ようこそ、異世界へ
シシーは言い争いを始めた二人に戸惑っている。この解らない二人の争いを止めなきゃ、
でも怖くて止められない。
「はいはーい、ちょっと喧嘩は辞めて話を聞こうか」と樹が声を上げる。
二人は周囲を見回す。
「聞こえてる?」と亮平が尋ねる。
「ああ」と亘は返事を返す。
二人は自分達の空耳でない事を確認した。
「此処は君らが言っていた、青森でも群馬でもありません。」とまたも何処からか声が聞こえる。
二人は半信半疑ながらも頷いた。
「では問題です。此処は何処でしょう?」
二人は怪訝そうな顔で周囲を見渡す。
亮平は探りながら、慎重に話す。
「富士の樹海?」
「ブッブー」
悩んでいる二人
「それではヒントをあげよう。そこにいる女性を見てください。」と樹がシシーの格好で此処は異世界であると教えようヒントを出した。
二人はシシーをマジマジと見つめる。緊張しながらもシシーは二人の身なりを確認した。よく見ると違いがあるのが分かった。髪の色、肌の色と違いがあるのがわかるけど、その中でも大きいのは耳の形だ。
「シシーが恥ずかしさのあまりに卒倒する前に答えを聞こうか、シシーを見てどう思った?」
二人は同時に答える。
「「スゲェ、可愛い」」
シシーは顔を真っ赤にさせて、樹の後ろに隠れた。
「確かにシシーは可愛いけど、そんな事を聞いてるんじゃないんだな、、、アイタタ、シシー、殴るのは止めてくれる?」
シシーは恥ずかしさのあまりに、樹を叩いていた。
「此処は何処でしょうか?」
亮平と亘は顔を見合わせる。
「亘、もしかしたら、俺、解っちゃったかもかも」
「マジで?」
「この前、先生が言ってたやつじゃねぇの?」
「ああ、あそこか」
「ようやく、わかったかな?」と樹が上機嫌で尋ねる。
「「外国人村‼️」」
樹は話を切り上げ、どんどん話を進めていく事にした。
「違うよ。もう、クイズはそこまでにしよう」
亮平と亘は木の周りを見渡す。
「何と此処は異世界です‼️」と鼻息荒く、樹が告げるも
亮平と亘は周囲を探し出した。
「カメラは何処だ?」
「見つからねぇよ」
樹が呆れた声を出した。
「もしもーし、話聞いてた?此処は異世界だよ?」
亘がフンッと鼻を鳴らす。
「悪いけど、そんなのに騙されはしねえんだわ」
「ドッキリでしょ?解ってるって」
樹は困った。
「どうしたら、解ってもらえるのか、」
異世界人を察知した木の精霊達がゾロゾロと現れた。
木の精霊達は二人を囲むとズボンの裾を引っ張った。
「亘、なんか見つけた?」
「いいや、まだだ」
「さっきから何で服引っ張るのよ?」
「俺じゃねぇよ?」
「はぁ?嘘つけぇ」
亮平は周囲を見渡すと手のひらサイズの生き物が亮平の服を引っ張っている。
「何だ、コイツら‼️」
亘も声に釣られて、周囲を見回す。そして、手のひらサイズの生き物を見つけて、愕然とした。
「コイツらは一体、何なんだ?」
亮平は手のひらサイズの生き物を見て、何かを思い出し、亘も何かを思い出した。亮平は安心した。大丈夫だと亘に言おうと目を向けたら、亘はこの生物を蹴ろうとしていた。
「亘、止めろ‼️コイツらは安心だ」
「お前、何言ってやがるんだ‼️コイツらをやらなきゃ、やられるぞ」
「沙耶香とコイツらに似たやつらが出ていたアニメ映画を観てたから分かる。コイツらは精霊だ‼️」
「俺はコイツらに似たやつが出ていたホラー映画を観た‼️コイツらは悪霊の使いだ、今やらなきゃ、やられるぞ」
何体もの樹の精霊達は亘の足に絡みつき、動きを封じ、それによってバランスを崩した亘は倒れ込んだ。近くにいた精霊を叩こうとした亘を亮平は抑え込んだ。
「亘、冷静になれよ」
亘は深呼吸をした。
「分かったよ」
落ち着いた亘は抵抗を止めた。
騒ぎが収まった所で機会だと思った樹が話しだす。
「落ち着いたかな?その、、、亮平君かな?君の言ってることは正解だよコイツらは樹の精霊、ここいらに住んでる住民だよ。コイツらに危害を加えてたら、君達は帰れない所だったよ。そういう意味では亘君の言う事も正解かな?」
亘は苦笑いをする。
「急に危害を加えようとして悪かったな。やられると思ったんだわ。それで攻撃しちゃったんだよ。」
樹は根っこの感覚で嘘でない事を確認し、正直な奴だなと思った。
「こっちも何も言わずに君達を連れてきてしまったんだ。こちらこそ悪かった。」
亮平と亘はヘヘッと笑う。
亮平は寝転がり、妖精を見る。
「アンタ、名前は何て言うの?」
「そうだな、樹というくらいしかないかな?」
「じゃあ、キー君だ」
亘はハハッと笑う。
「いいじゃねえか、呼びやすいし」
樹は馴れ馴れしい奴らだと思いながら、名前をつけられたのは初めてだったので、受け入れる事にした。
「いいよ。それで」
「所で、キー君は何で、俺らを此処に連れて来たの?
何かあるんじゃないの?」
樹の影から隠れていたシシーが出てくる。
「魔王を倒してほしいんです。」
「あっ、さっきの可愛い娘だ」
また、シシーは樹の影に隠れた。
「ゴメンね、シシーは人付き合いが少ないから、こう言われた時の反応に慣れてないんだよ。シシー、折角、異世界から来てもらったんだから、隠れたら失礼だよ。」
シシーは影から顔だけをだした。異世界から折角来てもらった人達、身なりや言動はバーバリアン族に似ているが、プライドを捨てた自分の願いを聞き入れ、樹が連れてきた人達なので、信用する事にした。
「シシーと言います。この世界を混乱に陥れようとしている。魔王を倒していただきたいです。力をお貸し願います。」
「亘、魔王を倒してだって、どうする?」
「俺ら、高校生だぜ?しかも頭の悪い。相手を間違えたんじゃないか?」
困惑する二人。何せ、世間でははみ出しものと言われる自分達が世界の危機を救うなんて、ありえねぇと思った。
「いいや、君達であってるよ。君達には悪いんだけど、お願いを聞いてあげてくれないかな?」
「わかんないけど、こういうのって勇者って奴に頼むんじゃねえの?」
「俺ら、命を張る事とかはしたくないぜ」
シシーは二人の前に立ち、頭を下げた。この人達に縋るしかない。
「宜しくお願いします‼️」
女性から頼まれた事のない二人は困惑した。
「頼むよ、この世界を救えるのは君達しか居ないんだ。あっと、そういえば、彼女との関係を紹介してなかったね。彼女と僕は」
「「臭い中だろ」」
シシーは激怒した。