10、私はヒロイン。(ヒロイン視点)
時間軸が16歳に飛んで、ヒロイン視点から始まります。
私はこの世界のヒロインだ。
名前はルーチェ・マーキス。
可愛い名前でしょ?
16歳でアイステリア王国の貴族学校『アイステリア王立学院』に入学した時、私は乙女ゲーム『秘密の宝石箱~イケメンコレクション~』のヒロインだと気づいた。
だって学校の門の所で転んだ時に、攻略対象者の『アイステリア王国の王太子マティウス・ド・アイステリア』に、
「大丈夫?」
って声をかけてもらったからだ。
ゲームの雰囲気そのままの、溶けるような淡い金髪に緑の目のキラキラ王子様だ。
ゲームと違ったのは、私を助け起こしたのはマティウスじゃなくて横から出てきた王太子付きか何かの女騎士だったこと。
マティウスの独特の上目遣いがなかった事だ。
「あっ、すみません。大丈夫です」
私は女騎士の手を借りて立ち上がる。
せっかくのかわいい制服がちょっと汚れてしまった。
マティウスが上目遣いをしなくなるのは相当ゲームが進んで、ヒロインに癒されて自分に自信を持ってからだ。
だけれど、マティウスはエメラルドみたいな澄んだ綺麗な目で真っすぐにこちらを見て微笑んだ。
「そう、良かった。気を付けてね」
「は、はいっ!」
完璧な王子様スマイルで、私は頬が熱くなる。
かっこいい。
……………………マジ、やばい。
マティウスは私がちゃんと立ったことを確認すると、凛とした顔でお付きの人たちを連れて学校の中へ颯爽と歩いて行った。
少しの間、私はマティウスが去った後を眺めてボーっとしていたけれど、ある事に気づいてキョロキョロと辺りを見回す。
ここで悪役令嬢でお邪魔キャラのナタリー・ド・オランジェが登場して嫌味を言ってくるはずだ。
だって、ナタリーはマティウスの婚約者だからね、一応。
邪魔してくるのが、ゲームの流れのはず。
……でも、待ってもナタリーは現れなかった。
それどころか、門の辺りを歩いている人がまばらになってきてしまった。
このままでは入学式に遅れてしまう。
「ち、遅刻しちゃう!」
こんなセリフ、本当に言うと思わなかった。
私は我ながら本当にゲームのヒロインみたいだなと思いながら(まあヒロインなんだけれど)、入学式会場に急ぐのだった。
それにしても夢みたい。
イケメンとデートしながら仲良くなれるゲームに転生できるなんて。
ツイてる!!
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