イタリアーニ
大型海水リゾート施設「イタリアーニ」がある。
施設内は南国風の気候に保たれ、熱帯植物が植えられ、なにより、さまざまなプールが備えられている。
多くの人々が南の国に雰囲気にあこがれて訪れに来る。
この施設はアポロニアでも有名であった。
エネットとイザベルはこのイタリアーニに行くことにしていた。
二人はユキコたちから誘われてこの施設に行くことにした。
「エネット、忘れ物はありませんか?」
「ないよ、そういう母さんこそ、何か忘れてない?」
「うふふ。私は日傘さえあれば十分ですから。では駅前に向かうことにしましょうか」
エネットとイザベルはダフネの中央駅に集まった。
すでにユキコたちは集合していた。
「あっ! エネット君たちだ! おーい! エネットくーん! ここだよー!」
「ああ、今行くよー! ユキコたち、こんにちは」
「「「こんにちは」」」
リヴィア、ユキコ、カナの三人が言った。
「こんにちは。あなたがたがリヴィアさん、ユキコさん、カナさんですね。リヴィアさんとは前に一度会っていますが、初めまして。イザベル・シルヴィと申します。エネットの母です」
「「「こんにちは」」」
「リヴィアです。お久しぶりです」
「ユキコです。エネット君の同級生です」
「カナでーす。ユキコちゃんの友達です」
「まあ、あいさつはこれくらいにして早く電車に乗ろう」
エネットたちは駅に入り、電車に乗った。
エネットたちは電車に乗って、しばし時を過ごした。
四人の女性陣は活発なおしゃべりに興じていた。
エネットは一人、コンパートメントから外れて座っていた。
「イザベルさんって、いつからエネット君の親をしているんですか?」
「そうですね。20歳の時に親になったので八年前からでしょうか」
ユキコがイザベルに質問していた。
「そんな若いころから親をしていたんですか。ちなみにエネット君は何歳だったんですか?」
「当時エネットは10歳でしたね。確かに当時から頭の理解は優れていたんですが、あまり甘えたがらない子でしたね」
「へえ……そうだったんですか」
ユキコが軽く驚いた。
「ええ。私がスキンシップを取ろうとすると、逃げようとするんですよ。本人はまだまだ子供なんですから、甘えてもよかったと思うんですが、独立心が強いせいか、甘えることに抵抗感を感じるようですね」
「ははは、そうなんですかー? なんだか、エネット君らしいですね」
「そうなんです。もっと甘えてほしいんですが、それが私の悩みですね」
エネットはほおを赤らめながら、コンパートメントでの会話を聞いていた。
そこにリヴィアがエネットの隣に現れた。
「エネット君、隣、いいですか?」
「あ、ああ。いいよ。座って」
リヴィアがエネットの隣に腰かけた。
エネットの鼻がリヴィアのにおいを感じた。
「エネット君は将来どうなりたいですか?」
「ぼくの将来? そうだなあ……ムーセイオン(Mouseion)の学士になりたいな。そして好きなだけ魔法の研究をしたいな。それにエーテル兵器をもっと強化してみたいしね」
「そうなんですか。エネット君はすごいです」
「リヴィアは将来はどうするつもり?」
「私は図書館の司書になりたいです。それも魔法専門図書館の司書がいいです」
「へえ、そうなんだ。かなうといいね、その願い」
「はい、そうですね」
そんなことを話しているうちに、イタリアーニの近くの駅に到着した。
イタリアーニはドーム型の建物だった。
五人はさっそく建物の中に入った。
そしてエネット一人とイザベルたち四人は別れて、別室に移動した。
エネットは一人でハーフパンツ型の水着に着替えた。
エネットは流れるプールの待ち合わせ場でほかの四人を待った。
「エネットくーん! 待ちましたかー?」
「リヴィア」
そこにイザベルたちが現れた。
「うわあ……」
リヴィアはビキニにパレオを巻いた赤い水着だった。
ユキコもビキニタイプの青い水着で、カナはスカートのフリルがついたワンピース型の水着だっ水着だった。
イザベルはいつもの軍服に、日傘と文庫本を持っていた。
「? 母さんは泳がないの?」
「私はみんなの保護者ですから。それともエネットは私の水着姿が見たかったのですか? うふふ」
「そんなことない! そんなことないってば!」
エネットは強く否定した。
「うふふふ、そうですか」
「エネット君、リヴィアをお願いね。リヴィアといっしょに遊んできて。私たちは違うところに行くから。じゃ、行こうよ、カナ」
「はあい、ユキコちゃん!」
ユキコとカナは別行動をとった。
その場にエネットとリヴィアが取り残された。
「どうしようか、リヴィア?」
「エネット君が好きに決めてくれていいですよ?」
「そっか、ならあのウォータースライダーに乗ろうか。ぼくはまず、あれに乗ってみたい」
「はい、じゃあ行きましょう」
エネットとリヴィアは時間がたつのを忘れて施設のプールで遊んだ。
流れるプールではちょっとしたハプニングがあった。
足をもつれさせたリヴィアがエネットに正面から抱き留められたのだ。
さすがに恥ずかしくなって、すぐにリヴィアを解放しようとしたが、なにせ水が流れるため、しばらく抱き留めてしまった。
抱きしめられたリヴィアも恥ずかしそうにほおを赤く染めていた。
ほかにも温水プールがあって、温泉のように暖かった。
なんだかエネットはリヴィアとデートしているみたいで、恥ずかしくなった。
エネットは久しぶりに遊びを満喫していた。
それはリヴィアがいたかもしれなかった。
自然とエネットにとってリヴィアの存在が大きくなっていた。
その後昼食を取るために、みんなでまた一つに集まった。
エネットはジュースを買いにみんなから離れて戻ってきたところである。
「なあ、いいじゃねーか。いっしょに遊ぼうぜえ?」
「かわいこちゃんばっかり。も~最高!」
「俺たちといっしょに行こうぜー!」
イザベルたちは男たちからナンパされていた。
客観的に見て、美女、美少女の集団である。
こういう低俗なやからが寄ってくる可能性はあった。
イザベルは不快感丸出しで。
「なんですか、あなたたがたは? 不快ですから近づかないでください」
「そーよ、そーよ。私たちはあんたたちに興味ないからどっかに行って」
ユキコも不快そうだった。
リヴィアもカナも嫌そうな表情をしている。
「そんな悲しいこと言うなよー!」
「俺たちといっしょなら楽しいぜー!」
「…………」
イザベルは目を細めた。
イザベルは日傘を宙高く飛ばした。
すると、その瞬間に、回し蹴りが男に炸裂して、吹き飛ばした。
「ぐはっ!?」
さらに、エルボーでもう一人の男の腹を突き。
「ぐおっ!?」
そして右手のパンチでさらに男を沈めた。
「がっ!?」
そしてイザベルは落下した日傘をキャッチした。
「まったく、けがらわしい!」
イザベルはハンカチで両手をふいた。
一連の光景をエネットは目を点にしてみていた。
(か、母さん、強い)