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2、さっそく、バレエを見に行きます。

 さっそく、ヒロインとイケメンのデートスポットである劇場を見にいく事にした。

 今日は国内のバレエ団でフラガリアバレエ団の上演があるそうだ。

 最近ちょっとずつ有名になってきたバレエ団だそう。


 今日の演目はくるみ割り人形らしい。さすが、乙女ゲームの世界。

 演目も前世のものがあるなんて。


 くるみ割り人形はいいね。ブランクがある私には分かりやすい作品だし。

 前世ではお金がないから、バレエ団が配信してる公式の動画を見て、行きたい欲を紛らわしてた。

 今世は行けちゃう、最高!


 プリマは猫の半獣人のマイヤというそうだ。

『期待の新人!』とパンフレットには書いてあった。


 そうそう、そういえば、小さい時にはバレエを見にいくなどは出来なかった。

 お母様は興味がなく、もっぱら社交はお茶会や観劇だったので。


 ーーー


 お父様とお母様には話がついた。

 というより、話が分かっていた。


 お母様に、


「遊びに行きたい」


 と率直に言うと、


「ナタリーは日頃から勉強を頑張っていますしね。異性関係で派手な遊びをするのでなければ良いですよ」


 とあっさり許可が出た。


 私は、悪役令嬢の頭脳と体は侯爵家の遺伝の集大成という側面もあって、覚えるべき事は大体すぐに覚える。

 王太子妃教育もマナーや外交といった事は、侯爵家でも大体やっていた事と被ることが多く、あまり王宮に通わなくても大丈夫そうなのだ。


 そもそもオランジェ侯爵家は飛ぶ鳥を落とす勢いで豊かになっている家である。

 で、あるから、豊かな貴族家の常で、お父様とお母様が有能で、国の外交や政治にも食い込んでいる。


 私?


 私は侯爵家は弟に任せて、嫁に行く要員。

 だからお父様とお母様ほど有能じゃない。


 例えば、お父様みたいに領内の地質学者と話し合って、国の許可取ってオリハルコン鉱山すぐに発見するとか意味わからない。

 お母様も、お母様のファッションはことごとく流行って、侯爵家が出資している商会がいつも品薄になるぐらい売れているらしいし。

 弟は私より小さいながら領地経営に興味津々で頼もしい。


 ---


 さあ、アイステリア王国国立劇場にやってまいりました。


「ナタリー様。楽しみですわね」

「ええ、本当に。ナタリー様のおかげでこんな良いお席に座れるなんて夢のようですわ」

「さすがはオランジェ侯爵家でいらっしゃいますね」


 私の周りには取り巻き貴族のご令嬢がいて各々が喋ったり、私に話しかけたりしてきた。

 これでも人数を絞ったのだけれど5人いる。


 お父様に頼んで、人気のバレエ団のチケットを取ってもらったら、広くて良い位置の2階のバルコニー席が取れたから、もったいなくてウチの家の取り巻き貴族のご令嬢を誘ったのだった。

 もちろん、無理強いではなくて「よろしければ」という事で誘ったのだけれど、次期王太子妃が無理やり誘っているという事にはなっていないかちょっと心配だ。



「あら? 王家専用のバルコニー席に誰か座ってらっしゃいますわね。お顔とお体を隠しているのでよく分かりませんが、ナタリー様は何かお聞きでいらっしゃいますか?」

「いえ……」


 令嬢に言われてそちらを見ると、斜め右隣りのバルコニー席に幅広の帽子と厚手のマントを身に着けた人が座っていた。


 そういわれても、私には何の情報も入ってきていない。

 というか、いくら私が次期王太子妃だとしても、王家のプライベートの予定まで逐一教えないと思うの。

 だって、例えば明日バレエを見に行きたいなーって思って、何で王太子の婚約者にまで予定を大急ぎで知らせなきゃいけないのかなって思う。


 王家の方はお忙しいから、急にバレエを見に来る時間ができたとかじゃないかな。

 それで、自分が居たってばれると嫌なんじゃないかな。


 知らないけれど。


「そろそろ始まりますわね、皆さま」


 令嬢の一人がそう言って、各々自分の席に落ち着いた。


 ドキドキワクワクが止まらない。

 初めて生で見るバレエがバルコニー席なんて。


 ふと……、王家専用席に座るマントの人がこちらをちらりと見たような気がしたが、私は充実の内容の演目にすぐにその事は気にならなくなっていた。


 ---


「……っ、本当に素晴らしかったですわね、皆さま」


 終わって幕が閉じた後、私は感激のあまり満面の笑顔で周りの令嬢に語り掛けた。


「ええ、本当に。国内のバレエ団がこのように素晴らしいとは」

「やはり、半獣人の方は人と体幹が違うのか軸がしっかりしておりましたね」

「分かります」


 今回のプリマは本当に素晴らしかった。

 猫の半獣人という事だけれど、体のしなやかさが違って、それでいて回る時も軸が決まっていて、なかなかただの人間と違う力強さがあった。

 それでいて、バレエの繊細さもあった。


 他の団員もベテランというよりはくるみ割り人形らしいフレッシュで可愛らしくワクワクに溢れていて良かった。


 後ね、いかにも異世界のバレエらしく、魔法での演出があったのよね、光魔法の光とか空中に花が咲いたりとか。

 もう夢見心地とはこの事だわ。


 ほんっとうに素晴らしかった!


 え? 感想が素人だって?


 いいの。だって、私は生でバレエを見るのは初めてなのだから。

 永遠の『にわかファン』でいいわ。


 私は他の貴族の令嬢たちと、併設のカフェで楽しくお喋りをした後解散した。


 途中、ふと幅広の帽子と厚手のマントを身に着けた先ほど王家の席に座っていた人が近くに居て気になりはしたけれど、バレエの話に夢中になってすぐに忘れた。

 さすがは貴族令嬢達、私と同じ13歳前後だと思うけれど、最近のバレエに詳しくて感心してしまった。

 令嬢の一人の強いお勧めで今度はモダンバレエを見に行くことになった。

 楽しみすぎる。

読んで下さってありがとうございました。

もし良かったら評価やいいねやブクマをよろしくお願いします。

また、私の他の小説も読んでいただけたら嬉しいです。

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↓代表作です。良かったら読んでくださると嬉しいです。

「大好きだった花売りのNPCを利用する事にした」

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