34、悪役令嬢、その罪状。
「ナタリー・ド・オランジェ!! あなたは侯爵家と王太子の婚約者という地位を傘にきてルーチェをいじめましたね!!」
と夜会で大声で言われて振り返ると、そこには宰相の息子さんがいた。
そう言われても何のことだか分からない。
逆ハーレム構成員の皆さんだって、私がルーチェさんをサポートしている所を見たはずなのに。
「王都の危険を事前に防いだ聖女たるルーチェを邪魔に思って階段から突き落とそうとしたりとか、日常的に叩いたりしているとか。『神の世界の作品』のコンサートで俺は見たんだぞ」
騎士団長の息子さんも居た。
「それは、ルーチェさんが『ピアノコンサート』では寝てしまうから起こして、と言われただけで。ちょっとやそっとじゃ足りないから強めに叩いて起こしてくれと言われまして」
「見苦しい言い訳をするなっ! ルーチェは難解な『神の世界の作品』が大好きな女の子なんだ。そんなこと言うはずがないだろう」
騎士団長の息子さんの言葉に下位貴族達が、
「そうだそうだ!」
と声を上げた。
何か話が違うし、行き違いがあるようだ。
私は冷や汗をかきながらも、ルーチェさんを見ると困ったような表情をしていた。
「みんなー、やめて。私は大丈夫よ。ナタリー様にそのように言ってはいけないわ」
と、皆にルーチェさんは注意しているけれど、それがますます、
「おお、なんとルーチェは優しいんだ」
と誤解を呼んでしまう。
「『神の世界の作品』上演中に貴族令嬢なのにやかましくルーチェに嫌味を言い続けているのも見ました」
「見どころを教えようと………」
「あなたなんかに聞かなくてもルーチェは『神の世界の作品』に詳しいからそれはないな」
今度は宰相の息子が私を断罪する。
私よりも詳しい? ………そうなんだろうか。
「今回のモンスター討伐の時に、これみよがしに大魔法を使ってルーチェの手柄を横取りしようとするのも見た」
今度は筆頭宮廷魔術師の息子が私に指摘してくる。
でも、
「ルーチェさんが「私をサポートして」とおっしゃるから………」
「嘘だっ! ルーチェはルーチェだけで莫大な魔力を持っているんだ。君なんかのサポートを必要とするわけないだろう」
と少し何か言うとすぐに反論されてしまう。
そしてついには、
「ナタリー嬢、君には失望したよ。国の宝たるルーチェを害そうだなんて」
「で……でんか。マティウス殿下、何故?」
「何故? こっちが聞きたいな」
皆と一緒にルーチェさん側に並んで立っていたマティウス殿下が私に向かって呆れた顔をした。
なんでどうして?
私は訳が分からなかった。
「みんなー、やめてー」
ルーチェさんがほぼ棒読みに皆に制止の言葉をかける。
「ルーチェ、君は本当に優しいな。こんなナタリー嬢にまで心配してやるだなんて」
「えへっ、そんな事ないわ。皆には仲良くしていて欲しいの」
「でも、同情は無用だ。聖女を害しようだなんて、とんだ悪女なのだから」
ルーチェさんとマティウス殿下のやりとりに、私ははめられたと思った。
確かにルーチェさんは制止の言葉をかけてはいるものの、イケメン達を止められていない。
というより、止める気はなさそうだ。
こんな簡単な罠にかかるなんて。
「ナタリー嬢、君のような悪女とはもう無理だ。僕は君と婚約を……」
あまりのショックにマティウス殿下が喋る言葉もどこか遠くに聞こえた。
ルーチェさんが私にだけしか見えないように口の端でニヤッと笑った。
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