が得意げに自分の思いつきを語りながら私を見る。


「僕は白鳥の湖で、黒鳥を見抜けない馬鹿な王子かもしれないけれど、馬鹿は馬鹿なりに考えがあるんだ」


 マティウス殿下の言葉に、ルーチェさんが怒りでなのか顔を真っ赤にする。


「何それ、マティウスなんかもういらないわ。他の皆に助けてもらうから!」


 そう、ルーチェさんが声を張り上げた時、



「はーい、そこまでー。物語は終了です」



 と間延びした声が届いた。

 そこにはこの国中の教会の壁に描かれている存在が居た。


 私も見た時には目を疑ったけれど、この世界の神とはそういう姿をしている。


 白鳥の湖の黒鳥の父、悪魔の姿。

 ねじれた角と黒い翼の悪魔。


 それを見たら、この世界のそれが当たり前だと思っている人はともかく、転生者は心が折れるだろう。

 私だって、もう自分は駄目だと、処刑される運命を諦めていた。


「物語の時間はもう終わり。結局、ヒロインに色々とアドバンテージをあげても、悪役令嬢の方が圧倒的に有利で面白くなかったなあ」

「申し訳ありません…………っ」


 悪魔の『面白くなかった』の言葉に、私はドレスが汚れるのも構わず跪いてお詫びを申し上げた。

 他の貴族たちもよっぽどの下位貴族や事態を分かっていない平民以外は一斉に跪いた。


 平民の商人の一人は、


「……鳥獣人?」


 などと不敬な事を喋っている。


「あと、何でヒロインに生まれると性格悪くなっちゃうんだろうね? 可哀そうすぎるから記憶を消してあげたけど、ヒロインの前世なんて、悪い男に騙されて、他の女に刺殺されたのにね。イケメン好きとやらは消えない性格なのかな?」


 色々神様はブツブツ言いながら、空中にとどまっている。


「ゲームの作りこみが甘かった? 選択肢がごちゃごちゃあると覚えづらいかなと悪役令嬢へのお詫びも兼ねて楽しめるデートスポットで好感度が上がる形式にしたのになぁ。まあ、いいや。もうつまらないから、好感度リセットいっくよー!! あっ、好感度じゃなくて、普通に相手に好感を持たれている場合は消えないから」


 そういって、神様は手を振り上げた。

 魔力が神様の手に集まっていくのが見える……。

※ヒロインは教会になんて行かなかったです。イケメン漁りです。


読んで下さってありがとうございました。

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また、私の他の小説も読んでいただけたら嬉しいです。

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↓代表作です。良かったら読んでくださると嬉しいです。

「大好きだった花売りのNPCを利用する事にした」

― 新着の感想 ―
[一言] ひえぇぇぇそれは心折れる!! ロットバルトな姿形が神様とかそりゃこの世界悪魔のおもちゃだもんね…
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