28、処刑される運命に生まれて。
王宮騎士の案内で、王宮の中をマティウス殿下が氷漬けにされている部屋まで走った。
おおよそ淑女らしくない私の様子に時々女官が目を顰めたけれど、構わない。
自分の婚約者が大変な事になっているのに駆け付けられなくて、何が次期王太子妃というのか。
あまり来たことのない王城のエリアの豪奢な扉の一角に駆け付けた時、扉の前にはマティウス殿下の御年9歳になる妹姫様が居るのに気づいた。
「ごめんなさい。兄さまがあなたの元に駆け付けられなくて」
「いえ……」
小さい声で呟くように妹姫様が私に謝ってくる。
元はと言えば事情を話せず、勝手な行動をしている私に責任があるのだと思う。
私が無事に処刑された暁には、すいませんが後はよろしくお願いしたいものだ。
「安心してね、私は王になりたいなんて思わないから。王を学んだ結果、こんな風に札束と自分たちの命の大切さで殴ってくる民衆がとてもじゃないけれど好きになれないの。外国にでも嫁いで、将来王様をやる兄さまの為になろうって思っているから」
呟かれた言葉になんて言ったらいいか分からない。
「御意に」
それだけ言ったけれど、果たしてその返事があっているのかも分からなかった。
妹姫様はそれだけ言って静かに去って行かれた。
でも、本当にマティウス殿下は真面目で物事を無難に進めるのがうまい。
なるべく人と衝突しないように王族としての役割をこなしていらっしゃると思う。
マティウス殿下を見ていると、王には突出した才能など必要ないのではないかと思う。
私が処刑された後には、改めてマティウス殿下に合う、マティウス殿下をうまく引き立ててくれる令嬢と結婚したらいいと思う。
この際、だいぶ身分が下でも構わないのではないか。
高位貴族に養子にとればいいのだから。
ほら、よく前世にあったWEB小説であっさり高位貴族に養子に入るヒロインなんて居たから。
王宮騎士にドアを開けてもらって、部屋の中に入った。
部屋の中央には椅子に座っている姿勢で、頭以外が氷漬けにされているマティウス殿下が居た。
私を見て、困ったように笑う。
陛下のエグイ魔法『氷の尋問』だ。
確かに笑うしかない。
「ごめんね。君の元に駆け付けられなくて」
本当によく謝る王族だ。
私はそんな風に謝ってもらう必要なんかない。
いずれは処刑される運命だからと、運命に気づいた後は好き放題生きてきた。
「マティウス殿下は分かりますか?」
「なにを……?」
「自分が処刑される運命に生まれることの意味を、です」
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