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グノーシス教

休日の日、エネットは一人でリビングに待機していた。

今日はリヴィアがシルヴィ家を訪れていた。

リヴィアはイザベルといっしょにカレーライスを作っていた。

二人ともキッチンでエプロンをつけて、本格的なお料理モードだった。

エネットはコップに入ったカフェオレを一口飲んだ。

エネットは二人の様子を見た。

イザベルが教えながら、リヴィアがカレーを作っていた。

エネットは少しだけほおを赤らめた。

リヴィアが自宅に来るのは初めてだ。

「ゆっくりとぐつぐつ弱火で煮るのがカレー作りのポイントなのですよ」

「あっ、はい」

エネットは聞き耳を立てて二人の会話を聞いていた。

この前のプールのイベント以来、イザベルとリヴィアは仲良くなったような気がする。

リヴィアの存在が、イザベル公認になったとでも言おうか。

イザベルのほうから今度シルヴィ家に来ないかと誘ったようなのだ。

エネットもリヴィアを意識していた。

それはエネットの中で、リヴィアの存在が友人以上になったことであった。

「さあ、でき上がりましたよ。いっしょにカレーライスを食べましょう」

「エネット君、できましたよ」

「うん、ありがとう、リヴィア」

三人でご飯をよそってカレーをかける。

エネットはテレビをつけた。

画面にアナウンサーが現れ、ニュースを伝えていた。

エネットは一口カレーを食べた。

ちなみに具材はポークカレーである。

「! おいしい。母さんのカレーライスもおいしいけど、このカレーライスはそれと違うおいしさがある」

「よかったですね、リヴィアさん?」

「ふう……よかったです。エネット君においしいと言われて、安心しました」

「リヴィアって料理もできるんだね」

「はい、家では全部私が料理を作っています。お弁当も休日以外は、私が作っています。今は姉が私の部屋にいるので、姉の分も作っているんですよ。姉は英才なんですが、料理だけはだめなんです」

「へえ、リヴィアにはお姉さんがいるんだ?」

「はい。環境保護団体の理事長をしています」

「そうなんですか。それはすごいですね」

「もしよかったら、今度は私のマンションに来ませんか? 姉も紹介したいですし……」

「そうですか。それは一度会ってみたいですね。エネットはどうですか?」

「いいよ。ぼくは一度リヴィアのマンションに行ってみたいな」

とその時、ニュースが速報を伝えた。

「緊急です! シベリウス教の教会が何者かによって爆破されました!」

「なんだって!?」

「そんなっ!?」

その後テレビの画面にはフードを深くかぶった人物が現れた。

「我々はグノーシス教団。シベリウス教の教会は我々が爆破した。この世界は偽りの神サクラス(Saklas)によって創られた。我々はサクラスが創った物を破壊し、この世界をサクラスの支配から解放する。ダフネのショッピングモールは我々が占拠した。この物質文明は破壊されねばならない」

ザー、ザーと音が鳴ると、また同じアナウンサーが現れた。

「グノーシス教団! こうしてはいられない!」

エネットは席を発って、走って家の外に跳びだした。

「エネット君! ……どうしたんでしょう、エネット君は?」

リヴィアがイザベルに尋ねた。

「エネットの両親は、グノーシス教団のテロで亡くなったんです。エネットの旧姓はオルフィーノ(Orfino)……」


エネットは走った。

こんなに走っているのは久しぶりだ。

ユキコにはかなわないが、エネットは足が速かった。

「おう、エネット、おまえもか!」

「ベルント!」

「ショッピングモールがグノーシスの奴らに占拠されたって聞いてよ」

「ぼくも同じだよ! グノーシス教団のやったことはぼくは決して許せない!」

「じゃあ、向かうところはいっしょだな!」

エネットはベルントといっしょに走った。

目的地はダフネのショッピングモール。


ダフネのショッピングモールには黒いローブ黒いフードをかぶった闇魔法使いたちがいた。

それがグノーシス教徒たちだった。

「最高指導者、ショッピングモールいた人間は子供を含めてすべて皆殺しにいたしました」

「そうか。よくやった。サクラスの人間どもを殺す行為――大いなる善だ。サクラスのしもべは殺されねばならぬ」

「ダフネのショッピングモールはいつまで占拠いたしますか?」

「サクラスのしもべたちは殲滅された。もうそろそろ撤収するとしよう。む?」

「待て! おまえたちがグノーシス教徒か!?」

そこにエネットとベルントが現れた。

「てめえら、一体ここで何をしやがった!」

二人には怒りの表情が宿っていた。

最高指導者が口を開いた。

「フッ、簡単なことだ。このショッピングモールにいたサクラスのしもべを、皆殺しにした」

「なんだって!?」

「なんだと!?」

グノーシス教徒の足元には小さな男の子が倒れていた。

グノーシス教徒は倒れている男の子を踏みつけると、足で男の子を転がした。

「何をするんだ!」

「てめえら!」

「フハハハハハ! 力なき弱き者どもは死にゆくのみだ。さあ、おまえたちも死に身をゆだねるがよい。サクラスのしもべよ」

サクラスとはグノーシス教の思想で、この世を創造した偽りの神をいう。

グノーシス教徒はこの世界は悪によって創造されたと考える。

それはすなわち、過激な現世否定につながった。

「ここは我らにお任せを」

「よかろう」

グノーシス教団の闇魔法使いがエネットたちの前に立ちはだかった。

「くらうがいい! 闇魔法『怨霊破おんりょうは』!」

怨霊のような影が地面を地走った。

エネットはエーテルスピアでそれを防いだ。

「これならどうだ? 闇魔法『ダークスパーク』!」

紫の放電がベルントに向けて放たれた。

「くらうかよ!」

ベルントはダークスパークを大剣で受け止め相殺した。

「今度はこっちの番だよ!」

エネットは闇魔法使いに接近すると、エーテルスピアで突き刺した。

「ぐあっ!?」

ベルントは闇魔法使いに近づき、大剣を振るった。

「がはっ!?」

「へっ、てんで大したことねえな、グノーシスの奴らはよ。これで終わりかよ?」

ベルントが不敵な笑みを浮かべた。

「フフフフ、おもしろい男だ。だが、その強がり、いつまで持つかな?」

最高指導者は両手の袖から魔宝石を取り出した。

「その、宝石は!?」

「フフフ、君たちの相手はこれがする。いでよ、セイレーン(Seiren)、いでよ、キマイラ(Chimaira)」

宝石が魔獣化する。

女の頭に鳥のような体を持つセイレーン、ライオン、ヤギ、蛇という三つの頭にライオンの胴体を持つキマイラ、二体の宝石獣が現れた。

「フフフ、生きていたらまた会おう。それでは、さらばだ」

最高指導者はテレポルタを発動した。

ほかのグノーシス教闇魔法使いもみなテレポルタを唱える。

彼らは一斉に消えていった。

あとにはセイレーンとキマイラという二体の宝石獣が残された。

「ベルント、ぼくはセイレーンの相手をする! ベルントはキマイラの相手をお願い!」

「わかったぜ! おら! こっちに来い!」

「セイレーンの属性は風か」

セイレーンは呪いの歌を歌った。

呪歌じゅか」である。

「なっ、体が!?」

エネットの体がこわばった。

まるで体が石のように動かない。

そのエネットを見て、セイレーンはニヤリと笑った。

セイレーンはエネットをキックした。

「うわあああ!?」

エネットは吹き飛ばされた。

地面で何回かバウンドする。

エネットはエーテルスピアを杖にして立ち上がった。

エネットは土の魔法を唱えた。

「石弾!」

石の弾は湾曲した軌道を描いてセイレーンに向かった。

セイレーンは宙を泳ぐようにそれを回避した。

セイレーンは翼をはばたかせ、羽をエネットに向けて放った。

「危ない!」

セイレーンの羽攻撃をエネットはエーテルスピアを振るって迎撃した。

セイレーンは風の魔力を集中した。

「疾風」である。

風の魔力がエネットに向けて放たれた。

エネットは迎撃は困難とみて、身をすばやくこなして回避した。

「今度はこっちの番だよ! 硬石槍!」

エネットは石の槍を形成した。

エネットは硬石槍を何本か作り、それをセイレーンに向けて放った。

当然のごとくセイレーンは回避する。

エネットはタイミングをずらして、硬石槍を撃ちだした。

硬石槍はセイレーンの翼に当たり、セイレーンを地面に落下させた。

「これで終わりだよ!」

エネットは硬石槍をセイレーンの上に出現させると、それでセイレーンを貫いた。

セイレーンは絶命した。セイレーンは元の魔宝石に戻り砕け散った。


一方、ベルントの方は……

キマイラはライオンの顔が炎の息をはき、ヤギの顔が氷の息をはき、蛇の顔が毒の息をはいた。

ベルントは横に跳びのいて、三つの息をかわした。

キマイラは疾駆し、ベルントに向かって突進してきた。

「うおりゃあああああ!」

ベルントは大剣を大きく振りかぶると、大剣でキマイラを吹き飛ばした。

キマイラの大きな体が転がる。

キマイラは再び立ち上がり、疾駆した。

キマイラは鋭い爪を叩きつけてきた。

「おっと!」

ベルントは大剣でガードした。

キマイラはライオンの口でかみつこうとしてきた。

ベルントはバックステップでそれをかわした。

キマイラは炎の息をはいた。

ベルントはそれを横に大剣を振るって、斬り裂いた。

キマイラは氷の息と毒の息をはいた。

ベルントは大剣を振るいそれを斬った。

「こいつで終わりだぜ! 爆炎破!」

ベルントは大剣に炎をまとい、突進した。

ベルントの大剣が深々とキマイラに刺さり、さらに爆炎が爆ぜる。

「ガルアアアアアア!?」

キマイラは絶叫を上げると、元の魔宝石になり、砕け散って消滅した。

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