33、私はヒロインを信じています。
私はヒロインであるルーチェ・マーキスさんに協力することにした。
ルーチェさんは、魔を払う『光の聖女』であり、それ故に光と相対する魔の勢力の目覚めの予感を夢で知っていたと他の皆さんにも説明した。
新興宗教団体をそもそも私が王都民を襲おうとしていた強いモンスターをほとんど退治していたために、ルーチェさんを旗印に乗り込むと(ルーチェさんの魔法を私が攻撃も防御もルーチェさんをさりげなくカバーして)あっさり壊滅した。
その手柄で、監視付ではあるものの、ルーチェさんは一応そのように魔王の目覚めを事前に防いだとして、ルーチェさんは自由に行動できるようになった。
私はできるだけ目立たなく、ルーチェさんの引き立て役になって、イケメン達とのデートにルーチェさんを連れて行った。
ルーチェさんが苦手なデートスポットではさりげなく私がルーチェさんを起こしたり、見どころを説明したり、イケメンとの仲を取りなしたりした。
ずるいけれど、全ては私が処刑されない為……。
マティウス殿下は私と話し合いたそうにしていたけれど、私は拒否した。
「私を好きだと言うのなら……応援してください。私が18歳を過ぎても生きていられるように」
というと、マティウス殿下もあまり私に強く言えないのか引き下がる。
マティウス殿下の思いには答えないのに、マティウス殿下の思いを利用している酷い女に成り下がった。
ルーチェさんの言うイケメンとはマティウス殿下も含んでいたらしく、マティウス殿下の思いにも返事していない私にはそんな権利もないのに、もやもやしたものを感じながら、マティウス殿下とルーチェさんの仲が深まっていくのを見守った。
結局、私はそんな女という事だ。
私は悪くないと思う。
『マティウス殿下の思い』と『私の命』を天秤にかけて、私は『私の命』を選んだ。
それだけだ。
物語の主人公のように、私は自分の中で芽生えているのか芽生えていないのか分からない『マティウス殿下への思い』なんて選べない。
それに、マティウス殿下だって正真正銘のヒロインであるルーチェさんに癒された方が良いだろう。
一時期は私の無責任な声掛けで、ヒロインに癒された時のようなキラキラの王子様になっていたけれど、それはまやかしだ。
私の取り成しで王宮に招待されてマティウス殿下と仲を深めているルーチェさんを横目に、私は全てをルーチェさんに従った。
やはり、ゲームの仕様通り、ヒロインとデートスポットでデートしたイケメン達は面白いようにルーチェさんを好きになっていく。
それはこの世界で正しい事だ。
このゲームの世界にルーチェさんと私を転生させたのは、きっと神様で、ルーチェさんがヒロインで私が悪役。
ルーチェさんはこの世界のヒロインだから。
正義だから。
17歳の誕生日は、特に何もないまま家族に祝われただけで終わった。
私がそうしたいと我儘を言ったのだ。
マティウス殿下が来ようとするのは断った。
花だけが送られてきたけれど、侍女のターシャに頼んで私の視界に入らない所に飾ってもらった。
マティウス殿下は筋を通そうと、何回も私の誕生日を祝いたいと要請していたらしい。
けれど、絶対に断ってもらった。
……もう、マティウス殿下の婚約者たる私がそんな事をしても誰も驚かない。
最近、マティウス殿下の横には常にルーチェさんが居る。
それどころかルーチェさんの周りには常に流行りの見目のいい顔をしたイケメンが侍っていて、ルーチェさんは満足そうだった。
悪役令嬢の私がヒロインに負けて、ルーチェさんが乙女ゲームに時々あるルート『逆ハーレムルート』のエンディングを迎えようとしていた。
ルーチェさんの言う通りなら、私は、ルーチェさんの言葉通り、仲良くしてヒロインに負けることを認めたわけだから、処刑まではされないという事だ。
そう、私は信じていた。
それなのに、18歳の誕生日、無理やり呼び出されたマーキス家の夜会で、
「ナタリー・ド・オランジェ!! あなたは侯爵家と王太子の婚約者という地位を傘にきてルーチェをいじめましたね!!」
ルーチェさんの取り巻きに断罪されていた。
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